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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第31章 黒影傭兵
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第18話 狂気の村-後-

 殺意の乱れる戦場へと突撃する。

 優先させるのは村の中にある、という異常を排除するリオを無事に目的地まで送り届けること。重要人物であるリオの護衛は騎士たちに任せればいい。


『俺たちの仕事は分かっているな』

『もちろん』

『殺意を向けてきた相手を無力化すればいいのですね』


 アイラとシルビアが答えるのとタイミングを同じくして3人の男たちが殺意に満ちた目を向けてくる。


「へへ、帝国軍だ」

「やっちまえ!」

「おうよ」


 槌を手にした大男がこちらへ駆けながら振り下ろしてくる。膂力が満ちる筋肉から振り下ろされる槌は、叩く物全てを潰してしまいそうな迫力がある。


 サッと白い鎧を纏ったシルビアが前に出る。

 シルビアが手にしているのは大盾。鎧を纏って大きくなった体の大部分を隠せるほどに大きな盾。


「潰れな!」


 大男が槌で大盾を叩く。


「うおっ!?」


 叩いた瞬間に弾かれたように後ろへ仰け反る。

 シルビアが手にしている大盾は魔法道具で、『受け止めた衝撃を相手にそのまま返す』効果がある。

 元々、白い鎧を纏っていた男は魔法道具に頼ることなく技術によって効果が半減していたものの似たようなことができていた。しかし、即席の傭兵であるシルビアにはそのような技術などあるはずもないため魔法道具に頼らざるを得ない。


「それがどうした!!」


 仰け反るものの飛び掛かってくる男。

 けれども、飛び出した瞬間に地面へ倒れ伏してしまうことになる。


「いてぇ!」


 男の足が斬られていた。

 とはいえ、切断されたわけではないので大人しくしていれば日常生活を送れる程度に回復させることはできる。


「何者だ」

「ふっ」


 赤い鎧を纏ったアイラの放つ2本の斬撃によって男の背中が斬られて意識を手放す。


「こいつ」

「死ねぇ!」


 アイラの左右から二人の男が襲い掛かる。

 それを両手に持った双剣で軽く受け止めると弾き返し、体勢が崩れたところを斬る。鎧を纏っていてもしっかりと動けるようだ。


「問題ないみたいだな」


 『幻影傭兵団』の3人。

 大剣のホセ、大盾のノヴァン、双剣のレイヤ。


 最初にプロフィールを聞いた時にはシルビアに双剣を任せるつもりでいた。普段から短剣の二刀流で戦っているし、体格的にも似ていたので慣れると思っていたからだ。

 ところが、鎧を纏って実践してみると体が動かし難く普段の動きとの違いのせいで逆に危なっかしくなってしまった。


 そこで、アイラに頼んで交代してもらった。


「はぁ!!」


 大剣を手にした男が斬り掛かってくる。

 振り下ろされた刃を自分の大剣で受け止めると無防備に晒された腹を殴る。


「うっ……」


 急激な衝撃に眉を顰めてから気絶する。


 村の方を見ると駆けるリオに数十人の男たちが駆けていた。

 8人の騎士を連れて走るリオ。大人数での移動となったため目立ってしまい、王国軍に見つかってしまった。


 王国軍の後方で魔法の準備をしている者がいる。

 狙いは視線の方向からリオだと分かる。


 リオの近くにはまだ王国軍の兵士が何十人も向かっている。そのまま向かえば彼らも巻き込まれることになる。

 向かっている者たちは周囲や後ろを気にした様子がない。狂気に侵されているせいで自らの身への危険を判断する、という感覚が欠如してしまっている。

 魔法使いも味方が巻き込まれることを気にしていない。


 そもそも王国軍と帝国軍――二つの軍勢で敵味方分かれて戦っているが、どこまで認識しているのか定かではない。


「悪いが、狙わせるわけにはいかない」


 大剣に魔力を纏わせる。

 走る王国軍を跳び越えた直後、魔法使いの杖から火球が放たれる。

 魔力の残量など考えない全力の炎。


 ――ヒュン!


