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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第5章 賞金稼ぎ
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第13話 2人目

 眷属契約――それは、他者を迷宮主(ダンジョンマスター)眷属(サーヴァント)とするスキル。

 1度でも眷属になれば解除は不可能で迷宮主の命令には絶対服従の存在となる。メリットとしては自身のステータスの強化や固有のスキルを得られることだろう。もっとも相互に同意しなければ眷属契約は成功しないので一方的な契約はできないようになっている。デメリットを受け入れたうえでメリットを選んでいる。


 シルビアの時には無謀な復讐に向かうシルビアを勝てるようにする為にステータスを強化させることを目的として眷属契約を使用した。


『怪我を治すだけなら全快させられる回復薬を使えば簡単だよ。でも、治療した彼女を今のステータスのまま放てば、また同じような結果……いや、運が良くなければ死ぬことになるだろうね』


 迷宮核(ダンジョンコア)が言うように治療だけでは解決にならない。


 今回も同じようにアイラのステータスアップが目的である。


 そのはずなのだが……。


「だ、ダメですよ! 怪我で抵抗できない女性の寝込みを襲うなんて友達としても眷属としても許可することはできません!」


 シルビアが必死に俺のことを止めようとしていた。

 いや、襲うつもりとかまったくないんだよ。


「だいいちステータスアップがどうして治療に繋がるんですか!」

「いや、治療が目的じゃなくて……」

「やっぱり寝込みを襲うのが目的なんですね!」


 むんす、と俺をベッドの傍にあるイスから引きはがそうとするが、ステータスを解放状態にある俺にはどう足掻いたところで敵わない。


 こういう状態になりそうな予感があったからシルビアに言いたくはなかったんだが、言わずに事を済ませた場合にもそれはそれで何か小言を言われることになったと思う。


 とにかくこのままではアイラと会話するのもままならないのでシルビアの頭を軽く叩いて黙ってもらうことにする。


「分かりました。眷属契約を受け入れるも受け入れないもアイラさんの自由なのでわたしは傍で待機しておくことにします」


 それでも部屋から出て行くとは言わないあたりアイラのことが心配なのだろう。

 それとも俺が野獣になって襲うことを心配しているのか?

 色々な意味で信用がないな。


「アイラ、俺にはこの状態のお前を助ける方法がある」

「……ほん、とう?」


 返ってきた言葉は迷宮や路地裏で会った時とは比べようもないほど力ないものになっていた。それほどまでに深刻な状態なのか。


「ああ、本当だ」

「……うそ、ね。自分でも、助かるような、傷じゃない、っていうのは分かって、いるわ」


 本当のことなのだが、アイラは全く信じていなかった。


「お前を救う為に使おうと思っているスキルの名前は『眷属契約』。これをお前に使うことによって治療だけじゃなくてステータスの上昇も可能になる。新しいスキルだって手に入る可能性がある」


 メリットだけ説明するとアイラがジト目を向けてくる。

 たしかに「なんだそのスキルは?」と言いたくなる内容だ。


「少なくともステータスアップは可能になっていますよ。わたしもそれで驚異的なステータスを手に入れることができました」


 意外にもシルビアが助けてくれた。

 アイラは1度シルビアと模擬戦で戦っているからシルビアのステータスと戦闘経験がちぐはぐなことに気が付いている。


「具体的なことを言うと、お前が『魔剣の破壊』が可能なぐらいのステータスもしくはスキルを手に入れることができるかもしれないぞ」

「……! それは本当に?」


 アイラが辻斬の手から魔剣を手放させたのはほとんど苦肉の策に近かった。

 魔剣に対して最も効率的な攻略方法は、俺がしようとしたように『魔剣の破壊』である。アイラも考えたのだろうが、冒険者として一流程度のステータスでは魔剣の破壊は不可能だった。アイラもそれが分かっていたから魔剣と所有者を引き離すという行動に出た。


「もちろん、本当だ。ただし、このスキルにはデメリットも存在する」

「そんなの、関係ないわ……魔剣を破壊する、ことができるなら、あたしは、神や悪魔にだって、魂を売り渡して、みせるわ」


 藁にも縋る想いというのは、こういう表情をした相手に使うのが相応しいのだろう。ベッドに倒れたままでいたい体調にもかかわらず、上半身を起こして俺の腕を掴んで顔を近付けてきた。


