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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第4話 同居許可

「分かりました。お兄様たちは、しばらく留守にするんですね」


 夜。

 妹たちが帰ってきたのでリビングに集まって明日以降の予定を伝える。

 シルビアたちと話し合って4人でノーズウェル山脈へドラゴン討伐に行くのは決定した。


 その間の留守を頼む必要があった。

 メリッサとノエルが留守番をしているのだから大丈夫だとは思うが、実質的に取り計らうのはクリスの仕事になる。


「こちらの事は任せてください」

「いいのか?」


 断ろうと思えば断ることのできる依頼だ。

 冒険者ギルドからの心象が悪くなるだろうが、高ランク冒険者全員に声を掛けただけの依頼。ペナルティらしいものは何もない。


「それで、あの子がエルマーのお嫁さんですか?」

「は、はい!」


 年上の女性から見られてディアが緊張している。

 最近、神経を使う仕事をしているせいか目付きが鋭くなっているように見えるクリスは、女の子にはちょっと怖い。


「部屋割りはどうしましょうか?」

「部屋割り?」

「この屋敷には使っていない部屋がいくつかあります。それを貸し出してもいいんですけど、個室を与えるのはどうかと思ったので」

「あの、私ならどこであろうと気にしませんよ」

「却下です。共同生活をする以上は、同居している人間の事も考えてしっかりとした生活をしてもらいます」

「ひぃ」


 緊張から怯えに変わってしまった。

 今後の事を考えると仲良くしてほしいところだ。


「ああ、ごめんなさい」


 が、俺から何かを言う前にクリスが謝った。


「最近ちょっと疲れる事案が立て込んでいたので神経質になっていました」

「大丈夫ですか?」

「問題ありません。さっきのをちょっと言い直すと最低限の常識さえ守ってくれるのなら自由にしてもらって構いません」


 本当に疲れているらしく声が落ち込んでいる。


「私は、エルマーにはあなたみたいな人が傍にいた方がいいと考えています。あの子は自分の生い立ちや境遇を考えてしまうので、あなたのようにガツガツ攻めてくれる人が必要なんです」

「はぁ……」


 迫り寄る感じに言うクリス。

 その気迫に押されてディアが戸惑っている。


 ディアを受け入れるにあたって問題になったのが面識のないクリスたちだ。生来の面倒見の良さから受け入れてくれたみたいなのでよかった。

 受け入れてもらえなかった時は本当に面倒なことになる。俺が屋敷を留守にすることが多いので内々の事はクリスにほとんど丸投げしているところがある。最近では表向きの資産管理もしているので稼いだ本人である俺よりも詳しいぐらいだ。


「私は歓迎しますよ」

「ありがとうございます」

「わたしもいいよ」


 お礼を言うディアの前にジュースの入ったグラスが置かれる。甘い果実を絞って作ったジュースで疲労回復効果がある。

 アリスターまで来ることを優先させて体を酷使したディアには必要な飲み物だ。


「疲れた時にはちょうどいいよ」

「いただきます」

「でも、本当にいいの?」

「大丈夫。今さら一人増えたところで変わらないし、将来的にはまだ増える予定なんだよね」


 ジュースを置いたのは家事を手伝っていたリアーナちゃんだ。

 リアーナちゃんも領主の館で仕事があるにも関わらず帰って来てからはオリビアさんの手伝いをして屋敷の雑務を引き受けてもらっている。

 彼女の協力なしには生活は立ち行かない。


「兄さんはどうですか?」

「俺も同じ意見かな? 彼女の事は何も知らないからはっきりとした事は言えないけど、少なくともマルスは信用しているんだろ」


 純粋にエルマーを追い掛けてきただけだ。

 ここへ来たところで政治的な駆け引きで有利になれるようなこともない。

 間違いなく個人として来ている。

 なら、ディアに思惑はないと思われる。


「なら、いいんじゃないかな?」

「という訳で彼女の事はお願いします。俺たちは明日から遠出しないといけないので」

「たしか王国の北端だったな」


 ノーズウェル山脈の正確な場所までは、さすがに知らない。

 王国の反対側だ。通常なら何カ月も帰ってこられないことを覚悟しなければならない距離だが、俺たちが既に移動時間を気にしなくてもいいスキルを持っていることを兄たちは知っている。


