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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第9話 盗賊集団の待ち伏せ

 翌日。

 シーリングを出発して王都へと向かう。

 馬車の周囲は依然として騎士が守っており、俺も同行している。ただ、今日はイリスもそこに同行していた。

 他にシルビアたちにも用事を頼んでいる。


 パーティメンバー全員が動いている。


「キース様」

「どうした?」


 馬に乗った一人の騎士が馬車に近付いて報告をする。

 前方の様子を確認する為に斥候に出ていた騎士だ。


「この先で盗賊と思われる集団が待ち受けております。排除に全力を尽くす所存ではありますが、相手の数が多いため安全を考慮するなら迂回したいところではあるのですが……」


 街道は一本道。

 しかも、盗賊が待ち伏せしているのは左に川がある右の森の中らしく、馬車での移動では迂回するのも難しい。


「問題ない。このまま進め」

「はっ」


 アリスター伯爵には最初から迂回するつもりなどない。

 だからこそ報告を受けている間も馬車を止めるようなことをしなかった。

 騎士たちも盗賊が出るかもしれない、ということを事前に聞いていたので覚悟をしている。それでも、相手の規模を知って緊張を強めていた。


「さて、お手並み拝見させてもらおうか」


 アリスター伯爵がこちらを見る。

 護衛依頼を引き受けている以上、伯爵の安全は保証させてもらう。しかし、メインで動くのは騎士たちに任せるつもりでいる。彼らにもプライドがある。いくら地元で有名な冒険者だったとしても冒険者に全てを任せるのは矜持が許さない。


