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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第17話 迷宮核からの依頼

 その後、カーティス君が迷宮核に触れて見事に迷宮主として認められる。

 この半年ばかりの間は、主が不在だったせいで最低限のことしかできなかった。だが、こうして主ができた今なら色々なことができるようになる。


「う、ん……」

「カーティス!」


 気絶したカーティス君に駆け寄る公爵。

 高くなったステータスに体が変調を来たしてしまっただけなので、数時間も寝かせていれば自然と起きる。


「こんなこと必要なのだろうか……?」


 倒れたカーティス君を見ながら公爵がポツリと呟いた。

 孫が心配になる気持ちは分かる。そして、公爵は自分にできることが何もないことを嘆いていた。


『この王都は、迷宮の力があるからこそ今の状況を維持することができています。もしも、主が不在な状況が何年も続くようでしたら、この地は不浄の世界となることでしょう』


 そんな難しい土地に王都を作ったのも迷宮の恩恵を受けていれば安定した地でいられるからだ。

 メリットとデメリットを比べ、メリットを選択した。


『王都の破棄を選択するなら主不在の状況でも構いません』

「だったら私が--」

『私は王以外の者が主になることを認めていません。そして、貴方が王になることを認めるつもりはありません。孫に代わって迷宮主になることはできません』


 そもそも迷宮主になる資格は、迷宮を攻略した者にのみ認められる。

 例外として迷宮核が認めた者や予め設定しておいた条件を満たした者が主になることができる。


 ここまで俺たちに守られながら到達した。とても、攻略したなどと口が裂けても言えるような状況ではない。


『それよりも、私から貴方たちにお願いしたいことがあります』

「お願い?」

『はい。逃げた第2王子の捕獲、難しければ討伐してしまっても構いません』

「ちょっと待ってください!」


 俺と迷宮核の会話に公爵が割り込んでくる。


「第2王子の捕獲、とはどういうことですか!?」

『そのままの意味です。カーティスの統治において以前の王族が生きているのは不都合しかありません。だから、貴方も前王を含めて生きていた王族の処刑を敢行したのでしょう』


 国王、王太子、第2王子の3人は処刑されているはずだった。

 王妃と側妃については地方の教会へと追い込み、二人を嫁がせたことで様々な恩恵を得ていた実家についても爵位の剥奪が行われている。裏で色々なことをしていたため犯罪を揉み消す王がいなくなったことで次々と問題が浮上したことで罪を問うのは難しくなかった。

 つまり、以前の王族は一掃されたに等しい状況になっている。


「捕らえた王たちの確認は済んでいる。公開処刑にされ、王都にいる大衆が王族の死を目の当たりにしている」

『本当に?』

「……」


 そう尋ねられると自信がなくなってしまうのか言葉に詰まってしまう公爵。


『あの子が、そのようなヘマをすると本気で思っているのですか?』

「いいえ、そうではありませんね。裏で様々なことをしていたレジナルドならば、絶望的な状況であったとしても生き延びていても不思議ではありません」


 どうにかして生きていた元第2王子――レジナルドの捕縛。

 それが迷宮核からの依頼らしい。


「私たちに依頼する理由を聞いてもいいでしょうか?」


 メリッサからの質問。

 至極、最もなことだ。現王派が捕縛に失敗した前王の家族ならば、現王の威信の為にも彼らの手で行われた方がいいように思える。


『手掛かりが少なすぎるからです』

「貴女の言葉を聞いていれば、第2王子が生きている確証を得ているようです。なら、現在どこへいるのかも分かっているのでは?」

『残念ながら、私に分かっているのは「王都を出て行くレジナルド」だけです。そこから先、どこへ行ったのかは全く分かりません』


 迷宮核が知ることのできる範囲は、自らの迷宮の影響が及ぶ範囲。その範囲内においてなら、あらゆることを知ることができる。だが、範囲よりも外側については何も分からない。


