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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第25話 ドラゴン騒動終結

「それでは、ウルカを騒がせていたドラゴンが討伐されたことを祝して――乾杯」

『乾杯!!!!!』


 その日の内にウルカヘと戻って来た俺たち。

 日が暮れ始めていた時間に戻って来たのだが、街では宴会の準備が進められており、俺たちの帰還を待っていた住民から快く迎え入れられた。


 現在は、街の中心にある広場で乾杯の音頭が町長によって行われ、賑やかに宴会が始まった。


「いやぁ、本当に助かったよ!」


 酒の入ったジョッキを手にした冒険者ギルドのギルドマスターであるロドリゲスが笑顔で近付いてきた。


「あの、いくつか気になることがあるんですが……」

「そんな堅苦しい話し方をしなくていいぞ」

「いえ、俺にとってはこれが普通なんで」

「そうか? で、何が聞きたいんだ?」

「俺たちが騒動を解決したことを疑っていないみたいですけど、いいんですか?」


 こういった村や町に被害を齎した特別な魔物の討伐依頼が出された時には、きちんと魔物が討伐されたことを確認することがある。冒険者の中には、討伐そのものを行っていなかったり、別の魔物の残骸を見せて討伐したことにしたりしてしまう者がいるためだ。

 だが、そういったトラブルに詳しいギルドマスターがいるにも関わらず誰も疑った様子がない。


「お前ら、どこから戻って来た?」

「どこって……」


 村から山脈へと入った道は使えなくなってしまっていたので、崖を滑るようにして下山した。

 それというのも、最後のブレスの打ち合いが行われるまではギリギリ道が形作られていたのだが、ブレスの衝突によって発生した衝撃によって道が使い物にならなくなるほど壊されてしまった。

 あの状態の道を使うぐらいなら崖を利用した方がマシなレベルだ。


「あれだけ派手な魔法を使った上、ここからでも見える山が消し飛んでいる。どちらかは消えていてもおかしくないだろ。そんな光景を見せられた俺たちは賭けた。で、お前たちが帰って来たっていうことは賭けに勝ったっていうことだ」


 山を消し飛ばせるような相手をどうにかできるはずがない。

 そこで俺たちがドラゴンを倒したことに賭け、彼らは自分たちの賭けが正しかったと信じられるように祝勝会の準備を始めてしまった。

 まあ、その準備は無駄に終わらなかったのでよかった。


 祝勝会の準備が事前に始められていたことも気になっていたが、不安を紛らわせる為のものだと分かった。


「それにドラゴンの何体かが逃げるように飛んで離れて行くのも見えた。もしも、ドラゴン側が勝っていたなら逃げるような真似はしなかっただろ」

「なるほど」


 ウルカから山の様子を見ていた人たちの何人かはドラゴン側が負けたと判断することができていた。


 元々ノーズウェル山脈にいたドラゴンは残されているが、自分たちを支配していたドラゴンが倒される瞬間を離れた場所から見ていたため怯えてしまっていた。

 しばらくは怯えたままなので人間を簡単に襲うようなことはないはず。

 それに元々は知能が高く、温厚であるため無闇に山から下りて人を襲うようなこともしない。


 こうして騒げるのはいいことだ。生きているということを実感できる。

 今回、最強種のドラゴン。

 その中でも、さらに強いとされる王クラスのドラゴンを相手にして久し振りに命の危機を感じることになった。


 今のままではダメだ。

 少なくとも宴会を楽しんでいるシルビアたちを守れるぐらいには強くならなくてはならない。


「こっちもいいか?」

「何ですか?」

「俺も長いこと冒険者をやっている。けど、山を吹き飛ばすような威力を持つ攻撃なんて初めて見た。お前たちのパーティに強い魔法使いがいるのは冒険者ギルドとして知っている。その魔法使いがやったのか?」


 ドラゴンは討伐できたが、一つの懸念があった。

 さすがに今回は強い力を衆目に晒し過ぎた。何らかの特別な力を開示しなければ危険因子と見做される可能性がある。そういった扱いを受けるのは非常に困るので分かり易いスキルでも明示した方がいい。

