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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第28章 浮上孤島
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第22話 足りない神気

 バッ!

 別行動をしている間に何があったのか細かいところまで説明しなくてもシルビアたちは行動を起こす。

 それぞれに与えた場所へと向かう。


「え、何ですか?」

「なに、なに!?」


 シルビアに抱えられたジェムとメリッサに抱えられたジリーが突然の事に訳が分からず呟いた。

 そして、この場にはもう一人状況の分かっていない者がいる。


「ドコへ行く!」


 ニコラスが『鍵』を手にしながら3人を見る。

 しかし、3人が走り出した方向は全員がバラバラ。襲うにしても誰から攻撃すればいいのか迷ってしまう。こういう時は重要な人物から襲えばいいのだが、ニコラスには3人の目的すら想像できていない。


 故に致命的な隙を生み出してしまう。

 バラバラに斬り裂かれたニコラスの死体が地面に転がる。


「まったく……学習しない奴らだ」


 『鍵』を握っている右手を中心に新しい体が生み出される。

 さすがにバラバラにされた状態では生きていられない。


「学習しないのはお前の方だ」

「なに……?」

「お前じゃあ、どうやっても俺には勝てない」

「ハッ、負け惜しみを……ッ!」


 侮られたと思った悔しさから一瞬だけ俺から視線が外れる。

 その隙を狙って接近すると頭を掴んで神気を送り込む。すると神気が剥がされ、自身の瘴気を安定させられなくなって爆発する。


 吹き飛ばされた『鍵』が地面を転がる。

 神気をワイヤーのように伸ばして『鍵』を回収する。


「こうして回収しておけば……」

『甘いゼ』


 声にならない声が響き渡る。

 魔力を通してこちらに想いを伝えてきている。


「っ!?」


 持っていた『鍵』が熱を持っているように熱くなり手放す。

 空中に放り出された『鍵』からニコラスの体が生み出される。


「奪い取ることができれば楽だと思ったんだけどな」

「残念だったな。どうやらオレは『鍵』に選ばれたみたいだ。『鍵』自身がオレを選んでいる。オレから奪うのも不可能だ」

「そうみたいだな。ただし、殺すことができれば、奪い取ることはできる。もっとも、手にしている以上は殺すことができない――やっぱり、殺すことはできないみたいだな」

「ようやく理解したみたいだな」


 こちらが手詰まりとでも思ったのか笑みを浮かべている。


「勘違いしているみたいだな。俺が『鍵』を回収しようと思ったのは、それが手に入らないのは勿体ないからだ」


 神の遺産に干渉することができる魔法道具。

 もしも、【魔力変換】で魔力に換えることができれば、かなりの収入になるはずだ。

 以前、迷宮に訪れた者が『神櫃の鍵』を持っていたらしく、その者から奪い取った物を【魔力変換】したおかげで同じ物を用意するのは可能だ。だが、そのためには膨大な魔力を必要としている。態々、新しく用意する必要を感じない。迷宮の発展の為に既存の物を必要としている。


