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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第6章 没落貴族
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第5話 メリッサ

今回もシルビア視点です

 最初は苦戦してしまいましたが、その後は何事もなく進み、お昼も過ぎたということで街道の近くに馬車を止めて開けた場所で昼食を摂ることにしました。


 この場所なら魔物が隠れて近付いて来てもすぐに気付くことができます。


 ご主人様は昼食も摂らずに馬車の傍で待機していました。

 何か問題が発生した時の為に控えているようです。わたしとしてはご主人様にも休んでほしいところですが、ご主人様は凄い人で体力のステータスが10000を超えているので数日なら休みなしで動いても問題ないから、と念話でこっそりと連絡がきました。

 だから、これ以上わたしが心配するのはご主人様の実力を信用しておらず、侮辱することになります。わたしは眷属として傍に控えるだけです。


「あの、貴方たちのリーダーは休憩しなくていいの?」

「はい、大丈夫です」

「それならいいけど」


 昼食のサンドイッチを持ったメリッサさんがわたしの隣に座ります。

 初対面の人との食事は緊張しますが、アイラは手早く昼食を済ませると剣を持って素振りを始めてしまいました。どうやら体を動かしたりないので訓練に勤しむことにしたようです。

 せっかくメリッサさんと仲良くなれる時間を貰えたので気になっていたことを聞いてみることにしました。


「あの、メリッサさんとテックさんってどういう関係なんですか?」


 家族ではないらしいですが、わたしたちが合流する前の正門にいた時の姿から仲が悪いわけではないことは分かります。


「私? 私は、元々はある町で領主をしていた人の娘なんです。ただ、町が盗賊に襲われて町にはいられなくなったから9歳の時に町を飛び出して、たまたま面識のあったテックさんと再会することができたので、それからは商売の手伝いをしながらお金を貯めているところなんです」

「随分と苦労されてきたんですね」

「そうですね。幸い、私には魔法の才能があったみたいなので、独学でしたけど一生懸命勉強して護衛の真似事ができるぐらいにまでは強くなれました。最初の頃は大変でしたけど、5年なんてあっという間の出来事でしたよ」

「ちょっと待って下さい」


 9歳の時に独り立ちしたのが5年前。

 ということは、今の年齢は……。


「もしかして14歳ですか?」

「そうですけど」


 てっきり年上だと思い込んでいました。

 わたしなんかよりも大人びた印象。何よりわたしよりも大きな胸。わたしもそれなりに大きな方だと思っていましたが、メリッサさんには大人のような包容力が感じられました。

 けど、実際にはわたしたちよりも1歳下。


 これは予想していませんでした。


「羨ましい……」


 思わず抱き着いてしまいました。


「ええ……?」


 一方、メリッサさんはいきなり抱き着いてきたわたしに対してどうすればいいのか分からずにいました。

 いけない。ここは年上としてわたしの方からしっかりと打ち解けないと。


「メリッサさんは冒険者にはならないんですか? ゴブリンを倒せるだけの実力があるなら冒険者の方が稼げると思いますよ」

「そうですけど、これだけ強い魔法が使えるようになるまで長い時間が掛かったんです。その間、私の面倒を見てくれたテックさんに恩を返したいんです。冒険者になってお金を稼いで、そのお金をテックさんに渡すという方法もあるにはあるんですが……街から街へと移動して商売をしているテックさんに魔法の力で恩返しをするなら護衛をするのが一番なんですけど、冒険者として護衛依頼を受けた場合にはギルドに手数料を払わなければなりません。手数料のことを考えれば、冒険者にならずに個人で護衛を請け負った方がいいんです」

