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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第31章 黒影傭兵
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第4話 子供たちの未来―前―

 ソニアに案内されたのはグレンヴァルガ帝国皇帝の私室。

 本来なら家臣の中でも最側近ぐらいしか入室することが許されない部屋へ誰に止められることなく辿り着いた。


 というのも、移動はソニアの【転移穴(ワープホール)】で行ったためだ。

 このスキルは非常に強力だ。なにせ空間転移を阻害する結界を事前に張り巡らせているような場所以外には自由自在に行き来することができる。

 おかげで全ての移動をカット。

 一瞬で辿り着くことができた。


「よく来てくれた」


 部屋にはリオと彼の眷属が全員勢ぞろいしていた。

 今日は全ての予定を入れずに完全な休日にしてくれていたため部屋の中央にあるテーブルの上にティーセットを置いて寛いでいる。


「ああ。協力してほしいと聞いたからな」


 まずは話だけでも聞くことにした。

 伝言だけならソニアから聞くだけで十分だが、事の重要性を考えるとリオと直接話し合いの場を設けた方がいいと考えたため移動させてもらった。


「まずはこっちも――」


 眷属を全員【召喚(サモン)】で喚び寄せる。

 今回は話し合いなのでメリッサとノエルも同行している。


 ただし、最大の目的は話し合いではない。


「ガーディル」

「シエラ」


 リオの後ろには彼の長男であるガーディル君が隠れていた。

 今年で2歳になったガーディル君。順調に問題もなく育っているようで、数年後には皇太子としてデビューし、ゆくゆくはリオから皇帝の座を継ぐことになるはず。

 現皇帝であるリオだが、迷宮主になったことで皇帝の地位も引き継いだだけなので早い段階で譲るつもりらしい。


 子供たちの邂逅。

 せっかく親同士が知り合いなので子供たちを会わせてみよう、ということになった。


 人見知りする訳ではないらしいが、知らない人が何人も突然現れたことでガーディル君は恐くなって隠れてしまった。

 それはウチのシエラも同じで初めて見る人たちに対してどのように接すればいいのか分からず戸惑っていた。


「シエラ、挨拶は?」

「……こんにち、は」


 一生懸命教えた甲斐あって1歳でも簡単な挨拶ができるようになった。

 これもティシュア様の影響なのだろうが、立派な姉であろうとするシエラの努力があってこそだ。


「あそぼう!」

「うん!」


 挨拶をしたことで二人とも打ち解けたみたいだ。

 初対面のような二人だが、赤ん坊の頃に一度だけ会っている。せっかくなので久しぶりに会わせてあげようと思って今日は連れてきた。


 ガーディル君の傍には二人の妹もいた。

 せっかくなので四人で仲良く遊んでほしいところだ。


 さらに当時はいなかったアルフとソフィアも一緒だ。

 皇帝の私室には生まれたばかりの子供でも安心して遊ぶことのできる絨毯の敷かれた場所がある。

 そこでは、生まれて数カ月後リオの子供たちがいる。

 同じくらいに生まれた子供同士で遊ばせてあげた方がいいだろ。


「二人と仲良くしてあげてね」


 シルビアが抱いていた二人を座らせる。


「う?」


 初めて見る二人にリオの子供四人が近付いてくる。一人はカトレアさんが産んだ二人目の子供である女の子。残りの三人はアイリスさん、ボタンさん、ナナカさんが産んだ子供で男の子が二人に女の子が一人。

 四人の子供は歓迎するように笑顔で近付き、お互いの手を叩いて遊び始めた。

 双子は簡単に馴染んでくれたみたいだ。


 それにしても……


「しばらく会わない間に随分と増えたな」


 気付けばリオの子供は七人に増えていた。

 さらに来年に二人増える予定でいる。

 カトレアさんとマリーさんが妊娠している。既に二人もの子供を産んでいるカトレアさんは少し頑張り過ぎな気がする。


「俺は新しく皇帝になったようなものだからな。次代の事を考えると貴族との政略結婚に使える子供は少しでも必要になるんだ」


 リオが皇帝になった際、皇族の多くが一新された。

 身分が低かったため不遇な扱いを受けていたリオ。自分とは違って好待遇を受けて成長した皇族を何の成果も挙げず、皇帝の息子や娘だから、という理由だけで好待遇を受けさせ続ける訳がない。