「そこまで時間を掛けるつもりはありません。数日……長くても1週間以内には帰って来るつもりです。屋敷へ来たばかりのディアを置いていくのは不安が残りますが、よろしくお願いします」

「ドラゴン!?」


 今回の討伐対象を聞いてディアが目を輝かせる。

 ドラゴンと言えば魔物の中では最強の種族と言っていい。戦闘を生業にしている部族の戦士として憧れるところがあったのだろう。


 そして、その想いはディアに限った話ではなかった。


「本当ですか!?」

「俺たちも行きたい!」


 エルマーとジェムが反応した。

 ジェムなら反応するかもしれないと思っていたが、真面目なエルマーまで反応するのは意外だった。やはり、男の子として惹かれるものがあるのだろう。実際、昔の俺だったなら心惹かれていたかもしれない。


「ダメに決まっているだろ」


 3人の要望をキッパリと断る。


「どうしてですか? 『島』へは連れて行ってくれたじゃないですか」


 たしかに『島』へは連れて行った。

 だが、あの時は探索が主目的の依頼であり、最初は相手の脅威度が分かっていなかった。


 しかし、今回は敵がドラゴンだと明確に分かっている。

 そのうえ統率された動きをしていることからドラゴンを統率している者がいるとも考えられる。

 さすがに今回は彼らを守りながら戦うのは難しい。


 ドラゴンが見られる、と聞いて興奮している3人をジリーが冷ややかな目で見ていた。彼女だけは俺たちに負担を強いることになる、と冷静に分かっている。


「せっかく強敵と戦えるのに」


 残念そうにしているディアだが、さすがにドラゴンを相手に戦えるとは思えない。今回ばかりは諦めてもらうしかない。


「そういう事だったら、あなたたちに頼みたい事があります」

「頼みたい事、ですか?」

「はい。村の再興に関わる話です」


 キマイラの出現によって3つの村の近くにいた魔物たちは別の場所へと逃げており、縄張り争いに負けた魔物が人間の生息域へと押し寄せている。

 ここ数日は、騎士団からも人を派遣して魔物の討伐を行っていた。

 今は戦える者なら少しでも戦力がほしいところ。普段なら戦闘力はあってもランクの低いエルマーたちにまで討伐の依頼が出されることはないのだが、今回は領主の意向を受けたクリスからの依頼ということでエルマーたちでも受けられる。


「手が空いているならこっちを手伝ってください」

「分かりました。ディアもアリスター付近にいる魔物から慣れた方がいいと思うのでちょうどいい依頼だと思います」


 魔物の被害は増えているが、今のところは適切に対処できているとのこと。

 村の復興に関してもアリスター家が援助して行われることになった。ただ、復興作業の中で気になることがあった。


「カレンが?」

「はい。村にいた頃、それに避難してきたばかりの頃に比べて人が変わったように働かれています。真面目に働くようになったのはいいことなのですが、何かあったのでしょうか?」


 以前、アリスターのスラムへ迷い込んでしまったことがあった。その時に色々と暴行を加えられたので処置として魔法で記憶を消させてもらった。消した、と言っても該当する記憶をピンポイントで消した訳ではなく、大雑把に期間を指定して記憶を消させてもらった。

 そのことが人格に影響していると思われる。

 しかし、さすがに記憶を消せる、なんていう事を教えられる訳もなく曖昧に答えるしかなかった。


「あいつも、こういった事態になってようやく村長夫人としての自覚が芽生えてきたんだろ」

「そうだといいのですが……」


 クリスは納得していない。

 再興計画を進める者として不確定要素を排除しておきたいので、不審なことがあれば原因まで知りたいのだろう。


 記憶を消してからカレンと会っていない。

 もしかしたら、本当に危機的状況に陥って改心しただけなのかもしれないので、村の事は任せることにする。

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