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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第6話 シーリング家

 バランド子爵と面談を終えた2日後。

 無事にアリスターから離れた町――シーリングへと到着する。


 シーリングまでの旅は順調そのもので馬車が魔物に襲われることもなかった。それもそのはず、シーリングを含めたアーカナム地方の街道はアリスター家によって定期的な魔物や盗賊の討伐が行われている。

 おまけにアリスター伯爵とガエリオさんが乗っている馬車は、アリスター家であることを示す紋章のついた馬車。周囲を数人とはいえ騎士と冒険者が守っている。王都への土産である金品を積んだ馬車があったとしても全滅させられる可能性の方が高いため盗賊たちが襲ってくることはない。


 今は執事に案内されて屋敷内でも最も上質な客室で休憩している。領主の部屋よりも豪華に造られているため互いの身分差が分かる、というものだ。


「疲れた~」


 俺も別の部屋に案内される。

 ベッドと机があるだけの部屋で最低限休めれば十分だという部屋だ。

 王都へ向けて走る馬車の後ろをついて行くだけの簡単な仕事なのだが、普段ほどのスピードが出せないために少しばかり気疲れしていた。


「普段の商人の護衛以上にゆっくり進んでいるんだから気疲れの方がするよな」


 気が向けば冒険者ギルドから商人の護衛依頼の斡旋を受けることだってある。

 彼らにとって俺を雇う方が赤字になる。それでも、アリスターで最高と言っていい実力を持つ俺たちからの護衛を受けられる方が話題になって後々に商売となるらしい。その辺はよく分からない。


 ――コンコン!


「はい」

「私だ。入ってもいいかな?」

「どうぞ」


 ノックをしたのは部屋を訪れたガエリオさん。

 ガエリオさんの立場は微妙なところで、アリスター家に仕えることとなったことで騎士たちと同じ扱いになるはずなのだが、他の要素を考えると同じように扱うことができず戸惑うため俺と同じ部屋で休むこととなっていた。

 シーリング家の屋敷へ着くなり、今後の打ち合わせの為にアリスター伯爵の部屋へ行っていたので戻ってきたところだ。


「ちょっといいだろうか?」

「家族みたいなものですから気にしなくていいですよ」


 既にガエリオさんは身内判定になっている。

 そのため万が一俺の観ていない所で襲われることがあっても問題ないようにシャドウゲンガーを影に潜ませている。


「シーリング家に寄った理由は分かっているかい?」

「はい。伯爵が自分の領地を通ったにも関わらず挨拶へ訪れなかったら自分を蔑ろにしている、と相手に思わせてしまうからですね」

「面倒な話だが、メンツを気にしているのが貴族だ」


 不満に思ったところで、両家の規模を考えれば何か行動に起こせる訳ではない。

 だが、数十年や数百年後にはどのようになっているのか分からない。

 大貴族だからこそ自分の管轄している地域では、蔑ろにしている訳ではない、と示す必要がある。


 なるべく早く王都へ着いた方がいい。

 しかし、寄り道をせず速さを優先させるほど追い詰められている訳でもない。

 二日経っているにも関わらずバランド子爵はアリスターから出る様子がなく、連絡を出した気配すらない。

 こちらにとって都合がいいぐらい無能な人間だ。


「それから、もう一つ理由がある」

「何かあるんですか?」

「伯爵の夫人がシーリング家の出身。つまり、現当主の妹だ」

「うわ、それは蔑ろにする訳にはいかないですね」


 爵位を継げる兄と優秀な妹。

 家臣の中には兄よりも優秀な力を見せつける妹を推している勢力もあったらしい。そういった人たちの目的は、シーリング家を継いだ妹に自らの息子を婿入りさせることにある。

 状況次第では、お家騒動の種に成りかねなかった。


 ところが、アリスターへ出て行ったことでお家騒動は収束し、妹を推していた勢力も兄につくこととなった。


 一時の平安が訪れた。

 その間に兄は、結婚をして子供を儲けることで落ち着いた。


 しかし、数年後に舞い込んできた報せに誰もが驚愕した。

 自分たちとは関係がなくなったはずの妹が伯爵夫人の座を射止めた。

 家臣の誰もが、彼女の実力は本物だったと後悔した。夫人と言っても、辺境一帯を統括しているアリスター伯爵家の婦人。しかも、当主が不在の間は留守を任されるぐらいには信頼されている。

