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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第16話 金の竜

 銀のドラゴンを討伐してから1時間。

 消耗した体力や魔力を回復させてから先へ進んだことで少しばかり時間を使ってしまった。


 次の目的地は、すぐに見えてきた。

 離れた場所からでも穴が開いているのが見える。

 クレーターだ。


 離れた場所から中に異様な気配を放つ存在がいるのを感じる。


「まずは、何がいるのか確認するぞ」


 改めて眷属に言葉を掛けると3人とも頷いた。

 ゆっくりとクレーターへ近付く。先ほどのように穴の中からレーザーが放たれるようなこともなく、クレーター内が見える場所まで近付けた。


 クレーターの中にいたのは、銀のドラゴンとは対を成すような金色の鱗を持つドラゴン。

 金のドラゴンが銀のドラゴンと同じ赤い目を上へ向ける。


『クォアルはやられたか』


 気怠そうな男性の声が響く。

 クォアル――銀のドラゴンの事だ。


「それだけか?」


 誰の事を指すのか分からないが、奥にいるドラゴンの事を「お兄様」と呼んでいた。それなりに親しい相手であるのは間違いない。

 けれども、目の前にいる金のドラゴンからは親しみを感じられない。


『我らは、所詮は同じ親から生まれただけの仲。人間程度に負けるような者は、我の妹ではない』

「「「……っ!」」」


 金のドラゴンの言葉にシルビアたち3人が殺気を迸らせ、同時に武器へ手を掛ける。

 3人とも家族を大切にしている。ドラゴンがどのような生態をしているのか知らないが、とてもではないが聞き逃せる言葉ではなかった。


 その様子を見た金のドラゴンがニヤリと口の端を上げる。


『だが、不甲斐ない愚妹の仇ぐらいは取らせてもらおう』


 金のドラゴンがフワッと浮かび上がる。

 ドラゴンの巨体を感じさせないような自然な浮かび方。


『我が名はフォリス。愚妹のようにはいかないと覚悟しろ』


 金のドラゴン――フォリスの姿が消える。

 咄嗟にシルビアが傍にいたアイラとイリスを突き飛ばす。そして、俺に抱き着くとスキルを使用する。

 衝撃波がアイラとイリスを吹き飛ばす。シルビアの手によって突き飛ばされた二人だったが、完全に逃れるには至らなかった。


 俺とシルビアには何もない。

 それも当然で、衝撃も含めて全てが通り抜けていた。


『ほう……』


 後ろからフォリスの声が聞こえる。

 振り向けば銀のドラゴン――クォアルがいたクレーターの上空辺りで浮いている姿が見える。


 速い。

 あまりの速さに動きを捉えることができていても行動に移すことができなかった。

 それはアイラとイリスも同じで、唯一動くことができたのはシルビア。彼女は、今からでは突き飛ばしても間に合わないかもしれないと瞬時に判断して二人を突き飛ばし、俺だけは確実性を取って【壁抜け】で擦り抜けさせた。4人で擦り抜けた時に俺が擦り抜けられなかった時を恐れた。


「速さを追求したドラゴンか」

『その通り。我の速度はドラゴンの中で最速。誰にも捉えることなどできぬ』


 フォリスの姿が再び消える。

 たしかに速い。しかし、速過ぎるが故にコースを読み易い。

 真っ直ぐに突っ込んでくる。相手に最も速く辿り着く事を目的にしているため最短距離を移動しようとしている。


 正面に土壁を10枚造り出す。

 フォリスが俺に辿り着くまでの一瞬では、ただの土壁を造り出すだけで精一杯。防御することを考えるのなら【硬化】の魔法でも掛けて耐久力を上げたいところだが、それだけの時間的余裕がない。

