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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第12話 今呼べる最強の助っ人

 リッキーの案内で山脈を進む。


「いやぁ~、皆さんが来てくれて本当に助かりましたよ」


 気さくな様子で話し掛けてきた。


「ウチにもAランク冒険者は何人かいますよ。けど、ドラゴンを相手にするならAランク冒険者でも足りないんですよ」


 今、必要とされていたのはSランク冒険者だった。

 それも数人のSランク冒険者が組んだチーム。


 しかし、今の時期にSランク冒険者を呼ぶことはできなかった。


「ウチからSランク冒険者になった人がいるんですよ。その人に今回の状況を伝えたんですけど、『今は行くことができない』っていう手紙の返事だけが来ました」

「国が許可しなかったから?」


 Sランク冒険者は国に仕える冒険者。

 国家を揺るがすような危険な魔物の討伐や死地での採取依頼を国からの要請を受けて請け負う。

 要請を受けた時には必ず引き受けなければならず、常に引き受けられるようにしておかなければならない。そのため、国から他の依頼を受けている状況でもなければ王都で常に待機しておかなければならない。

 故郷から要請があったから、と言って簡単に離れることはできない。


「でも、この状況は国にとっても一大事なんじゃない?」


 アイラが言うようにノーズウェル山脈にドラゴンが出現した。

 一刻も早い解決が望まれる状況であり、放置してしまった場合にはドラゴンが南へ行ってしまう危険性がある。これ以上の被害拡大は国にとって問題だ。


 しかし、今は国が動ける状況になかった。


「クーデターの影響」

「その通りみたいです」


 イリスが言うようにクーデターが原因だった。

 成功したクーデターだったが、国家を完全に掌握していると言えるような状況ではない。そのため安易に戦力を国の端へ派遣しているような余裕がない。


 それに元ギルドマスターだったルイーズさん経由で得た情報だが、何やら軍部に不穏な動きがあるらしく、戦力として過大に期待されているSランク冒険者を王都に置いておきたいらしい。


「だからSランク冒険者は動けない」


 きっとウルカを拠点にしていたSランク冒険者は自分の故郷を救いに行きたかったはずだ。

 けれども、Sランク冒険者という立場が邪魔して動けない。


 Sランク冒険者は、冒険者のランクの中でも最高ランク。

 国に召し抱えられることによって生活に不自由しないだけの給金が与えられ、多くの冒険者から尊敬の眼差しで見られることになる。

 ただし、同時に自由が失われてしまった。国からの命令があれば、どれだけ危険な依頼であろうと向かわなければならないし、嫌な依頼も引き受けなければならない。もちろん国だって貴重な戦力を失うような真似をしたくないため、完遂できると思うからこそ依頼している。


 俺たちは迷宮の管理もあって国に縛られる訳にはいかないためSランクへの昇格は断るようにしている。

 現状、ノーズウェル山脈の異変を解決できるとしたら、そういった事情を抱えてSランクになっていない冒険者のみだ。

 いない訳ではないが、抱えている事情もあって引き受けてもらえる可能性は低い。


「本当にあなたたちみたいな人がいてくれて助かりましたよ」


 地竜をあっさりと倒したことからすっかりと信じられていた。


「それよりも道案内よろしく」

「もちろん任せておいて下さい。あ、ドラゴンに見つからないようちゃんとルートを選んでいますからね」

「バカ。そんなことをしてどうする?」

「え……」


 普通、最奥にいる相手との戦いに備えて力は温存しておく。

 リッキーたち斥候の調べによりドラゴン側も自分たちの縄張りに人間が踏み込んで来ないかどうか見張りを立てていることが分かっている。

 ノーズウェル山脈のように木や植物が少なく、隠れられるような場所がないと見つからずに移動するのは難しい。それでも死角になる場所が全くない訳ではないので、普段から探索していて山脈を熟知しているリッキーには不可能ではない。


 だから、見つからないルートを選んでいた。


「そんな事をしていて村やウルカにドラゴンが行ったらどうするつもりなんだ?」

「どうするって……」


 むしろ自分たちがどうするつもりなのか?

