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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第17話 盾亀

 極限盾亀(リミットシードル)

 迷宮の地下80階のボスを務めてもらっている亀の魔物。人のように立ち上がって両手に備えた盾で前面と側面の攻撃を防ぐ。前と横からの攻撃が不可能だと判断した相手は後ろへ回り込むが、背中には盾と同様の硬度を持つ甲羅がある。


 どこから攻撃しても阻まれる。

 倒す為には防御力を上回れる攻撃力が必要になる。


 しかし、最強の防御力を誇る極限盾亀(リミットシードル)

 フォリス程度の加速から得られた攻撃力では破壊することはできない。

 結果、リミットシードルの盾に受け止められて動きを止めることになった。


『ぐぅ……』


 頭から突っ込んで失いかけていた意識がはっきりしていく。

 地面を蹴って離れる。


「安心しろ。こいつは防御力を追求するあまり足の速さに関しては最低と言っていいレベルだ」


 1歩踏み出すだけでも十数秒の時間を要する。

 ただし、腕の動きだけは速いため守られていない場所を狙うのも不可能。


『それがなんだと言うのだ!』


 フォリスが突っ込む。

 一直線の突撃はあらゆる物を穿つ。


 ――ガン!

 鈍い音が響いて地面を滑る音が聞こえる。音がした先を見ればフォリスが地面に頭から突っ込んで滑っていた。


 リミットシードルがポリポリと頭を掻いており、申し訳なさそうな表情をしていた。

 盾で守られていない頭部を狙って突撃したフォリス。その速さにリミットシードルでは対応できずに盾を微かに上げるのが精一杯だった。


 頭部を狙った正確な突撃。

 そのまま突撃すればドラゴンの巨体から体のどこかが当たって盾に阻まれるが、フォリスは爪を突き出していた。

 真っ先に爪で抉り飛ばされる。

 が、そのような結果にはならなかった。


「たしかに盾ほどの硬度はないけど、リミットシードルの体そのものが凄まじい硬さを持っている。ただ速いだけのお前には勝てない相手だ」

『だったら……!』


 起き上がったフォリスがアイラとイリスへ顔を向ける。

 無防備な二人を攻撃するつもりだ。その姿には最強種の威厳など感じられない。


 フォリスが吶喊する。


『イリス離脱しろ』

『了解』


 念話で指示を出すとイリスとアイラの姿が消える。

 フォリスのように超スピードで移動しているせいで見えなくなった訳ではない。この場から本当にいなくなった。


 二人には迷宮へ帰ってもらった。

 向こうで治療した方が落ち着ける。


『まあ、いい。まだ狙える相手はいる』


 今度はシルビアへと狙いを定める。


「後はよろしくお願いします」


 パッとシルビアの姿も消える。

 これで、この場には俺とリミットシードル、フォリスの三人だけになった。


『なっ……!?』

「余所見をしている余裕があるのか?」


 ようやく隙を晒してくれた。

 ハイ塵ハンマーを手にフォリスの背に飛び乗ると叩き付ける。


 地を揺らすほどの衝撃が叩き付けられて地面へと落ちる。

 その隙に道具箱から巨大な斧を取り出して重さに任せて落とす。ハイ塵ハンマーによって凹んだ部分に深い傷が出来上がる。


「出し惜しみはナシだ」


 傷口へ両手を向けて魔法を放つ。


「【爆発(エクスプロージョン)】」


 傷口を焼く爆発が起こる。

 背中に伝わる痛みにフォリスがのた打ち回る。


『……【閃身】!』


 シュンと一瞬で移動する。

 フォリスの背に乗っていた俺は突如として消失した足場のせいで地面へと落とされる。

 気配を辿ると100メートル先でフォリスが狙いを定めている。


 光が煌めく。

 最高速度による突撃。

 100メートルなど一瞬で移動することができる。


 けれども、一瞬ある。


「【召喚(サモン)】」


 喚べられるだけの時間はギリギリある。

 俺の正面にリミットシードルが姿を現す。すると、俺へと狙いを定めて突撃したフォリスは、俺ではなくリミットシードルと衝突することになる。


『なっ!?』


 盾に防がれたフォリスが地面に倒れる。

 状態を確認するが、どうやら気絶しているようだ。


 この瞬間を待っていた。


「氷の彫像にでもなっていな」


 フォリスの四肢に道具箱から取り出した四本の剣を突き刺す。

 剣先から冷気が迸るよう魔法を仕込んであり、四肢の先からフォリスの体を凍らせていく。


「できることなら傷は少ない方がいい」


 凍死させてしまうのが状態を保存する意味でもちょうどいい。


『この、程度……!』


 気絶していたフォリスが力を振り絞って起きる。


 そうして、すぐさまスキルを使用すると全身が光に包まれる。

 先ほども見た【人化】の光だ。

 人間サイズにまで小さくなったことで氷の彫像になってしまうことから逃れる。


「ふぅ。これで楽に動ける」


 フォリスが変化した姿は金髪を刈り込んだ強面の大男。2メートルを優に超える男で人間としては破格のサイズを持つ。これでもドラゴンの体だった頃に比べれば軽くなった。速さはそのままなので小回りが利くようになる。


「いいね。【人化】してくれて助かったよ」

「助かった?」

「ああ。ドラゴンの状態のままだと、どうしても鱗なんかを傷付けないと仕留めることができないから困っていたんだ」


 ドラゴンは全ての部位が高値で取引される。

 鱗なんかは、たった1枚の少量であっても細かく砕いて鎧に混ぜるだけで頑丈になる。そのためドラゴン丸々一匹分など途轍もない金額で取引される。


 出来ることなら完全な状態で手に入れたい。

 その願いを叶える上で【人化】は最適だった。


「効果が継続するスキルは、特別なスキルを除いて使用者が死ぬことによって解除される。【人化】もドラゴンが死ねば解除される。そうなれば鱗が傷付いていないドラゴンが手に入る」


 人間に変化した体をどれだけ傷付けたところでドラゴンの体が傷付くようなことはない。

 おかげでクォアルの体は綺麗な状態で手に入れることができた。


「売れば一体いくらになるんだろうな」

「きさま……!」


 その言葉にフォリスがキレかかる。

 妹の待遇を怒った……というわけではない。ドラゴンを完全に素材としか見ていない。誇り高いドラゴンとしては、自分たちが道具のようにしか扱われていない事に苛立ちを隠せなかった。


「【閃身】」


 光のような速さで接近すると拳を振るう。

 人間になったドラゴンの武器は己の体。下手な武器よりも頑丈であるため拳を叩き付ける方がどんな武器を使うよりも力を発揮してくれる。


 速度が相乗された拳が吸い込まれるように俺の腹へ向かう。

 このまま貫通して穴を開けるつもりでいる。

 だが、そうはいかない。


「もう慣れた」


 手を翳して拳を受け止める。

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