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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第14話 銀の竜―中―

 銀のドラゴンはレーザーで焼くことに集中している。

 そのため下にいる俺たち以外への意識が散漫になっている。まさか、レーザーの中から無事に抜け出せる者がいるとは思っていない。


「本当に……大丈夫だった」

「だから、大丈夫だって言ったでしょ」


 レーザーの照射から抜け出したのはアイラとシルビアだった。

 シルビアの持つスキル【壁抜け】。どれだけ強力な攻撃であろうとスキルを発動させている間のシルビアを傷付けることはできない。そして、スキルの熟練度が上がったことで触れている相手にも効果を及ばせることができる。

 シルビアはスキルを使用しながら肩が触れ合う距離までアイラに近付いて光の中を潜り抜けた。

 二人とも既に数年もの間、苦楽を共にしてきたため歩調を合わせるのは簡単だ。


 そして、銀のドラゴンに意識されないよう近付くのはもっと簡単。

 自分たちの方へ少しでも意識を向けてもらう為に声を掛ける。


『くっ、いつの間に……』


 銀のドラゴンが口からレーザーに似たブレスを放つ。

 全身から放たれているレーザーは、ブレスを細かくし、細くすることで魔力の消費を抑えられたもの。

 ブレスとして吐き出される攻撃はレーザーよりも強い。


 ドラゴンは人間が空中を飛べるような存在ではない事を知っている。空中にいる相手を攻撃すれば回避できない。

 しかし、シルビアは何もない場所を蹴るとブレスを避ける。


『へ?』


 体のスレスレを通り過ぎても心を乱さない。

 平常心。斥候は、どのような事があっても落ち着いていなければならない。


「後はよろしく」

「ああ、もう」


 ドラゴンの近くまで行くと抱えていたアイラを投げる。


『ぎゃあ!』


 そのまま剣で銀のドラゴンの首を斬る。

 切断するには至らないが、【明鏡止水】を使えばドラゴンの首だって斬ることができる。


 鱗が剥がされ、肉を斬られたことでよろめく。


『この程度……』

「なら追加だ」


 飛んでいるドラゴンに向かって跳び上がると拳を叩き込む。ついでに魔力を叩き込んで衝撃を与える。


『がぁ……!』


 上からの斬撃。

 下からの打撃。

 二つの攻撃によって銀のドラゴンの鱗が砕ける。


 美しい鱗の破片が周囲に散らばる。


「綺麗だな」

『そう。私の鱗は美しく、そして華々しく散る』


 指先ほどの小さな破片。

 それが強く光を放った瞬間、大きな爆発を生み出す。


 2メートル先で起こった人を飲み込むほど大きな爆発。掌から魔法で風を巻き起こすと爆発を退ける。


 が、直後に右側で光が溢れるのが見える。

 今度はさっきよりも近い。爆発を押し返すのではなく、爆発を周囲に流しながら後ろ――地面へと跳ぶ。


「ふぅ」


 着地すると息を吐く。

 上空では爆発が起こり続けている。

 銀のドラゴンの間近にいたアイラは爆発に巻き込まれている。


「まあ、大丈夫だろう」


 主として眷属の無事は分かる。

 彼女ならどうにか切り抜けられるだろう。


 問題は、地面に下りても解決されていない。


『その程度離れたぐらいで助かったと思わないことね』


 地面には銀のドラゴンの鱗が巻き散らかされている。

 爆発が起こる。


『ふふっ、それにしても兄さまは凄い事を考えるわね。この場所に満ちる瘴気を奪い取ることで私の力を強くする。それに、こいつらを喰えば私たちはさらに強くなれるわ』

「それがお前たちの狙いか」

『え……?』


 翼を斬って銀のドラゴンの背に着地する。


「ハイ廛ハンマー」


 道具箱から取り出したのは、真っ黒な2メートルのハンマー。

 魔力を注げば注ぐほど重量を増していくハンマー。振り下ろした瞬間に魔力を一気に注ぐ。


「潰れろ」

『ぎゃあぁぁぁ!』


 ミシミシ、と体から鳴ってはいけない音が銀のドラゴンの背から聞こえる。

 同時に大量の鱗が剥がされる。


『……馬鹿ね! さっきの爆発から何も学んでいないの?』

「学んださ」


 銀のドラゴンは、自身の鱗がレーザーの発射口であり、爆弾にもなり得る強力な武器だった。

