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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第5章 賞金稼ぎ
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第16話 賞金

 辻斬を倒した俺たちは、その足で冒険者ギルドへと赴いていた。

 理由は、アリスターの街を騒がせていた犯人の引き渡しである。物が物なので、受付にいたルーティさんを捕まえて素材の引き渡しなどを行う為の部屋に行き、収納リングに入れておいた辻斬の死体を出した。


「本当に捕まえたのね……」


 俺の担当であるルーティさんが斬り殺された死体を見て頬を引き攣らせていた。

 捕まえたとは、死体になってしまっているのでとてもではないが言えない。


 だが、男を犯人として引き渡したところで問題が発生した。

 男が辻斬に使用していた魔剣は溶かしてしまったので証拠として提出することはできないし、正確な目撃情報も少ないので人相から犯人だと断定する証拠にはならない。

 それでも今後、辻斬事件が起こらなければ死体となった彼が犯人として処理されることになる。


「けど、こっちは受理してくれないかしら」

「これは……」


 アイラが渡した物は似顔絵の描かれた1枚の紙。

 そこには、犯人の犯した罪と捕縛もしくは討伐した際の賞金額が記されていた。

 男は魔剣の影響によって苦しみながら死んだため苦悶の表情を浮かべているものの手配書に記されている特徴が一致していたためルーティさんは本人だと断定してくれた。


「では、賞金について確認してくるので少々お待ちください」


 ギルドの上階へと確認に行ったので気になったことをアイラに聞いてみる。


「そういえば、奴の賞金っていくらぐらいなんだ?」

「金貨100枚よ」


 結構な金額である。

 聞けばアリスターの街にやって来る前にも転々としながら生き血を得る為に殺人を繰り返していたらしい。最初は蛇や兎のような小さな動物でも我慢することができたが、次第に豚や牛のような家畜にまで手を出すようになってしまい、最終的に人を襲うようになってしまった。

 そうして黒い剣とローブの姿が情報として出回るようになってしまった。

 もっとも辺境であるアリスターの街までは届いていなかったようだ。


 そうしている内にルーティさんが戻って来た。


「こちらが金貨100枚でございます」

「ありがとう」


 アイラが戻って来たルーティさんが持っていた皮袋を受け取る。受け取った時の音からしてかなりの金貨が入っていることは予想できる。

 俺がいたおかげで辻斬を倒すことができたようなものだが、実際に辻斬を倒したのはアイラだし、今まで辻斬を追ってきたことが賞金という形で報われてもいいだろう。


 アイラが左手に皮袋を持って右手を俺の左腕に絡めてくる。

 ん?


「さ、色々とあったけど賞金も手に入ったんだから食事でも奢ってあげるわ」


 そういえば迷宮で行き倒れていたアイラを助けた時に食事を奢ってもらうっていう約束をしていたな。すっかり忘れていた。


「自分の歓迎会の費用を自分で出すっていうのも変な話だけど、あたしのパーティ加入を祝って盛大にやりましょう」

「え、俺たちとパーティを組むのか?」

「眷属ってそういうものじゃないの?」


 たしかに同じ眷属であるシルビアは冒険者としてパーティを組んでいる。

 だけど、俺は眷属だからといって相手の行動を縛るようなことはしたくない。アイラに何かやりたいことが他にあるならそっちを優先してくれてもよかった。必要な時に呼び出すことぐらいはあるかもしれないけど、俺に縛られてほしくはない。


「あたしも『魔剣の破壊』っていう目的が終わって、特にこれからの予定とか全く決まっていないの。その点、あんたに付いて行った方が面白いことが待っていそうな気がするのよね。だから、しばらくは一緒に冒険者らしく活動することにするわ」


 眷属云々ではないのなら、それぐらいはいいだろう。

 だが、アイラを認められない人物が1人いた。


「いったぁ!」


 ゴン、という重たい音が部屋の中に響き渡り、アイラが俺から手を放して頭を押さえて床に蹲ってしまう。

 そのまま背後に立っていたシルビアを睨みつける。


「どういうつもりよ」


 アイラを攻撃した犯人はシルビアだ。というか、今のアイラはステータスが強化されているので、同じようにステータスが強化されている眷属のシルビアや主である俺ぐらいでなければダメージを与えることすら難しい。