「……なにっ!? 魔法が消えた!!」


 剣で火球を斬る。

 通常の剣で斬ったなら風圧によって左右に分けられることはある。

 しかし、魔法使いの放った火球は最初からなかったかのように霞となって消えてしまった。


 自らの魔法が無効化されたことで驚く魔法使い。

 一気に駆け抜けると魔法使いの体を叩いて気絶させる。


 用意した大剣には、魔力を纏った状態で斬ることによって魔法を消滅させる効果がある。無効化したい魔法の強さによって必要とされる魔力の量が増減するが、見ただけではどれだけの量を注いでいるのか分からないようになっている。

 これでいい訳も立つ。


「随分といい武器を持っているじゃねぇか」

「どうも」


 混乱する戦場へ突っ込んで行ったラセルだ。

 彼の持つ剣は、気付けば血で真っ赤に染まっていた。


「さすがに、何十人も斬っているのに敵の数が減らないんじゃ血を拭っているような暇すらないさ」


 お互いに背を預け合う。

 どうやらラセルが派手に暴れていたせいで警戒され、取り囲まれていた。唯一の救いは、取り囲んでいるのが王国軍だけということだ。


「うおっ!」


 人垣の向こうから矢が射られる。


「ちょっと盾になってくれ」


 鎧に矢が当たる。

 けれども、どの矢も刺さることなく弾かれる。

 この鎧も特注品なので一般兵程度の弓矢では傷をつけることすら不可能だ。


「ふぃ~お前がいてくれて助かったぜ」

「それより次が来たぞ」


 剣を手にした兵士が突っ込んでくる。

 正面の兵士が振り下ろした剣を右手で掴み、左手で殴る。

 その隙を狙って殴った兵士の脇から二人の兵士が斬り掛かってくるものの鎧に弾かれてしまう。よろめいた二人の頭を掴んで挟み込むようにして叩き付けると気絶して倒れた。


「うおおおぉぉぉぉぉ!」


 雄叫びを上げながら大男が斧を振り上げながら近付いて来る。

 振り下ろされた斧を剣で受け止めると騎士の腹を蹴って飛ばす。


「へへっ」


 蹴り飛ばされた男が笑っている。

 普通の兵士が相手だったなら鎧を纏った足で蹴ったため気絶していてもおかしくない。

 だが、斧を持った騎士は耐えられた。


「仕方ない」


 剣を持ち直して駆ける。


「あ?」

「そうか。気付かなかったか」


 後ろで兵士が惚けた声を出す。

 直後、全身から血を噴き出して倒れた。


 さらに剣と盾を装備した騎士が攻撃してくる。どちらも強い。

 剣を振るうと騎士の装備がバラバラに斬られ、騎士も胸から血を流して倒れた。


「なにやっているんだか」


 ラテルが呆れたような声を出す。

 それも襲われながらだ。


「こいつらも正常な精神なら死ぬ必要はなかったかもしれない。助けられるようなら少しだけでも助けたい、そう思ったから行動しただけだ」


 斬り掛かってきた兵士を剣で叩いて気絶させる。

 混乱する戦場に気絶させられた状態で放置させられるのが、どのような結果を招くことになるのか予想はできないが、最低限の手助けぐらいはさせてもらう。

 ただし、それも助けられる奴に関してだけだ。先ほどの斧を持った騎士のように攻撃しても耐えてしまうと気絶させるのが難しくなる。そういう相手には問答無用で斬って戦闘不能にする。


 シルビアとアイラも同様の対応をしている。

 持っている盾で身を守りながら相手を叩いて気絶させるシルビア。

 双剣で斬るものの致命傷は与えずに戦闘力を奪うアイラ。


「ここの戦闘も陛下が異常を拭い去ってくれれば終わる。それまで辛抱すればいいだけの話だ」

「だと、いいがな」

「何か気になるのか?」


 接近してきた騎士を斬る。

 やはり、上質な鎧を纏っている相手を気絶させるのは難しい。


「いや、気になるっていうほどの問題じゃない。ただの勘なんだが、このまますんなり終わらせてくれるとは思えないな」

「……」


 たしかに敵の意図が不明だ。

 それに【鑑定】しても詳しいことが分からないのも気になる。単に狂気に塗れた戦場のせいで見えないだけなら大きな問題はないのだが、致命的な問題を見落としているのかもしれない。


「邪魔だ」


 騎士が5人まとめて近付いてきたため斬撃を飛ばして吹き飛ばす。

 倒れた時の衝撃で気絶した者が一人、立ち上がれない者が一人、残りの三人が立ち上がってきたため向かって来る前に斬る。

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