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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第27話 デグレット商会

 ライノル商会から少し離れた場所にあるデグレット商会。

 ライノル商会と同様に広大な土地を持っている。ただ、広大な土地を手に入れる為に協力関係にあるライノル商会から離れた場所に拠点を構えることになってしまった。


 商品を保管する目的で広大な土地を保有していたライノル商会。

 デグレット商会も行っている商売から広大な土地を必要としていた。


「いらっしゃいませ」


 商会へ入るとスーツを着て眼鏡を掛けた男性が迎えてくれる。

 デグレット商会の商売から、もっと厳つい男が出迎えてくれるのかと思っていたので拍子抜けだ。


「当商会をご利用……では、ありませんね」

「そうですね」


 俺たち4人を見て受付の男性が言った。

 デグレット商会で扱っているのは戦闘員。馬車の護衛ができる集団の戦闘員や要人の護衛を単独で行える個人の戦闘員。様々な者が所属しており、望んだ者が現れた時には派遣を行っている。

 業務の内容としては、傭兵ギルドと似ているが、あちこちに支部があって偶然その支部にいる傭兵を雇うことになる傭兵ギルドと違い、デグレット商会の場合は契約している戦闘員を管理した上で派遣している。


 そして、デグレット商会とライノル商会は協力関係にある。

 そのため、ライノル商会へ有力な戦闘員の派遣が優先的に行われており、費用が抑えられている。


 特定の商会同士が協力関係にあってお互いの間でのみ融通し合うのは珍しいことではない。だが、お互いの商会の裏に強い影響を及ぼすことのできる者がいる、と示唆しているようなものだ。現に調べるところまでは何人もが動いている。が、残念ながら芳しい結果は得られていない、というのがサティルの判断だ。


「町で情報収集をしていたところ、面白い商売をしている商会の話を聞きました。護衛依頼なんかも受ける冒険者として興味が湧いてきましたので、どの程度の実力があるのか見せてもらえたら、と」

「……本来なら、そのような要望に応える義務はありません」


 戦闘員の実力は、デグレット商会にとって商売の種とも言える。簡単に公開していいはずがない。


「ですが、やる気になっている者が一名おります」


 奥にある扉を背にして一人の男が立っていた。

 2メートル近くある身長。鍛え上げられた肉体。頭突きをすれば相手を突き刺すのではないか、と思われるほど尖った髪を持つ頭。大きな剣を背負っているが、軽々と扱えることが伺える。


