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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第5章 賞金稼ぎ
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第10話 VS辻斬

 兄を連れて街を疾走する。

 一応、普段から街の見回りに慣れている騎士と臨時に雇われた冒険者がペアを組んで警備に当たっているということになっているので後々のことを考えると俺だけが先行するわけにはいかない。

 しかし、兄も騎士として鍛えているだけあってかなりの速度まで抑えている俺についてきている。


「本当に見つかったのか?」

「いや、犯人の目撃情報とか全然なかったから保証できないんですけどね」


 目撃情報は皆無というわけではなかったが、犯人に関する情報は『黒いローブを着ていた』、『真っ黒な剣で斬られた』。この2点しかなかった。

 しかし、サンドラットが見た光景は、2つの目撃情報のどちらも満たしている。


 使い魔の位置は全員分をしっかりと把握できており、2体のサンドラットが倒された場所まで、あと50メートル。


「見つけた!」


 角を曲がって入り組んだ路地を突き抜けた先に黒いローブを身に纏った男を見つけた。

 全身をローブにすっぽりと覆われているため顔や体付きを見ることはできないが、サンドラットが聞いた声から男だと判断した。

 不審者と判断しても問題ないような格好。


「襲い掛かってもいい?」

「とりあえず殺さない範囲で」


 隣を走っていた兄に確認すると許可が貰えたので辻斬へ先行する。


 辻斬も自分に向かってくる俺の存在を認識したのかローブの中に隠していた剣を取り出す。取り出された剣は抜き身の状態そのままで、刀身は夜の闇に溶け込むように真っ黒だった。


 俺も腰に差していた神剣・星雫を鞘から抜く。


 2人の剣がぶつかり合い、火花を散らす。

 だが、それだけで辻斬が使用している剣が異常であることが分かる。


「随分と業物を使っているじゃないか」


 俺が使っていてもランクSの最強に分類されるような剣だ。そんな剣とまともに打ち合えるだけで相手の剣が頑丈であることが分かる。


「見つけタ」

「あ?」

「強い奴……俺の渇きを癒してくれるような強い力を持った相手を探していタ」

「何を言っている……?」


 辻斬の剣を上から叩き付けて弾き飛ばそうとする。

 だが、接着でもされているかのように弾き飛ばした剣に合わせて辻斬も飛んでいく。


 予想外な動きに少し困惑している間に姿勢を整えた辻斬が上段に構えたまま平行に剣を振る。


「チッ!」


 舌打ちと共に体を横へと跳ぶと、平行に走らせていた剣が横へ跳んだ俺の方へと迫ってくる。


 これじゃあ、シルビアのことをどうこう言えないな。


「はっ!」


 咄嗟に剣を地面に叩き付けると石畳の地面が割れ、砕けた破片がちょうど上へと迫っていた辻斬の腕へと当たる。


 破片は小さく大した威力はない。それでも直撃すれば、痛いことには変わりないため、攻撃を止めるなりするはずだと思っていたが、辻斬はそのまま俺がいた(・・)場所へと構わずに剣を振るう。