 それでも、10枚もの壁を生み出せば少しは速度が落ちる。


 ……10枚の壁が同時に砕かれる。

 いや、僅かな時間差はあったのだろうが、同時としか思えないほど短い時間で全ての壁が砕かれた。

 全く時間を稼げていない。


『フン、外したか』


 頭上を衝撃波が通り過ぎていく。

 土壁が通用しなかった時に備えて穴を掘って落ちるとやり過ごさせてもらった。


「なんだ、あの速度……」


 フォリスが行っているのは、ただの体当たり。

 しかし、あまりの速さに速度がそのまま破壊力を高めている。

 直撃を受ければ無事では済まない。


「伏せていて」


 遠距離からイリスが氷柱を何十本と放つ。

 だが、全ての氷柱が地面に落ちて砕ける。


 氷柱を回避しながらイリスの周囲を旋回するフォリス。


 と、フォリスの姿が消える。

 最後にフォリスの姿が見えた方向に手を突き出して氷壁を造り出す。

 しかし、あっさりと砕かれてしまう。


 けれども、その方向から真っ直ぐに突っ込んで来ているのは分かった。


「――斬る」


 意識を研ぎ澄ましたアイラが剣を振り下ろす。


「手応え、あり……!」

『それは残像だ』


 剣を振り下ろした姿勢のアイラに影が差す。

 アイラの頭上に斬られていないフォリスの姿があった。


 彼女が斬ったのは、あまりに速過ぎる速度が生み出したフォリスの残像。何でも斬れるようになるアイラの【明鏡止水】。速度が生み出した残像を斬ったことによりフォリスの動きは強制的に止められた。

 その事がフォリスの怒りに火をつける。


 飛んでいるフォリスが尾でアイラの腹を叩き付ける。


「っは!!」


 胃から吐き出された物が血と共に口から吐き出され、肋骨が砕かれる。

 そのまま大きく吹き飛ばされたアイラが何度も撥ねて転がることでようやく止まる。


「アイラ!」


 近くにいたため衝撃に耐えたイリスが駆け寄る。

 彼女の視界を通してアイラの様子を確認させてもらうが、砕けた肋骨が肺にでも突き刺さっているのか咳き込むと血を吐き出していた。


 倒れるアイラの胸に手を当ててイリスが回復魔法を使う。

 砕かれた骨を修復しなければならない。


 フォリスが体を倒れたアイラと介抱するイリスへ向ける。

 確実にトドメを差すつもりだ。


「させない」


 シルビアが叫びながらフォリスの眼前に姿を現す。

 直前まで全く意識していなかった相手が突然現れたことでフォリスの意識が完全にシルビアへ向けられる。


 フォリスの目へ向けナイフが投げられる。

 眼球に刺されば無事では済まない事をフォリスは知っている。

 咄嗟に目を閉じて防御する。


 その間にシルビアは気配を放ちながらアイラが倒れている場所とは別の方向へと走り出す。

 ドラゴン特有の感覚でシルビアの走る方向へと向きを変えるフォリス。

 跳んだり、屈んだり、転がったりすることで正確な位置を捉えられないようにしている。


『わたしが時間を稼ぎます』

『頼む。10秒でいい』


 四の五の言わずに最初から用意しておけばよかった。


『イリス、何を使ってもいいからアイラを回復させろ』

『了解』


 アイラがいなくなればシエラが悲しむ。

 そんな姿は見たくない。

 手早く指示を済ませると地面に魔法陣を描く。それほどの大きさは必要ない。少し大きめの人がいられるぐらいの大きさがあればいい。


 シルビアを追っていたフォリスがこちらを見る。

 そして、瞬時に突撃へと移行する。

 魔法陣より感じられる魔力から脅威だと判断した。

 それでも遅い。


「【召喚(サモン)】――極限盾亀(リミットシードル)


 魔法陣に現れたのは2本の足で立つ体長2メートルの亀。

 その両手には体を覆えるほど巨大な盾がそれぞれの腕に取り付けられている。


 こちらの状況は常に教えてある。なので召喚された直後に防御が必要な事は察しており、盾を構える。


『がっ……』


 フォリスの意識が飛びかける。

 盾に頭から突っ込んだものの突き破ることができないどころか受け止められてしまったことで逆に衝撃が自分へ襲い掛かってくることになった。


「悪いな。こっちは戦力なんて迷宮からいくらでも喚び出せるんだよ」

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