 シーリング家の領主よりも上の地位と言ってもいい。


「前当主だった方は、娘を外に出したのが自分だから気にしていなかったらしい。ところが、そんな経緯もあって現当主は伯爵夫人に対して強いコンプレックスを抱いている」

「はぁ」


 こういった貴族関係の話は面倒だとメリッサや迷宮核(ダンジョンコア)から言われている。俺としても必要がなければ絡みたくない身分の人たちだ。


「少しでも情報が欲しいらしく会食を望まれている」


 伯爵や今回の騒動の中心人物とも言っていいガエリオさんなら貴族の会食に呼ばれても不思議ではない。


「頑張ってください。夕食はこちらで勝手に済ませますから気にしなくても大丈夫です」


 収納リングや道具箱(アイテムボックス)にはシルビアの用意してくれた食事が大量にある。


「いや、呼ばれているのは君もだ」

「俺もですか?」


 一介の冒険者に過ぎない俺に貴族が会いたがるとは思えない。


「君はもう少し自分の価値を理解した方がいい」

「理解していますよ」


 Sランク冒険者以上の戦闘力を持っている。

 危険な魔物が出没した際には重宝されるのは間違いない。


「そういう意味ではない」


 もちろん分かっている。

 目立ってしまったことで国に目をつけられることとなった。今回の騒動の裏に隠された本当の目的に気付ける人なら、ガエリオさん以上に俺を丁重に扱ってもおかしくないぐらいだ。

 そんな人物と知己を得ておきたい。

 夕食を一緒にするぐらいだが、知らない仲ではなくなる。


「……いいですよ」


 ベッドから立ち上がる。


 気は進まない。しかし、ここで断ってしまうとガエリオさんの評判を落としてしまうことになる。

 俺を呼ぶ人間にとって、今のガエリオさんは俺の義父だ。

 俺の行動は、そのままガエリオさんの評価へ繋がる。


 色々と迷惑を掛けることになっているので最大限の便宜は図るべきだ。


「そこで、相談なんだが……」

「何か?」

「誰か女性陣を連れてくることはできないだろうか?」


 会食には、シーリング家の夫人も参加する。

 女性が一人だけでは会食の席に華がない。


 伯爵夫人を連れて来ている状況なら参加させるのだろうが、生憎と連れて来ていないため参加させることはできない。

 騎士も男性ばかりで、二人いる女性騎士も若いため夫人役が務まらない。


「それを言ったらウチの女性陣も同じですよ」


 20歳前の女性ばかりだ。

 領主の目から見れば小娘同然だ。


「いてくれるだけでいいんだ」

「それが難しいんですけどね」


 今回の依頼は、それほど難しくないため道中は屋敷で全員を待機させている。

 一応、危なくなるようだったら召喚することを条件に許可してもらった。子供たちの面倒を見る必要もあるため、ちょうどいいとは言える。


『誰か来たい人?』

『……』


 問題は率先して貴族との会食に参加したい、と思う人物がいないことにある。

 念話で呼び掛けても無視されている。


 美味しい料理は出るのだろうが、貴族との食事は料理を堪能できるような場ではない。


『仕方ありません。私が参加します』

『いいのか?』


 メリッサが参加を表明した。

 相手を考えるなら適任だと言える。


『少し確認したいことがあったので情報収集を頼むつもりでしたが、シーリング家の当主と話ができる状況にあるなら私が出向いた方が早いです』


 問題はディオンだ。


『この子は、あまり泣かないですし、母親の誰かがいれば安心してくれます』


 特にリエルの母親であるノエルには凄く懐いており、リエルと一緒にノエルに抱かれていると本当に双子のように見える。


『少し時間を下さい。用意をします』

「こっちへ来てくれるようです」

「それはよかった」


 10分ほど待っているとメリッサから連絡があったため【召喚(サモン)】を使用する。

 男しかいない殺風景な部屋に白いドレスを身に纏ったメリッサが現れる。化粧も薄くではあるもののしっかりと施されており、以前の引き締まった体を惜し気もなく晒している。

 とても出産から数日しか経っていないとは思えない。


「……娘のこのような姿を見るのは複雑な気分だ」


 俺のパートナーとして参加するメリッサ。

 当然、妻として見られるわけで父親のガエリオさんの心中は複雑だった。


「その気持ちは分かりますよ」

「まだシエラちゃんやソフィアちゃん、それにリエルちゃんは幼いんだから心配するのは早過ぎるぞ」

「そんなことはありませんよ」


 少し前に未来の光景を見せられている。

 シエラの未来を想うと複雑な気分にさせられることが度々ある。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無能と明言された登場人物は物語で初めてな気がするが、 それが女性より低身長な人物であることに作者の悪意を感じる。
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