 馬車の左側をイリスに任せて右側につく。

 しばらくすると森が迫ってきているのが見え、潜んでいる気配がいくつもあることに気付いた。

 俺の感知能力が間違っていなければ盗賊にしてはかなりの数がいる。


「おっと、止まってもらおうか」

「何者だ!?」


 先頭で警戒していた騎士が叫ぶ。

 すると、森の中から盗賊と思われる男たちがゾロゾロと出てくる。

 みすぼらしい格好に剣を手にしながら街道で立ち塞がる。


「この馬車は、アリスター伯爵の馬車だぞ!」


 たとえ盗賊でなく平民だったとしても貴族の馬車を前にして道を譲らないのは不敬罪にあたる。

 しかし、不敵な笑みを浮かべている男たちに退く様子はない。

 この時点で騎士たちは盗賊だと断定した。そして、何か間違いがあろうと簡単に覆ることはない。それだけ貴族の権力は強い。


「悪いがこっちも仕事なんでな。あんたらには死んでもらう」

「盗賊風情が騎士に勝てると思っているのか?」

「たしかに騎士様は強いぜ。けど、この数の差ならどうだ?」


 未だにゾロゾロと出てくる盗賊。

 ようやく出てくるのが終わったのは100人ほど出てきた頃だった。

 10倍の戦力差。たしかに鍛えられた騎士でも10人で100人を相手にするのは難しい。


「まだまだこんなものじゃないぜ」


 盗賊が馬車の通り過ぎた後方を見る。

 左側にある川には橋が架かっており、傍にある大きな倉庫から人の気配がする。

 右側の森に沿うようにして馬に乗った男たちが迫っている。


 大人数で正面を塞いで、左右から別動隊が迫ることで追い詰める。これが盗賊集団のやり方だった。


「さあ、どうする? と言っても、アンタらは他の獲物と違って逃がすつもりはない。全員仲良く始末してやるぜ」

「問題ない。この程度の戦力差でどうにかなると本気で思っているなら騎士の力を思い知らせてやるだけだ」


 鞘から剣を抜きながら騎士が宣言する。

 他の護衛騎士も怯えた様子なく剣を構える。


「ああ、オレたちの力を思い知りな」


 後方を警戒していた騎士が後ろから迫る馬に乗った盗賊へと意識を向ける。


「へ?」


 だが、目を向けた先にいた盗賊が馬から落ちてしまった。

 一人や二人が落ちてしまったのなら乗馬技術を疑うところだが、全員が同時に落ちてしまった。

 明らかに何かあった。


「な、なんだ?」


 前方を塞いでいる盗賊も戸惑っている。

 落馬した盗賊たちは大半が落馬した時の衝撃で起き上がれずにいる。それでも、起き上がろうとしている者はいる。


「く、くそっ……一体、なんだったんだ今の揺れは……っ!」

「はい。大人しく気絶していてね」


 後ろから襲い掛かる衝撃に盗賊が気絶する。

 他の起き上がろうとしていた盗賊も同様に気絶していっている。


 犯人はシルビアだ。誰に気付かれることなく背後へ接近すると後ろから叩いて気絶させていっている。


「そっちだけでいいのか?」


 先頭にいる騎士の目が川の方へ向けられる。

 倉庫から出てくる盗賊。50人はいる。

 だが、彼らは倉庫から全員が出たところで動きを止めていた。正しくは、動くことができずにいた。


「ぐ、うぅ……」

「からだ、が、おもい……!」


 盗賊たちは上から圧し掛かる重力によって体を前へ進ませることができずにいた。魔法によって盗賊たちのいる空間の重力を強化させられている。

 そこへ赤い髪の女性が近付く。


「じゃあ、こいつらも処分するわね」

「お願いします。動きは封じておくので簡単です」

「ん、りょうかい」


 赤い髪の女性――アイラが盗賊の足を斬っていく。

 斬られた盗賊は、重力に耐えることもできなくなり地面に押し付けられていく。


「こ、この……」

「あれ、一人だけ耐えているみたいね」


 先頭を走っていた盗賊の一人が重力に耐えながら振り向いた。


「テメェ……! どうして平然としていやがる!?」


 魔法は空間に対して干渉されている。

 盗賊たちの間を縫うようにして斬り進んでいるアイラも重力の影響下にいるはずなのだが、平然としている様子から魔法の影響を受けているようには見えない。


「何言っているの? これぐらいなら問題ないわよ」


 微動だにできなくなるほどの負荷が掛かっていたとしてもアイラには影響を及ぼすほどの負荷ではない。


 盗賊がゆっくりとした動きでナイフへ手を伸ばす。

 しかし、その時には既にアイラが後ろへ回り込んでいる。


「がぁ!」

「安心しなさい。全員、無力化するだけだから」


 態々、動きを止めたうえで動けないよう傷を負わせる。

 こんなことをしているのは全員を確実に捕える為だった。


「期待していた援軍は来ないぞ」

「くそっ……!」


 騎士と対峙していた盗賊がイラつく。

 後ろの方にいる盗賊は期待していた援軍があっという間に無力化されてしまっている光景に怯えてしまっている。


「ハッ、あの程度で終わりなんだと思ったら大間違いだ。オレたちの味方はまだまだいるぜ」


 盗賊集団は全員を合わせれば数百人規模になる。

 そんな大人数で襲えば利益も少なくなる。そのため普段は、情報の奪い合いが行われ、必要な人数のみが襲撃することになっている。けど、今日の襲撃には全員が参加するよう協力者から要請されている。


 協力者は、もちろんシーリング男爵のことだ。

 ここでアリスター伯爵を亡き者にする計画だ。


「はぁ、一番やってはいけないことをしてしまったな」


 まだ情状酌量の余地があった。もしかしたら、何かしら止むを得ない事情があって協力しているのかもしれないため自分から謝罪してきた時には、内容次第では許すつもりでいた。

 しかし、強硬策に出た時は容赦をしない。


「可能な限り生け捕りにしろ。全員、貴重な証言者だ!」

『了解!』


 騎士が一斉に斬り掛かっていく。


「野郎ども! 数の力っていうものを騎士様に見せてやりやがれ!」

『おう!!』


 盗賊たちは自分たちの数の多さを強みに騎士へ向かって行く。

 倉庫に隠れていたのと後ろから馬で襲撃を仕掛ける予定の盗賊団は無力化されてしまった。しかし、予定ではまだ潜んでいるはずなので彼らに期待して突撃する。


 この状況では、逃げることなど許されない。

 もっとも、頼みにしている潜伏中の盗賊が無事だったならば、少しは成功率があったかもしれない。

 だが、残念なことに絶望しかない断崖に突っ込んでいる。

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