「勿体、ない……?」

「手に入らないなら、お前と一緒に処分させてもらうだけだ」

「ほざけ!」


 ニコラスが遠距離から瘴気の弾丸を何百発と放って来る。

 斬られても再生することはできる。しかし、その時に味わった苦痛は再生された体にしっかりと残っている。

 既に精神はギリギリのところで踏み止まっていた。


 近寄らせれば斬られる。

 それ故の遠距離攻撃。


「神気を少量ばかり含んだ瘴気の弾丸。当たれば相手を崩壊させることができる」


 生物は瘴気に耐えられるようにはできていない。

 だからこそ掠るだけでも致命傷になりかねない。


「だが、俺には関係がない」


 【ティシュア神の加護】を全力で使用する。

 ノエルから借りたスキル。

 当人であるノエルと違って、十全に使用することができるのは数分が限界。


 ティシュア様に調整してもらった魔力を纏って突っ込む。


 ――協力、感謝します。

 ――構いません。私も獣神に蘇られると厄介ですから協力します。


 さすがに神が自分から手を下すのはマズい。

 しかし、【加護】を通して俺たちに協力するのは許容範囲内らしく、手を貸してくれている。


 神気を纏った拳で弾丸を弾く。

 弾丸を置き去りにして走ると後方で爆発が何度も起こる。


「な、なんでだ……」


 ニコラスが後退る。

 弾丸を弾いているのも瘴気の魔物を相手にした時と同じ。神気を叩き付けられたことによって安定しなくなり、爆発を起こしてしまう。しかも、こちらは神気で身を守っているおかげでダメージを負わない。


 ――行きなさい!


「はい!」


 呆然と立ち尽くすだけのニコラスの前へ飛び出す。


「【魔導衝波】」


 神気をニコラスへ叩き込む。

 神の力を手にしたはずなのに自分の力が通用しないことが信じられないニコラスは何もできずに直撃を受ける。


 そして……


「ぐわぁ!?」


 神気が剥がされたことで身に秘めていた瘴気を安定させられずに爆発を起こす。


 これで3発目。

 いや、これで最後だ。


「こんな、はずじゃあ……」


 『鍵』から先の体が再生される。

 しかし、再生が胸まで及んだところで、


「ぐぺぇ!」


 再びの爆発が起こる。

 またしても再生が行われるが同じように胸まで到達したところで爆発が起こる。


「いったい、な、にが……!」


 何度も起こる爆発に耐えながらニコラスが呟く。

 爆発が起こる度に周囲へは肉片が撒き散らされている。こんな汚い爆発に巻き込まれたくないので離れた場所で監視させてもらう。


「そうか、かみ、の……力、が、たりない!」

「正解だ」


 【魔導衝波】で神気を叩き込んだ時にニコラスの体に蓄えられていた神気を全て吹き飛ばした。


 肉体を再生する為に必要な力は――瘴気。

 そのため無意識の内に再生する時は瘴気だけを利用していた。


 ニコラスも瘴気の魔物と同様だ。神気を持たない肉体で瘴気を得れば、安定させることができずに爆散してしまう。


「だったら……!」


 意識して『鍵』から神気を引き出す。

 しかし、『鍵』に残っていた分も少なくなっている。必死に『鍵』を地面――獣神の封印に突き刺して神気を奪う。


「ハハハッ、コレでワカッタだろ。オレは不死身ダ!」


 肉体を完全に再生させて高らかに笑うニコラス。

 たしかにニコラスの手に『鍵』がある以上は何度でも立ち上がる。既に口調がかなりおかしくなっており、精神的に追い詰めて倒すことも可能なのだろうが、その前に俺が【ティシュア神の加護】を維持できなくなる。神気のない状態で戦いたい相手ではない。


 しかし、もうそんなことは関係ない。

 負担を考えて【ティシュア神の加護】を切る。


「どういう、つもりダ?」


 素人のニコラスにも俺から神気が失われたことが分かったのか不審に思っている。


「もう、俺の……俺たちの勝ちは決まった」

「何ヲ……」

「封印再起動」

「ナ!?」


 その時、『島』の四隅から光が立ち上る。


「『島』のあちこちから虫食いみたいに神気を吸い取りやがったな。おかげで以前の封印を再利用することができなかった」


 だからこそ、以前に施された封印の機能を利用しつつ、全く新しく封印を行う必要があった。


「俺の目的は時間稼ぎ。俺と戦っている時点で、お前の負けは決まっていたんだよ」


 3人の内、誰か一人だけでも阻止することができれば再封印は成功しなかった。

 最優先にするべきは3人。そして、どうでもよかったのは俺だった。だが、一度は殺されてしまったことで俺を優先してしまった。


「この『島』と共に海へ沈め」

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