 色々な理由をつけて辺境へ送りつけたり、平民へ身分を落としたりしていた。

 それによって皇帝と血の繋がりのある貴族が減った。

 次世代の事を考えれば政略結婚は必須だった。


「ただし、問題がない訳じゃない」


 皇子や皇女だったとしても母親の身分が低い。

 冒険者や聖職者、果ては出自の全く分からない浮浪児だった者までいるリオの眷属。

 そのためカトレアさんが産んだ子供以外は、皇帝の子供であったとしても軽く見られているところがあった。


「上級貴族との結婚に使えるのはロクシャナぐらいだ。他の子供たちは政略結婚には使えない。好きになった奴が平民だろうと結婚は認めてやるさ」


 身分による問題からカトレアさんが頑張る必要があった。

 頑張った。


「……大丈夫ですか?」


 心配したシルビアがカトレアさんを労わる。


「ええ、大丈夫よ。貴女も子供を産んだなら分かると思うけど、出産はすごく大変よね。けど、それ以上にガーディルやロクシャナの大きくなっていく姿を見られるのが凄く嬉しいの」

「その気持ちはわたしにも分かります。双子だから生まれた時から一緒で、反応も同じだった二人ですけど、大きくなるにつれてちょっとずつですけど違いが出るようになってきたんです。そういう姿を見るのは凄く楽しいです」


 双子らしく同じ動作で手を叩く二人。

 笑い方も手の動きも俺には同じにしか見えない。

 けど、母親のシルビアからすれば違いがあるらしい。


「カトレアには迷惑を掛けるけど本人が了承済みだ。頑張るしかないだろうな」


 どこか遠くを見つめるリオ。

 本当に頑張ったんだろうな。


「そっちだって二人は増える予定でいるんだろ」

「まあ、な」


 増える子供の話になれば矛先はメリッサとノエルへ向く。

 リーシアさんやアイリスさんが興味津々といった様子で二人の様子を確認している。


 子供の話で盛り上がる女性陣。

 その様子をリオと一緒に穏やかな気持ちで眺めていると魔力の高まりを感じる。


「なに……!?」

「ちょ……!」


 高まる魔力を発しているのはガーディルとシエラだ。

 【風神の加護】を持つシエラは風神の力を借りて力を出すことができる。

 ガーディル君も帝国皇帝の血筋に相応しく、生まれながらにしていくつかのスキルを所有しているだけでなく、皇太子になるべく英才教育を生まれた直後から受けているため同年齢の子供に比べれば強い。


 二人とも力の扱いには慣れている。

 けど、今の二人は怒りに身を任せているような状態で危なっかしい。


「こら!」

「ガーディル!」


 父親二人がお互いの子供を抱えて止める。

 腕の中にいる子供を傷付けないよう注意する必要があるため力を入れられない。そのため二人とも父親の腕の中でジタバタ暴れている。

 どうやら相手のことを相当怒っていると見ていい。


「何があったんだ?」


 シエラは理由もなく怒るような子供ではない。

 事情を聞くとプイッと顔を逸らされてしまった。


「あの、ね……」


 ズボンを引っ張られる感覚に足元を見ればリオの娘の一人が引っ張っていた。

 リーシアさんの娘のリディアちゃんだ。幼い口調でたどたどしいものの母親から受け継いだ賢さから説明してくれる。


 事の発端は、ガーディルが父親を自慢したことだった。

 自分の父親は皇帝。国で最も偉い人物。

 その自慢に妹の二人も頷いていた。


 そんな自慢を聞いて黙っていられなかったのがシエラ。

 シエラも自分の父親が凄いことを自慢した。


「すっごく、つよいまものさんをやっつけたんだから!」


 キマイラを倒した話は詳細を省いたもののシエラにも説明していた。

 キラキラとした目をしながら話を聞いていたシエラは、自分の父親のことを本当に凄い人だと思っていた。


 だからこそ言い返した。


「けど、おとさんが『ぼうけんしゃしゃん』だっていったら……」


 馬鹿にされてしまったらしい。

 リオは冒険者から皇帝になった。未だに冒険者でいる俺のことをガーディルは自分の父親よりも低い存在だと思ったらしい。

 子供らしい考え方だ。


「ガーディル。今日来るお客さんは、お婆様を助けてくれた人で父様にとって恩人だって説明したよな」

「はい……」

「たしかに格で言えば父様の方が圧倒的に上だ。けど、お婆様のことで感謝している恩人なんだから、そういう態度はよくないぞ。ほら、シエラちゃんとも仲直りしろ」

「シエラも」

「うん」


 抱えていた二人を床に置く。

 テクテク、とゆっくり近付いて行くと握手をした。

 これで仲直りは完了。


「あはっ、あはははははっ!」


 何故か笑い声が響く。

 その声に驚く子供たち。大人も同様だ。


「どうしたのですか、マリーおかあさま」


 笑っているのはマリーさん。

 彼女は何故か笑いを堪え切れずに声を挙げていた。


「なんでもないの。気にしないで遊んで」

「はい」


 ガーディル君に手を引かれてシエラが部屋の奥へと行く。そこにはガーディル君お気に入りの玩具があり、彼なりにおもてなしをしてくれるようだ。


「で、どんな未来を観た?」

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