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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第24話 商業都市プラム

 商業都市プラム。

 東に王都、西に港のあるサボナ、北には大きな穀倉地帯を構える都市がある。南には大きな山脈があるため東西における物流の要衝となっていた。

 今も多くの商人が出入りしている。


 プラムは、周囲を高さ50メートルほどの分厚い壁で覆われている。

 都市の外壁は厚い壁で覆われていることが多い。外からの敵に対処する為に用意されていることが多く、魔物の出没する世界では欠かせない代物となっている。

 それに、これだけ大きな都市ともなれば魔物だけでなく人に襲われる可能性もある。ただし、大規模な襲撃を心配する必要はない。東以外の方向は他の国の領土と接しておらず、攻め込まれる時は海を越えて来た時になる。東からの侵略については、立地的に王都が先に陥落させられることになる。


 大規模な侵略は心配しなくてよく、プラムが墜ちるような相手だと一つの都市では対処のしようがない。

 そして、これまで大規模な侵略は全くなかった。


 侵略がなかったのはいいことではあるものの内部に別の問題を抱えることになった。

 商人たちの権力の増大。

 商人が権力を持つのはレジュラス商業国と似ているのだが、レジュラス商業国は商人が中心となって政治を行う国。念頭にあるのは商人たちの繁栄であり、統制の取れた商売と政治が行われている。


 しかし、プラムはレジュラスとは全く違う。一番上にメティス王国があり、王国の下で統治をしている一つの都市でしかない。

 金のある所から税を取り、国に仕えようとする。


 間違ってはいないのだが、利益を優先する商人たちの反感を買い、商人たちは統治者の目を掻い潜って自らの利益を追求しようとする。

 表では従うフリをしつつも裏では無法地帯と化している。


「じゃ、ここからは別行動ということで」

「ちょっと待て」


 アイラとイリス、メリッサを連れて先へ行こうとするとトラーダに肩を掴まれて止められた。


「なぜ、私たちを置いていこうとする?」

「プラムへ来たことは?」

「もちろん、あるが?」


 おそらくは騎士としての職務で来たことがあるのだろう。

 なら、気付かなかったのかもしれない。


「後でこっそり教えてあげますから、ここからは俺たちで行動させてもらいます」


 巨大な外壁に囲まれた都市へと近付く。

 プラムには入口となる門がいくつもある。都市の中は、目的に合わせて区画が分けられており、目的地に一番近い門から入った方が移動時間を短縮できるようになっている。

 俺たちの場合は北以外ならどこからでもいいため適当に東側にある門の一つへ向かう。


「どういった用件だ?」


 門の前ではいかつい顔をした門番が立っている。


「依頼で『ある物』を探している。非常に珍しい物で、ここなら、あるんじゃないかと思って訪ねさせてもらった」


 冒険者カードとステータスカードを見せながら来訪目的を告げる。

 多くの商人が集まるプラム。貴重な物や珍しい物といった掘り出し物が数多く見受けられる。特別、怪しまれるような理由ではない。


「通っていいぞ」


 門番が構えていた武器を下ろしてくれる。

 彼らにも商人の息が掛かっているため出入りで無駄な時間を掛けるような真似はしたくなく、問題がなければ簡単に通してくれる。


 門から離れたところで建物の陰に身を隠す。


「さて、あの人たちはどうだろうか?」

「それは難しいでしょう」


 メリッサが言うように騎士ではプラムの門を無事に通り抜けるのは難しい。

 その言葉は正しかったらしく、しばらくして門を潜り抜けてきた彼らは無事ではなかった。


「撤収」


 別れを告げないまま、その場を後にする。

 生き残るぐらいなら騎士なのだからできるだろう。



 ☆ ☆ ☆



 どれだけの時間が調査にかかるのか分からない。

 そこで拠点となる宿屋を確保させてもらった。どこにしても同じようなものだし、ここでなければいけないといった理由もない。


 宿から近い場所にあるレストランに入って作戦会議。今のところ、俺たちのことを怪しまれている様子もない。平然としていた方が怪しまれることはない。

 現に怪しまれている奴らがいる。


「随分と徹底しているな」

「それだけ隠したいことがある、ということでしょう」


 レストランには適度な騒めきがある。

 普通に話している分には他の人に聞かれるような心配もない。


「でも、助けなくていいの?」

「特に問題はないだろ」


 別行動をした騎士たちだったが、都市へ入った瞬間に監視がつけられていた。

 3人とも監視されていることに気付いていない。せっかく無関係を装って都市へ入ったのに今から接触すれば俺たちまで警戒されることになる。

 今のところは警戒しないでいてほしい。


「あの3人だって騎士だ。暗殺されたら対処はできないかもしれないけど、都市だって騎士の暗殺なんて望んでいない」


 おそらくは監視に留めるはず。

 もしも、正面から武力で衝突した場合には騎士なのだから対処できるだろう。


「へい、おまち」


 騎士たちへの対処について話をしていると料理が運ばれてくる。

 様々な肉をいくつもの香辛料で蒸した肉料理だ。多くの物が集まるプラムでは、このように様々な物を掛け合わせるのが人気になっている。もちろん、ただ掛け合わせている訳ではなく、どうすれば美味しくなるのか考えられている。


「結構な量を使用されていますね」

「で、どうするの?」

「できることなら短期決戦で行きたい」


 直接的な監視はついていない。

 それでも、利用した宿屋やこのレストランみたいな店から情報は洩れる。あまり時間を掛けていると俺たちが依頼など引き受けておらず、何も目的がないように見えてしまう。

 普通の冒険者だと思われている内に決着をつけたい。


「サティルが用意してくれた紹介状を利用しよう」


 一枚目には、レジナルド王子が経営していた商会への招待状が入っていた。

 物流を担っている商会で、プラムを拠点にしながら東へ西へと馬車を走らせて荷物を運んでいる。商会が抱える傭兵もいるため道中の安全も確保されていて信頼が得られている。

 しかし、信頼が得られているのは表の商売だけ。裏では、運んでいる多くの荷物に紛れ込ませるようにして盗品や違法な物品を流通させている。中には危険な薬物となる素材も紛れ込んでいるらしく、多くの人が苦しめられている。


「このような商売をしているような連中は愚か、としか言いようがありません」

「そう、なのか?」

「たしかに薬物は莫大な利益を一時的に生み出してくれます。しかし、自分の領域内で危険な薬品をばら撒けば生産力は落ち、利益が得られなくなります」


 長い目で見れば損をしていることになる。

 商売地域を変えればいいだけの話ではあるのだが、他の場所には既に他の商人が手を出している可能性が高い。そういった人たちとの交渉は、多くの費用が掛かることになる。

 だからこそ、自分とは関係のない場所でクスリを売る。

 彼らは一時的な利益にばかり目が眩んで、長期的な販売戦略が練れていない。


「じゃあ、潰すっていうことでいいな?」

「もちろんです。それをサティルさんも望んでいるようです」


 封筒に入っていたのは紹介状、と言うよりも地図だった。

 目的の商会の本拠地がある場所を示した地図に、建物内のどこに奥へと繋がっている隠し部屋があるのか見取り図があった。

 簡単な代物だが、隠し部屋がどこにあるのか大雑把に分かる。


 とはいえ、隠し部屋へ侵入するのは後回しだ。


「まずは正面から乗り込むことにしよう」

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