「ドルジュット、お客様にはお帰りいただくところだ」

「いいや、俺に戦わせてくれ」


 こちらへ近付いて来る大男――ドルジュット。

 それを受付の男性が止めようとするが、ドルジュットは聞く耳を持たずに目の前までやって来た。


「格下に見られて怒っているのか? 本物の強者を気取るつもりなら多少の挑発は受け流せるようにならないと--」

「そんなんじゃねぇよ」


 ドルジュットが俺を睨み付けてくる。

 ただ、怒っている訳ではなさそうだ。その瞳には、怒りよりも恐れが隠されているように見える。


「アンタ、強いな」


 短い言葉。

 でも、戦闘を生業にしていて自らの力に自信を持っているにも関わらず、相手が自分よりも強いことを認められる。


「その言葉が言えるなら、あんたは強者だよ」

「ちょっと手合わせしてくれねぇか?」

「あ、おい……」


 急な提案に受付の男性が止めようとする。

 しかし、こちらにとっては願ったり叶ったりな提案なため拒否するつもりなどない。


 建物の奥へと向かう。

 デグレット商会の敷地の中心には戦闘員たちの訓練場がある。一度に数十人が自由に体を動かしても窮屈しないよう広く用意されている。


「おい、あれ……」

「ドルジュットさんが知らない奴を連れているな」

「女までいるぞ」


 ドルジュットが訓練場の中央まで歩く。

 どうやら有名人だったらしく、歩いているだけなのに注目を集めている。


「外野は気にするな。俺がお前と戦いたいだけだ」

「こっちもデグレット商会で有名な人と戦えて光栄ですよ」


 お互いに剣を手にして構える。


「一撃で沈めてやりなさい!」

「頑張ってください」

「ファイト」


 後ろから女性陣の応援が聞こえてくる。


「随分と可愛らしい応援じゃないか」

「どうも」


 この戦いに合図などない。

 後ろから聞こえてくる声援に意識が向けられた隙を狙ってドルジュットが踏み込んでくる。


 同時に大剣が突き出される。

 大剣は、その大きさに従って重たい。突きには適さない重量なのだが、ドルジュットは重量を感じさせない速度で突き出している。速く突き出せたから、と言って軽くなった訳ではない。重い武器による攻撃は威力も高くなる。


「いい突きだ」


 突き出された大剣の下から掬い上げるように剣を振り上げて大剣を逸らす。


「……!」


 必殺の突きが止められたことで顔に驚きを浮かべるドルジュット。

 それも、一瞬のことで浮いた大剣に力を込めると鋭く振る。

 体の軸がしっかりしている。そうでなければ、いくら筋力があったところで不安定な状態になった大剣を軽々と振るえるはずがない。体についた筋肉は伊達ではない。


 だが、筋肉がある方の力が強い訳ではない。

 この世界にはステータスがある。


 振られた大剣に対して剣を上から叩き付ける。

 ズゴォォォン!

 重い大剣が落とされたことで床に穴が開けられている。


 床を砕いたことで大剣の動きが止まる。けど、ドルジュットは諦めていない。床を砕いた直後に大剣を振り上げる。


「これぐらいで俺の実力は分かったかな」


 振り上げられた大剣がピタッと止まる。


「ビクともしねぇ……」


 力を込めて動かそうとする。

 動かないはずだ。振り上げられた大剣を俺が上から手で押さえているから。

 お互いの体格差を見ればドルジュットの方が圧倒的に強く見える。しかし、ステータス上では俺の方が強い。こうして、素手で大剣を押さえることぐらい造作もない。


「とはいえ、俺の負けかな」

「あ、どういう……」


 何かが床に落ちる音で全員の意識が下へ向けられる。

 俺の足元には砕けた刃の破片が落ちており、柄と僅かに残った刃だけとなった剣を捨てた。


 今、持っている剣はしばらくの間どうにか使えるよう持っていた剣。

 さすがに適当に用意しただけの剣ではドルジュットの攻撃に剣が耐えられなかった。


「チッ、面白くねぇ」


 誰の目から見てもドルジュットの敗北は明白。

 しかし、剣が使い物にならなくなってしまったことで俺が敗北を認めてしまった。

 プライドが傷付けられることになった。それでも、デグレット商会の戦闘員をまとめる立場にあるドルジュットは認めなくてはならない。


「お前の実力は分かった。その上で、一つ儲け話に乗ってみるつもりはないか?」

「儲け話?」


 その儲け話を持ち掛けられるのを待っていた。

 だが、怪しまれると強行突入するしかなくなるため素知らぬ顔で詳細を聞く。


「俺たちみたいに戦うことを生業にしている連中が集まる秘密の場所がある。そこで戦って稼いでみないか?」


 闘技場。

 戦える者を戦わせ、勝った方には賞金が出される。

 さらに、どちらが勝つのか賭けまで行われている。


 ドルジュットのような立場にいる者は、闘技場に参加する者を見定める仕事も行っており、参加する為には彼に認められる必要があった。


「面白そうだな」

「ああ、アンタなら稼げるさ」

「ただし、一つだけ問題がある」

「問題?」

「荒稼ぎしても問題ないんだよな」

「……そんなことを言う奴は初めてだ。闘技場にいる奴らを全員倒したって問題ないさ」

「それを聞いて安心したよ」

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