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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第2話 兄弟姉妹

 アルフを抱いて屋敷の中を移動する。

 隣にはソフィアを抱いたシルビアとシエラを抱いたアイラがいる。


「ここ?」


 部屋の前で立ち止まるとシエラが首を傾げた。

 入ったことのない大部屋。何があるのか分からないため怖くなってきたようだ。


「大丈夫。この先には、メリッサお母さんやノエルお母さんがいるから」

「ほんとう!」


 アイラに抱かれたまま両手を挙げる。

 3日前から姿を見なくなったメリッサとノエル。食事の時には必ず姿を見ていたのに全く姿を見ていないせいで不安になっていたため、どこにいるのか質問してきた。

 単純に産後の疲労で部屋から動いていないだけだ。


 ただ、出産後にシエラたちと会わせるのは見合わせた。どちらも赤ん坊なので落ち着くのを待っていたのだが、不安そうにしているシエラを見て会わせることにした。


 部屋の中に入るとベッドに腰掛けたメリッサが本を読んでいて、ノエルは楽しそうに鼻歌を口ずさみながら編み物をしていた。

 二人とも昼間なのにパジャマを着ている。

 アイラに下ろしてもらうとてってってっ、とベッドへ駆け寄る。


「だいじょうぶ?」

「心配してくれるの? 大丈夫よ」


 頭をメリッサが撫でてあげると顔を綻ばせる。

 病気に罹ってしまったせいで会えないと思ってしまったのだろう。


「さ、紹介してあげるわ」

「?」


 ベッドの傍にいたシエラを抱き上げるとメリッサも起き上がる。


「大丈夫なのか?」

「問題ありません。大事を取って横になっていただけですから今日の夕食には下へ行こうと思います」


 この三日間はシルビアが食事を部屋へ持って行って食べていた。


 メリッサだけでなくノエルも問題ないようなのでベッドから出ると移動する。

 そこには大きなベビーベッドが置かれており、二人の赤ん坊が寝かされていた。


「わぁ!」


 二人の赤ん坊を見た瞬間、シエラが目をキラキラさせていた。

 もうすぐ新しい弟か妹が生まれることは知っていた。それが現実になったことを知って嬉しさを露わにしていた。


「アルフ、ソフィア。あなたたちの弟と妹よ」


 シルビアがソフィアをベッドの上に座らせたので俺もアルフをディオンの隣に座らせる。


「この間からあなたたちもお兄ちゃんとお姉ちゃんになったの」


 お姉ちゃん。

 その言葉を耳にすると二人の顔がシエラへと向けられた。


「へへへっ」


 自分のことを言われていると思ったシエラが照れて笑みを浮かべる。


「こっち」


 寝ているディオンを指差してアルフに見るよう言う。


 指の先にいるディオンのことをジッと見つめるアルフ。

 何を思ったのか寝ているディオンの胸をペチペチと叩く。先に生まれていたとしても同じ赤ん坊にカテゴリーされるアルフ。叩かれても痛がるようなことはない。ただし、寝ているところを起こされたため不機嫌になっている。


「たぁ!」


 叩いているアルフの手をはねのける。

 その後、目をパチッと開けてアルフを見る。


「……」

「……」


 アルフとディオンの視線が交錯する。

 ゆっくりとディオンへ手を伸ばす。


「ぁう」


 自分に近付く指をアルフが必死に掴む。

 赤ん坊は何にでも興味を示す。初めて目にする相手を前にして触って確かめている。


「ぅ」

「あう! あう!」


 ディオンとの触れ合いが楽しくなってきたアルフが喜びながらディオンの頭を撫でる。よく親や祖母、それにシエラからされていたのを覚えていた。


「あぅ……」


 ディオンも心地いいのか眠りそうになっている。


 奥の方を見ると二人の女の子が見つめ合ったまま動かないでいた。


「えっと……」

「どうしたんだろう?」


 母親であるシルビアとノエルも戸惑っていた。

 寝かされていた女の子は、ノエルが産んだリエル。母親の特徴をしっかりと受け継いでおり狐耳と狐の尻尾を持つ獣人の女の子だった。

 まだ耳と尻尾はちょこんとあるだけ。ノエルの母親であるノンさんによれば成長するにつれて大きくなるらしい。


 獣人は成長が早い。まだ生まれて3日目なのに目に付く物全てに興味を持ってしまい、今にもハイハイしてしまいそうなのでノエルは気が気でなかった。今も初めて見る姉に興味津々といった様子だ。


