表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
879/1458

第19話 第2王子と関係組織

「レジナルドがどうやって王都を脱出したのかは分かっていますか?」

「さすがに昨日の今日では調査を終えられていない。だが、今から調べるのは難しいだろう」


 影武者と入れ替わっていることにすら全く気付いていなかった。

 既に手掛かりすら残されていないだろう。


「そうなると、協力者を捜した方がいいでしょうね」


 協力者。

 王都から脱出するにしても、脱出した後に潜伏するにしても誰かの協力なくしては上手くいかない。


「誰か心当たりぐらいはいないんですか?」

「あるにはあるのですが……」


 若い騎士の歯切れが悪い。


「何か理由が?」

「そうですね。クーデターが成功した後で詳しい調査が行われたのですが、レジナルドは色々とやっていたようで、国庫の横流しや政策に協力してくれる者たちへの優遇などを行っていたようなのですね」


 横領の金額は膨大。

 優遇することによって献金を受けていた。


 そういった事に対する才能があったようで、クーデターが成功するまでは揉み消しに成功していた。


「国庫を横流ししていた商会が五つ、優遇していた商会や団体が八つ。他にも盗賊団を雇い、邪魔になる商会や貴族の情報を売って利益を得ていたようです」

「本当に恥ずかしい話だ」


 壮年の騎士が嘆いている。

 ……ん?


「盗賊を雇う?」

「そうです。貴方が捕らえた盗賊団です」


 どこかで聞いたような話かと思えば、王都へ来る途中で襲ってきた盗賊団のことだった。

 シーリング男爵は、何者かから指示を受けて盗賊団に自分の領地を訪れた者の情報を流していた。


「シーリング家に仕える騎士が情報を吐いてくれましたが、数年前にいくつかのトラブルが重なったせいで借金をしてしまったそうです。で、その借金をした相手というのがレジナルドの息がかかった商会だったそうです」


 それなりに潤っていたが借金の返済がすぐに可能なほどではない。

 困っていたところ、商会からある提案がされる。


「利息を抑える代わりに情報の提供を求めたそうです」


 借金のあるシーリング家は従うしかなかった。

 事情を知ったことで大規模な盗賊団を従えていることが分かり、自分たちが拒否した場合には領民が襲われることに気付いてしまったから。

 自分たちにも利益があるため渋々ながら従った。


「騎士たちも自分や家族の身を保障することで情報を提供してくれた。同じ騎士として、あいつらの気持ちも分かるから貶す訳にもいかない」


 そのうちシーリング家に罰が下されることになるだろうが、仕えていた騎士たちについては最低限の処罰だけで済まされることになった。


「その商会が匿っている可能性は?」


 レジナルドの手駒のように動いていた商会なら王都から逃れた後も匿っている可能性がある。


「難しいな。盗賊団の件が露見する前からレジナルド王子の言いなりになって色々な悪事を働いていたことから王国の監視が付けられている。そんな怪しい動きをしていれば監視から報告が上がっているはずだ」


 そういう報告はない。


「最有力候補ではあるものの、他の組織から追った方がいいかもしれないな」


 書類を誤魔化して税を軽減させていた商会。鉱山から採掘された鉱石の量を誤魔化すことで、浮いた鉱石分の利益を商会と自分たちに融通していた。簡単に利益を書き換えるだけで税を軽くすることができるため色々とやっていたらしい。


 そうして、得たお金で秘密裏に武器を造り、自分の思い通りに動く戦力を使って対抗組織を潰していった。

 中には人身売買を行い、誘拐までしている組織まであるらしい。

 探せば探すほど問題ばかりが見つかる。


「実害はなかったが、厄介な宗教団体にも資金提供をしていたらしい」

「宗教団体……リゴール教か」

「ああ、そういえばあそこも含まれていたな」


 リゴール教――世界の終末を望んでいる者たちが集まり、『終焉の獣』と呼ばれる魔物の復活を目論んでいた組織。不完全ながらも復活させることに成功するものの迷宮主ほどの力は持っていなかったため王都に大きな被害を齎すだけで討伐されてしまった。