 攻撃する度に細かくなった鱗の破片が撒かれる。

 小さな破片でも強力な爆発を起こすことができる。

 それは、即ち強力な爆弾が撒かれるのと同じだった。


 強力な打撃を与えたことで大量の鱗が撒かれた。


『死になさい!』

「いいや、爆発は起こらない」


 正しくは、俺の傍で爆発は起こらない。

 爆発を起こす鱗は銀のドラゴンが選んでいる。そうでなければ全身にある鱗全てが爆発することになる。

 感知する能力は十分に備わっているらしく、俺の傍にある鱗を見えていなくても選択して爆発させる。

 しかし、選んだ鱗が爆発したのは選択した場所の遥か下だった。


『どういうこと!?』


 鱗が移動している。

 すぐに別の鱗を選んで爆発させようとするが、既に周囲から全ての鱗がなくなっていた。


『なに……あの象は!?』


 鱗は地上にいる象へと吸い込まれていた。


「【召喚(サモン)吸引象(アトラクトエレファント)


 空にいる銀のドラゴンの背へ乗る前に地上で魔物を喚び出していた。

 吸引象(アトラクトエレファント)は体重を活かした攻撃以外の戦闘力は低いものの特殊な能力として周囲にある物を吸引して体内に納めることができる。納められた物は、後に自分の意思で吐き出すことも可能なため掃除などで便利に使われる。

 銀のドラゴンの鱗も例外なく全て象の体内へと納められる。


『私の鱗が!』


 納められた鱗を爆発させようとする。

 けれども、爆発させる為には意思のようなものを鱗に送る必要があり、疑似的な亜空間になっている吸引象(アトラクトエレファント)の体内までは届かない。


 亜空間までは届かない。

 それが知りたかった。


「イリス、回収しろ」

「了解」


 俺の意図を汲み取ったイリスが道具箱を出して散布されていた鱗を回収する。

 武器になる鱗を使えなくする、という目的もあるが、最大の目的はキラキラと輝く鱗の回収にある。銀色に輝いているものの金属の銀とは全く異なる材質だ。コレは宝石以上に価値がある。

 売れば鱗の一欠けらでも莫大な資産になる。


 爆発するかもしれない鱗を道具箱に入れるのは危険を伴っていた。しかし、道具箱の中に入れてしまえば爆発しない、と言うのなら回収に問題はない。

 上から風を起こして地上にいるイリスの傍にある道具箱へ鱗を入れていく。


「さあ、もっと剥がしてもらおうか」

『ちょっと待ちなさいよ……!』


 銀のドラゴンが体を左右に振り、回転させて背にいる俺を落とそうとする。

 それでも俺は落ちない。足に【加重方向(ウェイトディレクション)】を掛けて常に銀のドラゴンの背が下になるよう調整している。


 ガ―――――ン!


 背を叩くと体が凹んで鱗が大量に剥がれる。


『がぁ……』


 白目を向く銀のドラゴン。


 そこへ追い打ちを掛けるように爆発を抜け出したアイラが剣で首を叩く。

 さらにシルビアが上から蹴り落として力を与え、【壁抜け】で鱗を擦り抜けると内側から叩いて鱗を剥がす。


 キラキラ輝く鱗がイリスとアトラクトエレファントに回収される。


「もう1発」


 ハイ塵ハンマーを振り上げる。


『……止むを得ません』


 魔力を込めて振り下ろしたハンマーが空振る。

 さらに足場にしていた銀のドラゴンの背が消失したことでハンマーの重さに引かれるように下へと落ちていく。


「ご主人様……って、重っ!?」


 シルビアがどうにか支えようと手を掴んでくれるけど、一緒に落ちていく。


 ド―――――ン!


「……大丈夫?」


 最初から重さに耐えられないことが分かっていたアイラがゆっくりと近付いて来る。


「問題ない」


 ハイ塵ハンマーを道具箱に収納する。

 助けてくれなかったことに対してアイラへ文句を言うつもりはない。実際、力を貸してくれたところでアイラも一緒に落ちていただけだ。


 それよりも空振りしてしまった理由の方が問題だ。


 上空にいる銀のドラゴンが光に包まれている。

 一瞬にしてドラゴンの巨体から人間サイズまで小さくなったせいで何もない場所を攻撃してしまった。


 光に包まれた人型が地上まで下りて来る。

 徐々に光が消えて露わになったのは、銀髪に赤い瞳の女性。

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