 一方、見つめられている姉の方は戸惑いながら自分の頭の上を触る。

 ペタペタ。

 リエルにはあって自分にはない。

 そのことにショックを受けていた。


「ソフィアが持っていないのは仕方ないのことなの」

「?」

「狐さんの耳は獣人しか持っていないの。だから、お母さんたちの中でもノエルお母さんしか持っていないでしょ」


 ノエルが強調する為に狐耳を動かす。

 抱かれる度に目の前で動く狐耳に興味津々だったソフィア。


「あ、う!」

「あ……」


 気付いた時には遅かった。

 ソフィアがリエルの狐耳をギュッと掴んでいた。

 手を伸ばした時の動きは、欲しい物がある時に掴む為の動きだ。生まれたばかりの妹が持っていて思わず欲しくなってしまった。


「ふぎゃぁぁーーー!!」


 大声でリエルが泣き出してしまった。


「ソフィア!?」

「ふぇ!? ふぎゃぁぁーー!!」


 引き離す為に怒りながらシルビアが抱き上げるとソフィアまで泣き出してしまった。


「あうーーー!」

「あぁあうーーー!」


 さらにつられてアルフとディオンまで泣き出してしまった。

 耳を塞ぎたくなるところだが、まずは子供たちを落ち着かせるのが優先。母親たちがそれぞれの子供を抱き上げてあやしている。シルビアがソフィアをあやしているためアルフはアイラがあやしている。


「いいこ、いいこ」


 アルフを抱いたままアイラが屈むとシエラが一生懸命に頭を撫でで落ち着かせようとしている。


「ぐすぅ……」


 それで、どうにか落ち着いてくれたのか泣き止んでいた。

 他の子供たちも数分も奮闘する必要があったが落ち着いてくれた。


 ここからは叱る必要がある。


「いい、ソフィア? お耳を触られるのはすっごく嫌なことなの。だから触っちゃダメよ」


 注意されたソフィアがコクッと頷く。

 言葉の意味は分かっていないだろうが、自分が狐耳を触ったことで怒られたことは理解してくれたはずだ。


 獣人の獣耳は非常にデリケートらしい。獣の特徴が最も現れている部分の一つであり、周囲の気配に対して敏感になっている。そのため大人でも他人に触られるのを嫌い、夫婦や恋人といった心を許した相手にしか触らせない。

 あんなモフモフした耳を他の人は触れない、なんて可哀想だ。


「静かになったな」


 気付けばディオンとリエルが寝ていた。

 アルフとソフィアも泣いて疲れてしまったのか生まれたばかりの二人の隣で横になるとすぐに寝息を立て始めた。


「こうして見ていると双子が二組いるみたいだな」

「それには同感ですが、ディオンとリエルは同じ日に生まれただけですよ」


 ディオンとリエルも自分たちと兄妹であることをなんとなく理解しているのか一緒にいると安心できるみたいで離れ離れにしてしまうとどちらかが泣き出してしまう。


「シーもねる」


 ディオンとリエルの間にシエラが横になる。

 気付けば寝てしまっている。


 ソフィア、リエル、シエラ、ディオン、アルフの順番で5人の子供たちがスヤスヤと眠っている。


「随分と増えたな」


 シエラが生まれてから2年も経っていないのに家族の人数が倍近くに増えていた。


「で、イリスはいつ妊娠するの?」

「え……」


 寝ている子供たちを見ながらアイラが尋ねる。

 尋ねられたイリスは予想していなかったのか呆然としている。


「だって順当にいけば次はイリスの番でしょ」


 唯一子供を産んでいないイリス。


「あたしも二人目が欲しいからね」


 さすがにイリスの順番を飛ばしてまで自分が妊娠しようとは考えていない。


「腹違いの弟と妹を可愛がっているシエラだけど、できることなら本当の意味での弟や妹にも会わせて喜ばせてあげたいじゃない」

「いや、私は……」


 ハッキリと自分の意思を示さないイリス。

 聡明な彼女のことだから、こうなることは事前に予想できていたはずだ。


「ま、焦る必要はないわ」

「そうそう」

「焦る必要はありませんよ」

「これからしばらくは育児で大変だろうからね」


 赤ん坊が4人いる状況なので交代で世話をしていても夜泣きで苦労させられていた。

 ノエルの言うことも、もっともなので順番に関する話題は打ち切りとなった。


「願わくば、今の幸せが続いて欲しいところだけどな」

長女:シエラ

長男:アルフ

次女:ソフィア

次男:ディオン

三女:リエル

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