 組織である以上、資金は必要で、誰かからの援助を受けていたらしいことは所属する者たちからの証言で分かっていた。それが、まさかレジナルド王子だとは思わなかった。


「クソッ、思えば王都であんなことをしたのもリゴール教の人間だ。こんなことになるなら、徹底的に潰しておくんだった!」

「随分と分かっているのに対応はしなかったんですね」

「仕方ないですよ。レジナルド王子がしていたことがあまりに多岐に渡っていました。あちこちへの対処へ追われているうちにあのような事件が起きてしまったのです」


 リゴール教の脅威度は低かった。

 そのため優先順位も後回しにされてしまっていた。


「けど、リゴール教と関係があったのは間違いないんですね」

「そうですね。レジナルド王子の記録が残されていました」


 資金援助をした記録までは残されていた。

 後々に色々と請求をするつもりだったようで、細かく記録を取っていたようだ。


「記録にあった主だった人たちは既に処分済み。ですが、取り調べを行ってもレジナルド王子が生きている痕跡は全く見えていませんでした」


 いくら優先順位が低かったとしてもトップにいるような者たちは捕らえられている。

 この数カ月の間に事件を起こした実行犯たちは、全員が帰らぬ人となってしまっているため捕らえることはできないが、他の人たちは捕らえられており厳格な尋問が行われた後だ。

 騎士が本気で尋問しても見つからなかったのなら知らないのだろう。


「他の組織についても上位陣については捕縛済みです」

「となると、記録にも残らないような末端の人員に匿われている可能性があるな」


 そんな人間の捜索までしていられるほど騎士は暇ではない。


「もしも、俺が捕らえた人たちの関係者に会わせてほしいと言ったら会わせてもらえますか?」

「そんなことは無理だ。実力はあるようだが、Sランク冒険者でもないような奴に機密事項を見せる訳がないだろう」


 やっぱり、そういうことになるか。

 そうなると、手元にある手掛かりから追う必要がある。


「大丈夫ですよ。一つだけ手掛かりと言えるような手駒がありますから」


 小さく笑みを浮かべると必要な情報を得る。



 ☆ ☆ ☆



 王都から西へ馬を飛ばして二日の距離にある町――グレーテ。

 人口1000人ちょっとの町で、近くに農地を構えるだけで、目立った産業はなかったのだが、数年前から織物に力を入れ始めている。


 長閑な町。

 通りを歩いている人たちは、王都で起きた大きな騒ぎなど気にすることなく生活をしている。


「ここにいったい何の用だ?」


 3人の騎士を連れ、途中にある町で1泊してから訪ねた。


「私としては、移動中ずっと貴方たちの移動速度が気になっていました」

「まあまあ」

「その件は気にしない約束」


 今回、同行してきたアイラとイリスが誤魔化す。

 騎士の3人は馬を駆って移動したが、俺たちには乗馬の技能などないので馬と並走して移動させてもらった。

 騎乗技能を当たり前のように持っている騎士としては馬と同等に走れる人間など信じられないことだった。まして、息を荒くして疲れている馬と違って俺たちは疲れている様子すら見せていない。


「こいつらはSランク以上の力を持つ冒険者だ。冒険者のことは気に入らないが、実力を認めなければならないぞ」

「はぁ」


 壮年の騎士から注意を受けて若い騎士が溜息を零す。

 俺たちのことが気に入らないようだが、戦闘に身を置く者としての心構えはできているようだ。


「で、どうするつもりだ?」

「ここにリゴール教の関係者がいるかもしれません。そこへ突撃してみましょう」

「もしかして、後ろにいるそいつが関係しているのか?」


 騎士の目がいつの間にか合流していた青年へと向けられる。


「ええ、俺たちで捕らえたリゴール教の教徒です」


 元リゴール教教徒のトランが死んだような(実際、死んでいる)目をして故郷を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