「もう一つ、私たちに依頼する、それがどういう意味を持つのか分かりますね?」


 依頼には報酬が必要になる。

 迷宮核ですら手の出しようがない相手を捜すのなら、それなりの報酬が必要になる。


『私が出せる報酬は二つです。まずは、これを--』


 地面から宝箱が出現し、勝手に蓋が開く。

 中に入っていたのは長剣。ただし、刃の至るところに様々な色の宝石が埋め込まれている。


「それは--」


 公爵は剣について知っていたらしく、言葉を失っていた。


『「シュティーレ」という名の宝剣です。武器としての価値よりも宝石それぞれに蓄えられた魔力、それに宝石としての価値こそ貴方たちにとっては貴重なはずです』


 宝石があるせいで鋭さが失われてしまっている。

 試しに振ってみたところ、宝石の重さが邪魔になって使いこなすのが非常に難しい。

 あまり、手にしたいとは思えない武器だ。


 だが、武器としての価値が低かったとしても宝石としての価値は高い。


「ありがたく受け取らせてもらう」

「待て! これはメティス王国の国宝の一つ。宝物庫で丁重に保管されているはずだ。それが、ここにあるはずがない!」

『ああ。貴方の知っている宝剣シュティーレなら今も宝物庫の中で眠っています』

「では、これは……」

『宝物庫にあるのは、これのレプリカです』


 宝石収集が趣味だった大昔の国王。

 死ぬ寸前に集めた宝石から強力な剣を造ることにし、剣の出来に満足すると安らかな眠りに就いた。

 その剣は、次代の国王へと引き継がれ、彼の手によって万が一のことが国にあった時に役立ててほしい、と迷宮核に願った。

 迷宮核も、使うべき時だと判断した。


『さすがに国宝として知られるようになった宝剣を国王の一存だけで隠すわけにはいきませんでした。だからこそレプリカを用意したのです』


 不特定多数の人の目に触れる訳ではない宝剣。

 宝物庫にしまわれている内に人々の記憶から正確な姿が失われ、代替品として置かれたレプリカを本物だと思うようになった。


「そのレプリカも、かなり貴重な代物なんですよね」

『間違いなく。ただし、貴方が求めているのは本物の方でしょう』


 迷宮を強くする為にも必要としているのは、強い力を秘めた道具だ。

 第2王子の捕縛を成功させた暁には、これを譲渡してくれることになった。


『もう一つ報酬を提示しましょう』

「ほう……」


 一つ目で結構な物をいただけることになった。

 興味のないフリをしつつも、次に何が提示されるのかワクワクしながら待つ。


 だが、提示された報酬は意外なものだった。


『今、この迷宮に対して行っていることを黙認します』

「……気付いていたか」


 以前にこの迷宮へ来たのは3年も前の話。

 その頃とはスキルの熟練度が違う。何より、当時は眷属になったばかりだったイリスのスキル熟練度も今は飛躍的に上昇している。


『バレているようだから、急ぐ必要はないぞ』


 念話でゆっくりでもいいことを伝える。


『ん、了解』


 と言ってもイリスは止めることはないだろう。

 バレていた以上は大々的に事を進めるはずだ。


『随分と大胆なことをしますね』

「ちょっと間借りするだけです」


 俺たち3人で護衛しながら迷宮へ挑む。

 その傍らでイリスが迷宮核にバレないよう迷宮の機能へのハッキングを試みる。機能の一部を使えるようになればいい。そうして、使えるようになった部分を利用して拠点の確保を行う。

 できることならアリスターと王都の移動は一瞬でできるようになっておけた方がいい。この迷宮の一部を拠点として登録するだけで【転移】の対象に王都を選ぶことができるようになる。


 当初はバレずに進ませるつもりでいた。

 内容が内容だけに、どんな対価を要求されるのか分からなかったからだ。


「そっちの要望は叶えます。その代わり、間借りすることに対して何も文句は言わないでください」

国王:パトリック

第1王子:ランドルフ

第2王子:レジナルド

第3王子:ペッシュ


一人だけ逃げた第2王子を追え!

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