 だが、そこには既にいない。


「残念」


 一気に後ろへと回り込むと剣を持っている右腕を斬り落とすべく肩に向かって剣を振り下ろす。

 そこへ体ごと捻って威力を増した辻斬の剣が神剣に叩き付けられて、あまりの衝撃に手放してしまう。俺は辻斬と違って剣術に優れているわけじゃないからな。


 弾き飛ばされた剣が近くにあった建物の3階あたりの壁に突き刺さっている。

 あの様子だと自分で引き抜かない限り落ちてくるようなことはないな。


「つまらんナ」

「そうでもないさ」


 シルビアに倣って収納リングから2本の剣を取り出す。短剣よりも刀身が長い代物だ。


「それに、俺はこっちが本職だ」


 両手に持った剣が光を放ってバチバチと爆ぜる。

 迷宮魔法によって電撃を流させてもらった。そして、俺が持った2本の剣も電撃を流しやすい金属で造られた剣だ。


「魔法使いカ」

「使い魔をあちこちに放っていたんだから、それぐらい分かるだろ」


 姿勢を低くして近付き、剣を振りかぶると辻斬りは剣で受け止めたりせずに跳んで逃げた。

 そうだろうな。見ただけで剣に触れれば感電してしまうのは分かる。感電死するような威力は流していないが、ある程度の時間は麻痺させられる威力がある。


 だが、避けられても構わずに剣を振るう。

 辻斬は大きく跳び、俺の剣に触れることすらないようにしていた。


 だけど、やっぱり奴が着ているローブも業物だな。

 さっきから剣を振るうと同時に電撃を飛ばしているのだが、辻斬が着ているローブに触れた瞬間、弾かれるようにして電撃が消える。


 うおっ、何度も攻撃していれば俺の攻撃を見切ることができたのか、辻斬が剣を振りかぶった瞬間にできた隙を狙って反撃に出て、剣を突き出してきた。


 ま、さっきのお返しでわざと作っておいた隙だ。


「ボルトアンカー」


 手首を返して剣先を辻斬の方へ向けると剣先から電撃の塊が発射される。辻斬は態勢を崩しながらもどうにか回避していた。ただ、回避された電撃の塊が辻斬の後ろにあった建物に大きな穴を空けてしまった……非常事態だったということで、気にしないことにしよう。初めて使った複数の迷宮魔法を混合させて作った技だったから、狙いなんて上手く付けられない。


 ボルトアンカーを撃って電撃の無くなった剣に再び電撃を流すと体勢を崩していた辻斬に向かって投げる。


 辻斬が今まで以上に大きく横に跳んで回避する。

 そりゃ、広くない路地で正面から剣が迫ってくれば横に逃げるしかない。


 けれども、その時には横へ跳んだ辻斬の頭上へと俺は跳んでいる。両手を頭上に掲げているものの何も持っていない姿を見て辻斬が安心したのか、少し力を抜いていた。それじゃ、ダメだ。魔法が使えることは見せたのに。


「『アポーツ』」


 何も持っていなかったはずの両手に、突然建物の壁に突き刺さっていたはずの神剣が現れる。


 アポーツ――離れた場所にある物を手元へと手繰り寄せる魔法。大きさが片手で持てる大きさまでで、辿り寄せられる距離も半径10メートルまでとそれほど広くなかったので投げた短剣やナイフを回収するぐらいにしか使えない魔法だと思っていたが、戦闘中に突き刺さった剣を手繰り寄せるには十分な魔法だ。


 そのまま手元に出現させた剣を辻斬に向かって振り下ろす。

 辻斬も持っていた剣で対抗しようと手を動かすが、体勢を崩し、体に力が上手く入らない状況では受け止めることも叶わず、俺の神剣によって体を上下に両断される。


 ふぅ~、意外と手強い相手だった。

 辻斬の賞金を狙っていたアイラには申し訳ないが、これも街の安全の為だと割り切ることにしよう。


「殺さないでくれって頼んだのに……」


 兄が手で目元を覆っている。


「いや、意外に強くてちょっとてこずってしまった」

「まあ、見ていたから奴が強いのは分かっているけど」


 残念ながら辻斬だという証拠は挙がっていない。

 本来なら、色々と話を聞いた後で領主の手によって裁かなければいけない犯罪者だが、騎士の証言で向こうから襲ってきたっていうことにしよう。


 幸い、こっちには味方になってくれる騎士だけでなく、領主であるアリスター伯爵もうまく立ち回れば味方になってくれるはずである。核心的な部分については言えないが、迷宮についてある程度の情報を開示してもい、い……。


「マルス……!」


 その時の俺は油断していたわけではなかったが、辻斬が完全に死んだものだと思い込んでいて気を抜いてしまっていた。


 どこに体を上下に両断されて生きている人間がいる?


 だが、俺を呼ぶ兄の声を聞いて辻斬が倒れていた方向を見ると2本の足でしっかりと立ち上がり、俺にされたように俺の胴へと剣を振りかぶっていた姿が映った。


 剣と体との間は、もう20センチほどしかない。これは回避できない。

 人を殺せる辻斬の攻撃を受けてしまった。


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