「だったら、その魂――迷宮主(ダンジョンマスター)に売り渡してもらうことにしようか」

「え……?」


 向こうから顔を近付けてきたので唇が接触するまで近付ける。そのまま舌を入れると驚いていたアイラは唇だけでなく舌まで受け入れてしまった。


 そうしてスキルを受け入れるように魔力を流し込むとアイラも眷属になることを受け入れ、無事に眷属になることができた。


 目を開けたまま呆然としているアイラから唇を離す。俺は2回目なので、シルビアの時みたいに動揺することはない。

 だが、アイラの方は初めてだったらしく目の焦点が定まっておらず、未だに呆然としたままだった。目の前で手を振っても無反応。


「アイラ……アイラッ!」

「ふぇ……? はい!」


 体を揺すって名前を呼び掛けるとようやく反応してくれた。


「い、いきなり何するの!?」


 顔を真っ赤にしながらベッドの上で立ち上がってビシッとこちら指差す。


「あ、あんな……」


 恥ずかしさと怒りから体がわなわなと震えていた。

 思わずシルビアと顔を見合わせて首を傾げてしまう。

 もしかして、自分たちの時も同じような感じだったのか?

 いや、あの時はここまでは狼狽えていないはずだった。


「まあまあ落ち着け」

「これが落ち着いて、いられるわけ……」

「でも、きちんと死にそうな身体が全快しているんだから許してくれよ」

「そういえば、そうですね」


 シルビアがベッドの上で立っているアイラの姿を見上げながら呟く。

 さっきまで死にそうなアイラだったが、そんな様子は一切見られない。むしろステータスが強化された状態で全快しているので先ほどよりも別な意味で危険な状態になっていた。シルビアと違って力が突出しているステータスなので、今の動揺した状態で壁でも殴れば簡単に穴が開く。


「眷属契約だけど、契約時には俺のステータス分だけ相手のステータスを上昇させると同時に強制的にそのステータスに馴染ませる効果があるんだ」

「でも、わたしの時にはそんな効果はありませんでしたよ」

「あったんだよ。お前の場合は回復したわけじゃないから分かりにくいかもしれないけど、冷静な状態だったから問題なく手加減とかができていただろ」


 もしもシルビアが力を持て余した状態で王都を全力で駆けていれば王都の美しい石畳は今頃ボロボロになっている。

 そうならなかったのも契約時に最低限の同調が行われていたからだ。

 だが、それも日常生活を送るうえで困らない程度のもの。戦闘となれば力を発揮してくれるほどのものではなく、シルビアが戦う為には双刃術に頼る必要があったが、今はいつの間にか完全にコントロールできるようになっていた。


「それと同じように体力が凄まじく強化されたアイラは最低限の日常生活が送れる程度として強化された最大値の1割程度までに回復されたっていうわけだ」


 アイラの元々の体力値は660で、大量の血を流してしまったことによって35にまで落ちてしまっていたので死にそうな表情をしていた。しかし、今は1000以上の追加がされた状態での1割――186まで強制的に回復させられたので死に至るような状態ではなくなった。


「気になるんなら自分のステータスを確認してみるといいよ」


 アイラがポケットに入れていた自分のステータスカードを取り出して現在のステータスを確認する。俺は迷宮主権限で眷属のステータスを自由に閲覧することができるので、わざわざステータスカードを見せてもらう必要はない。

 どれどれ?



==========

 名前:アイラ

 年齢:15歳

 職業:迷宮眷属(ダンジョンサーヴァント) 冒険者

 性別:女


 レベル:43

 体力:1862(660)

 筋力:2009(655)

 敏捷:1824(521)

 魔力:1780(218)


 スキル:迷宮適応 明鏡止水

 適性魔法:迷宮魔法 迷宮同調

==========



 よし、きちんとステータスも俺のステータスの1割分上昇しているし、シルビアと同じようにスキルも手に入れている。


「なに、これ……?」


 自分のステータスを確認したアイラがきょとんとしていた。

 ま、こんな人外なステータスにさせられたんじゃ驚くのも仕方ない。


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