 幸いにして【魔神の加護】という分かり易いスキルもある。


 メリッサからスキルを借りれば俺のステータスカードにも【魔神の加護】を表示させることができる。

 詳しい事は省いて簡単に説明だけすれば……


「彼女がメリッサか?」

「えっと……」


 ロドリゲスの目は宴会場の中心へと向けられていた。


「よっ、姉ちゃん。いい飲みっぷりだね」

「姉ちゃんだなんて嬉しいことを言ってくれるね」

「おいおい……あんたみたいな美人を捕まえて褒めないなんてありえないだろ」

「それがそうでもないよ。ワタシの事を『ババァ』なんて呼ぶクソガキがいるんだからね」

「どこのどいつだ、そのバカは……まさか、あんたのパーティのリーダーじゃないよな」

「違うよ。さっき戦ったドラゴンのクソガキだよ」


 エールの入ったジョッキを片手に騒いでいる賢竜魔女。

 人垣の中心にいるが、【人化】のスキルを使い、ティニルから聞いたツァリスという名前を名乗っている。そのおかげで人間の中に紛れていても、ちょっと変わった角と尻尾のある獣人ぐらいにしか思われていなかった。賢竜魔女の言動が魔物とは思えないくらい人間臭いことにも受け入れられている理由はある。


 極限盾亀(リミットシードル)は、イリスに一度迷宮へ戻ってもらってから【召喚(サモン)】してもらったため迷宮で大人しくしている。

 同じように帰ってもらおうと思った賢竜魔女だったが、事もあろうにイリスの要請を断った。もう少し、迷宮の外を楽しんでから帰りたい、ということで宴会に参加することを許可した代わりに魔物であることがバレないように行動し、終われば帰ることを約束してもらっていた。

 本当に制御の聞かない魔物で困る。


「彼女はメリッサではなく、メリッサの師匠です。今回はちょっと苦戦しそうだったので事前に呼んで合流してもらっていたんです」


 師匠であることは嘘ではない。

 メリッサの容姿とは似ても似つかないため後でパーティメンバーのことを調べられた時に困るため賢竜魔女の立ち位置を事前にそのようにすることは伝えてある。酔って自分の素性をポロッと言ってしまう不安があるが、彼女を信じるしかない。


「そうか。師匠か」

「何か問題でも」

「いや、むしろ逆に納得した。そんな人の話は全く聞いたことがなかったが、大軍を一人で滅ぼせるほどの魔法を使える者の師匠だ。なら、山を消し飛ばせるほどの魔法を使えてもおかしくないかもしれない。うん」


 納得した、というよりも納得させているようだ。


「彼女を連れてきたおかげでドラゴンは倒せましたけど、彼女が暴れてしまったせいで山が使い物にならなくなってしまって申し訳ありません」


 ノーズウェル山脈は、ウルカに住む人々にとって大事な収入源を得られる場所になっていた。

 そんな収入源は跡形もなく消え去った。

 明日以降の生活を考えると申し訳ない。


「それは仕方ない。復興は必要になるだろうが、ドラゴンの脅威に怯えなくてはならない日々に比べれば安いものだ」

「ありがとうございます」

「ただ、倒したドラゴンの素材とかをいくつか融通してもらえると非常にありがたいのだが」


 ドラゴンは、鱗の1枚や爪の1本だけでも高値で取引される。

 復興にお金が必要になることを考えれば壊してしまった者の責任として補償を考えなくてはならない。

 迷宮の魔物の功績は、迷宮主の功績となる。それと同じように迷宮の魔物が何かを壊してしまったのなら、その責任は迷宮主が負わなくてはならない。

 こうなる可能性が最初から考えられたから賢竜魔女を外へ出したくなかった。


「できれば奥で倒した王竜については勘弁してほしいんですけど」

「何か使い道でもあるのか?」

「はい。俺たちの装備を一新しようと思います」

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