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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第13話 銀の竜―前―

「見られていますね」


 クレーターまでの最短距離を真っ直ぐに進む。

 その途中、視線を感じるものの相手は分かっているので気にしていない。


「しかし、ドラゴンがこんな風に見ているだけなんて信じられないですね」


 犯人はドラゴンたち。

 おそらくは「俺を襲え」とでも命令を受けていたのだろう。しかし、既に3体のドラゴンが帰らない状態であり、青と藍色のドラゴンがあっさりと倒されてしまった。その光景を他のドラゴンたちも遠くから見ていた。


 ドラゴンは強い。

 強いが故に相手の実力差を理解できる……と言うよりも、自分も凍らされてしまうんじゃないか、とすっかり怯えられている。


 そういう訳で遠巻きに監視されているだけに留められている。

 まあ、こちらに害がなければ問題ない。


「着きましたよ」


 300メートルほど先に崖のようになっている場所がある。

 ここまでがクレーター内にいるドラゴンのキルゾーン。これ以上の接近をすれば瞬く間に襲われてしまう。


「俺がついて行けるのはここまでです」

「それはいいけど、ここからどうするんだ?」

「村まで帰って無事を祈っています」


 そう簡単には帰れない。

 なにせ周囲には俺たちを見張っているドラゴンが複数いる。

 リッキーだけが弱い、と気付けばドラゴンたちが離れた瞬間に襲ってくる危険性がある。俺たちを警戒するあまりリッキーを攻撃した瞬間に敵として認識される、と思ってくれていれば問題ない。しかし、そうでなかった場合に別行動は危険だ。これぐらいの事は事前に予想できていたのに忘れていた。


「心配ありません。俺、逃げ足には自信あるんで」

「いや、逃げ足っていう問題じゃ……」

「頑張ってください」


 気付けばいなくなっていた。

 ……だから、リッキーが案内役に選ばれた訳か。


「行くぞ」


 キルゾーンへ足を踏み入れる。


 カッ!

 クレーター内から光が溢れる。


「なっ……!」


 クレーター内から飛んでくる光の線。

 飛び出したところで方向を変えると真っ直ぐにこちらへ伸びてくる。


「散開!」


 全員がバラバラに走る。

 急に曲がった光は、俺たちがいた場所を通り過ぎると再びグニャリと曲がって移動した俺へ向かってくる。


「ご主人様!」

「マルス!」

「構うな!」


 俺を助けるため駆け寄ろうとするシルビアとイリス。

 けれども、狙いを俺に定めている状況は少しばかり望ましいため叫んで止める。


 神剣を鞘から抜いて光の線――レーザーを斬る。神剣ならばレーザーであろうともタイミングさえ合っていれば斬ることができる。

 斬られたレーザーが二つに分かれて俺の後ろへと消えて行く。


「いた!」


 唯一、俺を心配していなかったアイラがクレーターの縁に辿り着く。

 心配していなかった、と言うよりはレーザー程度で俺がどうにかなる訳がない、という信頼のもと自分がどうするべきなのか行動を起こした。


 アイラの役割は斬り込んで敵を斬る。

 クレーターの中心には銀色の鱗を持つドラゴンがいた。

 緑のドラゴンからの情報にあった北から来たドラゴンの1体だ。


「悪いけど、斬らせてもらうわよ」


 クレーターへと飛び込むアイラ。

 その目は、中心にいる銀色のドラゴンの首へと向けられていた。


『五月蠅い人間共め』


 銀色のドラゴンから綺麗な女性の声が響く。

 だが、声には煩わしい思いが込められており、聞く者に嫌悪感を抱かせていた。


『消えなさい』


 銀色のドラゴンの体から白いレーザーが何十本と放たれる。

 全方位へと放たれたレーザーはアイラのいる場所へも1本が迫っていた。


「くぅ……!」


 剣を振ってレーザーを斬ろうとする。

 しかし、レーザーを斬ることは叶わず、レーザーに押し出されるようにして穴から飛び出してしまった。


「この……!」


 クレーター内へ向かって斬撃を飛ばす。

 その斬撃も新たに発射されたレーザーによって吹き飛ばされる。


「アイラ、一旦戻れ!」


 指示を出すとアイラが近くへ寄って来る。

 あの場にいるのは危険だ。


「来る」


 翼を広げて飛び上がったドラゴンがクレーターから出てくる。

 現れたのは銀色のドラゴン。全身の鱗が太陽の光を受けてキラキラと輝いており、広げられた翼は水晶のように透き通っている。それでいて双眸は、血を溜め込んだかのような暗い赤をしている。


 真っ赤な目でこちらを見る。

 鋭い目付きなせいで睨まれているように見える。


『人間――ここより先へは行かせません』


 水晶のような翼がカッと輝く。

 地面へ向かってレーザーが穿たれる。


「全員、集まれ」


 3人が抱き着くような距離に近付いて来る。

 頭上に【迷宮結界】を展開させる。周囲の地面がゴッソリ消えてしまうような状況にあって【迷宮結界】の真下のみ無事でいられる。


「無数にレーザーを撃ってくるドラゴン、どうする?」

「しかも、相当に頭がいいぞ」


 イリスの質問には答えず相手のドラゴンを分析する。

 銀のドラゴンは、これまでに遭遇したドラゴンにはできなかった人の言葉を発することができていた。

 それだけ銀のドラゴンの知性が高い、という証拠である。


 絶え間なく落ち続けるレーザー。


「……いや、さすがにおかしいだろ」


 レーザーを放つには魔力が消費されている。

 ドラゴンなので他の魔物よりは多くの魔力を保有している。それでも撃ち続けているのに全く減った様子がない、というのはおかしい。

 考えられるのは『どこか』から供給されている、というもの。


「どこだ……?」


 意識をあちこちへと向ける。

 しかし、レーザーが周囲に落ちている状況では魔力に満ち溢れていて感覚が定まらない。


 イリスも同じようで視線を向けてみるものの首を横に振っていた。

 アイラには最初から尋ねない。簡単な魔法ぐらいしか使えないアイラでは魔力の供給源を探る、などという事ができるはずがないと信頼していた。


「ありました」


 こういう時に頼れるのはシルビア。

 彼女の視線はクレーターへと向けられていた。


「クレーター?」

「何かあるの?」

「そうではありません。クレーター内には魔力が満ち溢れているんです」


 ドラゴンがクレーター内で何をしていたのか分かった。

 クレーターの中心部分は、地脈を流れる魔力の噴出点。地下深くに穴が掘られ、ドラゴンという驚異的な魔物がいることによって吸い上げられるようにして魔力が噴き出していた。

 噴き出した魔力はドラゴンへと吸収される。


 けれども、いくらドラゴンが最強種の魔物とはいえ、受け止め切れる魔力の量には限界がある。

 溢れた魔力はクレーター内に溜まってドラゴンへと供給されている。


「今の状況を考えるとドラゴンの魔力が尽きるのを待つのは愚策、かと」

「じゃあ、この状況を打開する必要があるな」


 いつまでも撃ち続けられるレーザー。

 これをどうにかしなければならない。


『人間、貴方たちが無事なことには気付いています。無駄な抵抗は止めて私の光に焼かれなさい』

「そういう訳にはいかないわ」

『なっ!?』


 銀のドラゴンが目線だけを上に上げる。

 そこ――人間には到達できないはずの上空にアイラを抱えたシルビアがいた。

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