 そう言いたげにこちらを見てくる。


「ウルカにある外壁はドラゴンを想定したような物じゃない。村に至っては簡単な柵ぐらいしかない。そんな状態でドラゴンに攻め込まれたら壊滅するしかないのは分かっているはず」


 現状、ウルカならドラゴンの1体ぐらいなら対処できるかもしれない。

 しかし、複数のドラゴンに攻め込まれれば壊滅は避けられない。


「だから、これ以上はドラゴンを山から下ろさせない」


 イリスの言った事は、ウルカにいる間に4人で決めた事だ。


「ちょ、何を言っているんですか……てぇ!」


 ちょうどその時、上空を青色のドラゴンと藍色のドラゴンが飛んでいた。

 どちらも水と氷を扱う好戦的なドラゴンでありながら山を下りていく気であり、進行方向からしてウルカへと向かっている。

 このまま放置すればウルカは滅びる。


「じゃあ、止めるか――【跳躍(ジャンプ)】」


 仲良く並んで飛んでいる2体のドラゴンの前に出る。

 突如として現れた人間の姿に驚いたドラゴンが吼えている。


「大人しく自分たちの巣へ帰れ。そうすれば命だけは助けてやる」


 完全に上からの目線による言葉。

 さらに強く吼えると鋭い牙の生えた口を開けて飛び掛かってくる。


「忠告はしたからな」


 右から飛び掛かって来たドラゴンの攻撃を紙一重で回避するともう1体のドラゴンの攻撃を回避しながら腹に軽く触れる。


「【加重(ウェイト)】」


 重力の一時的な増加によって地面へと落とされる藍色のドラゴン。

 下にはシルビアたちがいる。空を自由に飛べない彼女たちの為にドラゴンを落としてやる必要があった。


「さて……」


 青色のドラゴンが旋回する。

 その口には大量の魔力が溜め込まれており、俺へ狙いを定めると同時に水のブレスが吐き出される。


「【氷結(フリージング)】」


 液体を凍らせる魔法を使用する。

 青色のドラゴンは水属性に適性を持っている。当然、吐き出されるブレスも水を利用したものになる。


 ドラゴンのブレスに【氷結】を使用する為には強い魔力が必要になる。

 しかし、真っ向からブレスを受け止めるよりは魔力の消耗を抑えられる。


 液体を凍らせる冷気は、やがてブレスを吐き出している口まで凍らせてしまう。

 巨大な氷柱を咥え込んでいるような姿になったドラゴンが氷柱の重さに耐え切れず地面に落ちる。どうにか飛び上がろうと足掻いているが、凍らされたブレスはどうにもならない。


「安心しろ。凍らせただけだから晴れていれば夏なんだから数日以内には溶ける。俺が全てを終わらせるまで、その状態で大人しくしていろ」


 さすがに動けなければドラゴンでもどうしようもない。

 人間なら巨大な氷柱を咥えたまま数日を過ごすなど耐えられるようなものではないが、ドラゴンの肉体なら耐えられるはずだ。


 数日待っていれば溶ける。

 その事実を理解したのかパタッと力を失ってしまった。


「凄まじいですね」


 リッキーの待っている場所へ行くと小さな呟きが聞こえた。

 地面へ落ちた藍色のドラゴンは、イリスの魔法によって氷の中に閉じ込められていた。

 ドラゴンの力でも簡単には抜け出せないよう頑丈になっている。

 まあ、ドラゴンなら耐えられるだろう。


「力の消耗は抑えたい。ただし、街へは被害を出したくないから俺たちよりも先へ行こうとするドラゴンは全て倒す。ルートを選ぶなら最短ルートで進んでくれ」

「はぁ。本当にあなたたちみたいな助っ人が来てくれて助かりましたよ」


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