「なるほど」


 この子は幼くして家を出て独り立ちしながら、お世話になった人に恩を返そうとしている。


 わたしはそこまでのことは考えていなかった。

 ご主人様に仕えて恩を返そうとは考えている。だけど、わたしだけじゃなくて家族まで受け入れてくれたご主人様にどうすれば恩を返せるのかが分からない。


「それに、私にはお金を貯めたらやりたいことがあるんです」

「やりたいこと?」

「はい。盗賊に襲われた私の住んでいた村ですけど、私も含めて住人の何人かが逃げた後からやってきたどこかの騎士団が倒してくれたので無事なんです。家族とは襲撃があった時のゴタゴタで別れてしまいましたけど、貯めたお金で現在町を治めている人から町を買い取るのが私の夢なんです」


 お金で買う、なんて言い方をしていますけど、彼女の夢は『故郷に帰りたい』という純粋なものです。

 それもただ帰るだけではない。

 どこかで生きているはずの家族のことを想って家族を迎え入れる為に帰って来る場所も用意しておく。


「町を買い取ることなんて可能なんですか?」

「はい。ちょっと調べてみたところ前例がないわけじゃないんです。私が聞いた話だと、財政難の町が資金援助を理由に役人の入れ替えを受け入れて最終的に乗っ取りをしたっていうのがあったそうです」


 そんなことが可能なのだろうか?

 そう思わずにはいられなかった。けれど、メリッサさんが嘘を吐いているようには見えなかった。


 けれども、その話が本当だったとしても実行するには多額の資金が必要になるはずなのは、わたしでも分かる。


「そこは、大丈夫です。私の住んでいた町は、村よりもちょっと規模が大きいくらいで、住民も400人ぐらいしかいませんでした。それに商売で得た利益だけで買い取ろうとも考えていません。テックさんの顧客には、貴族の方もいるので話をしたところ、色々と資金援助をしてくれるということなので、買い取りそのものは可能なところまで見えているんです」


 聞くところによるとメリッサさんは領地を継ぐ者として様々な教育を施されてきた。その結果、貴族との付き合いもそれなりにできたので、相手も信用してくれたとのことだ。


「私の話はこんなところですね。それよりも皆さんの話を聞かせて下さい」

「わたしたち?」

「冒険者の皆さんは色々な冒険譚を持っていますから、ちょっと興味があります。貴族の人たちは、そういう話を好むので話のタネに聞かせてほしいんです」

「けど、わたしが冒険者になってから1カ月も経っていないので、そこまで凄い冒険譚は持っていないのです」


 わたしが冒険者になってから2週間ぐらいしか経っていません。

 冒険者になる前後で自分の人生で濃い経験をしたせいで、随分と前のことのように感じられます。


「大丈夫です。その1カ月の間に色々とあったのでしょう」

「え……?」

「リーダーの彼が先にゴブリンを見つけたことに対する謝罪で、小声でしたけど貴女は『ご主人様』と呼んでいました。もう1人の方は、信頼はしているみたいですけど、そういう関係ではないみたいなので個人的にそういう関係なのでしょう。なら、そういう関係になる何かがあったと思うのが普通でしょう」


 う……わたしがご主人様のことを呼んだことを聞かれていたなんて恥ずかしい。


「わたしたちも」


 すると、いつの間にかテックさんの娘であるミリちゃんとリラちゃんが傍に来ていました。

 2人とも冒険者が語る冒険譚に興味津々な様子です。


 わたしでなくても……。

 そう思って2人の仲間へ視線を向けるとご主人様は馬車の傍で警戒しているし、男性なので女の子からは話し掛けづらいはずです。アイラに至っては剣を振り続けているので子供では近付き難い雰囲気です。


 ここは、わたしが語るしかないみたいです。


「いいでしょう。わたしたちがパーティを組んだのは最近の話ですが、魔剣を破壊した話やあそこにいる男性が奴隷少女を救ってくれた話がありますよ」


 その奴隷少女は、わたしのことなんですけど。

 それでもミリちゃんとリラちゃんは興味を示したらしく、話してほしいとせがんできます。

 そこまで言うのならご主人様がどれだけ格好良かったかを聞かせてあげることにしましょう。


ちなみにヒロイン3人の中で序列を付けるなら、

メリッサ>シルビア>>アイラ

の順番になります。


何の順番なのかは明言しません。

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