 何かに怒っているらしいシルビアは、持っていた短剣の柄でアイラを殴っていた。


「いえ、あまりにあなたの態度が眷属としてなっていなかったので」

「は?」


 シルビアの視線は酷く冷たかった。

 そんな視線を受けてもアイラは不機嫌な態度を隠さずに立ち上がり、シルビアを睨み付ける。


「わたしたちのパーティへの加入。これは、ご主人様も特に反対されないようなので、眷属であるわたしから何かをいうことはありません。ですが、眷属に相応しくない態度を取るあなたのことは許せません」

「マルスへの態度って何よ」

「まず、眷属なのですから主人に対しては敬語を使うべきです。次に人目のある場所でみだりに接触するべきではありません。それから、主人を名前で呼び捨てにするというのもいただけません」

「こんな風に言っているけど、主人のあんたはどう考えているの?」


 そうだな。せっかくの機会だからシルビアにも言っておくか。


「俺は眷属だからって相手の行動を縛るつもりなんて特にないぞ。だからシルビアもやりたいことがあるなら自由に過ごしてくれても――」

「いえ、わたしのやりたいことはご主人様の世話をすることですので、今の環境で十分に満足しております」


 アイラを睨み付けたままキッパリと断った。


「呼び方とか敬語だって初めて会った頃のようにしてくれても――」

「あの頃のわたしは忘れて下さい」


 ダメだ。俺が何を言ったところで今の態度を改める様子はない。いや、特に困っているわけでもないので、どっちでもいいんだけど。


「そういうわけで、あたしがマルスをどんな風に呼んだってあたしの自由だし、好きなように接しさせてもらうわ。あんたに対しても眷属として先輩だからと言って敬語を使うつもりなんてないわよ」


 その言葉を聞いた瞬間、シルビアの中で何かが吹っ切れてしまったらしい。

 シルビアの口からはフフフ、と邪悪そうな笑い声が小さく漏れていた。


 思わず逃げ出したい衝動に駆られてしまったが、主である俺が逃げ出すわけにもいかないのだろう。


「ええ、そうですね。そういえばわたしとアイラさん――アイラは同じ眷属として同格なのだから敬語を使う必要もないわ」


 俺に対するような態度を止めてアイラに接するシルビア。


「そう、魔剣と戦っていた時にもそんな感じで接してくれたけど、そっちがあんたの素なんだ」

「わたしは元々何の才能もないような村娘だったから、敬語とかも(コア)に頼んで急ごしらえで覚えたものだしね」


 あの野郎、最近俺へ話し掛けてこないと思っていたらシルビアに色々と教えていたのかよ。迷宮核(ダンジョンコア)は無駄に長生きしているから迷宮運営には不必要に思える知識もたくさん持っている。


「ここは、どっちの立場が上なのかはっきりさせることにしましょうか」

「はっ、忘れたの? たった4日前には手も足も出なくて遊ばれるだけだったくせに本気であたしに勝つことができると思っているの?」

「問題ない。ギルドの依頼を片付ける傍ら迷宮に潜ってレベルも上げてきたわ。わたしたちはレベルの低さに反して高いステータスを持っているから自分よりもレベルの高い相手にも簡単に勝てるの。だから今の低いレベルならちょっと強い相手に勝つだけで簡単に上げることができるのよ」


 シルビアが言うように彼女のレベルはいつの間にか26まで上昇していた。

 迷宮核が傍にいたと言うのなら無茶なことには挑んでいないはずだが、あまり無理はしてほしくない。


「いいわ。今度はこっちもステータスが上がっているからあたしたちの条件は同じはずよ。ルーティさん、だっけ?」

「は、はい!」


 2人の殺気に押されたルーティさんがいきなり自分を呼ばれて声を上げている。


「このギルドにも訓練場があるのよね」

「はい、奥の方にあります」


 ギルドには戦闘のできる冒険者が多くいるので、依頼を受けていない冒険者の為に自主練用に訓練施設が置かれている。俺も何度か先輩冒険者との訓練に使わせてもらったことがある。


「そんな施設があったんだ。じゃあ、そこで決着を付けることにしましょ」

「同感」


 そのまま2人が連れ立って仲良く訓練場へと一緒に出て行った。


「えっと……言っている意味はよく分からなかったんですけど、マルス君もこれから大変になりますね」

「まあ、2人とも受け入れてしまったので頑張ります」


 眷属とか核とか、色々と危険なワードが出てきてしまったが、ルーティさんは聞き流してくれることにしてくれたらしい。


 訓練場で行われた模擬戦の結果、ステータスもアイラの方が上回っていたのでシルビアも以前戦った時よりも善戦していたが、それでもあと1歩及ばずに負けてしまい、アイラは自由に接することになった。


第5章のリザルト

・眷属アイラ

・辻斬の賞金

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