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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
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第48話 迷宮主同士の戦い―前―

 ベントラーが走りながら剣を振るう。

 すると、剣先がこちらまで届く。


「連接剣か!」


 連接剣。剣の刃がいくつかに分かれており、お互いの間がワイヤーのような物で繋がっている。その剣を振るうことによって鞭のように振るうことが可能になっている。


 だが、連接剣の弱点は飛ばせることにある。

 繋げた状態なら剣として使用し、接近戦が可能になるのだが、伸ばした状態からでは接近戦に対応することができない。


 左へ跳んで連接剣を回避する。

 すると、連接剣が地面を叩いて削り飛ばされる。


「……けっこう頑丈な素材でできているはずなんだけどな」


 削られた地面を一瞥するだけで駆ける。

 手元へと引き寄せられる前に接近戦へと持ち込む。


 ――バチバチ!


 隣にあった連接剣。分かれた刃と刃の間にあるワイヤーから激しい火花が散る。

 散っているのは電撃だ。


「クソッ……!」


 咄嗟にさらに奥へと跳ぶ。

 同時に連接剣から巨大な電撃が放たれ、大きく後ろへ吹き飛ばされる。


「――渦巻け」


 円を描くように剣を振るうと炎に剣が包まれる。

 さながら炎を纏った蛇のように襲い掛かってくる剣から逃れる。


「さらに追加だ」


 連接剣に魔力が走り、炎から氷柱が俺へ放たれる。

 氷柱は炎の中から放たれたにもかかわらず溶けることもなく俺を串刺しにしようと鋭い切っ先を向けてくる。


 止む無く地面を隆起させて壁を作り出すと氷柱を受け止める。

 氷柱は壁の半ばぐらいまで埋まった。本来なら貫通させられるだけの威力があったみたいだけど、咄嗟に土魔法で硬化させたおかげで貫通するには至らなかった。

 炎の蛇も壁に阻まれ、回り込むほどの柔軟さがないせいなのか熱が引いていた。


「さすがは迷宮主。厄介な相手だな」


 風、火、水――3つの属性による魔法を自由自在に使っていた。


 通常、魔法を使う為には適性が必要になり、一つの適性を持つのは珍しくない。二つの属性を持てば才能があると言われ、三つも使えるのは本当に一握りの存在だけになる。

 だから、メリッサのように全ての属性に対して適性があるのは異常だと言える。


 そして、迷宮主もまた異常な域にいる。迷宮主や迷宮眷属なら誰もが持っている【迷宮魔法】。眷属の場合は元々持っていた適性や資質が関係しているみたいだが、俺やリオみたいな迷宮主の場合は得手不得手がなく、迷宮にいる魔物の特性を再現した魔法の全てを使用することができる。

 それは、ベントラーも同じみたいだ。

 全ての属性を扱える、ということは多種多様な攻撃が可能になる。


 足元が揺れる。

 上へ跳ぶと銀色の輝きを放つ連接剣の刃が飛び出してきた。


「チッ、土魔法の要領で硬化させているな!」


 硬化させた刃に地中を進ませる。

 しかも、どういう訳なのか連接剣はベントラーの意思を反映されて自由自在に動き回っている。


「その程度の壁は砕いてやる」


 連接剣を振り上げ、同時に俺へ駆け出していたベントラーの手に集まると長剣になって斬り掛かってくる。


「ぐぅ……」


 想像以上に重い。

 いくら上から叩き付けられているとはいえ、叩き付けられただけで足が僅かにでも沈み込んでしまうはずがない。

 おそらく闇魔法によって重くさせられている。


「……引き籠り野郎にしては随分と戦闘能力に長けているな」

「これが【階級支配】の3つ目の効果だ」


 一つ目の効果は、遠隔地から支配した人間の意識を乗っ取ることができる。

 二つ目の効果は、支配が可能な人間に対して認識の変更が可能になる。


「俺自身の下には支配した人間の技能が集まっている」

「技能……?」

「ステータス、スキル、戦闘技術――ありとあらゆる技能が集まるだけで強くなることができる」

「はあ!?」


 もちろん、そのまま集まっているはずがない。

 おそらくステータスは支配した人間の一部、スキルもある程度は劣化した状態で再現されているはずだ。戦闘技術に関してもベントラー自身の扱いが拙いため十全とは言えない。

 それでも強力なスキルであることには変わりない。


「他には何かないのか……?」

「悪いが、俺が持っているスキルは迷宮の管理に必要なものと【階級支配】だけだ。数が少ない代わりに歴代の迷宮主は、この強力過ぎる力を受け継いできた訳だ」


 ベントラーが視線をチラッと斜め上へと向ける。

 そこには天井から降り注ぐ強烈な光のせいで見え難くなっていたが、白く光る球体があった。


「ここは迷宮だ。迷宮で、迷宮主に勝とうなんて無理な話だったんだよ」


 球体からレーザーが放たれる。


「……よく分かった」


 レーザーが俺に当たる直前に向きを変えて地面を穿つ。


「は?」


 ベントラーには何が起こったのか分かっていないようだった。

 剣で攻撃し、足止めをしている間に必殺のレーザーで俺の体を穿つ。


「全ての属性を使える。そんなことは迷宮主にとっては常識だ。光属性以外の魔法を使ってきたんだから光属性に対する防御をしておくのは当然だろ」


 あらかじめ周囲に光魔法による攻撃を曲げられる結界を展開、レーザーが到達した瞬間に地面を穿つようにしていた。

 こいつには強い力を扱うだけの技量が【階級支配】によってある。


 だが、それだけだ。ベントラーには全くと言っていいほど戦闘経験がない。おそらく、今までに力を使ったことはあるのだろうが、それは全て自分よりも格下を相手にした摸擬戦みたいなもの。

 初めての実戦のような自分と同等の相手を前にして浮かれてしまった。結果、自分の力を確かめるように力を振るいたくなってしまった。


「気持ちは分からなくもない」


 俺も初めて迷宮主の力を手にして振るった時には思わず楽しんでしまった。

 だが、目の前にいる相手はそんなことが許されるような相手ではない。それぐらいのことは理解していなければならない。


「がぁ」


 ベントラーが連接剣を手から落とす。

 俺が純粋に上から剣を叩き付けてやっただけなのに衝撃に耐えられず手から落としてしまっていた。


 連接剣を拾おうとする。

 が、僅かに下げた視界に接近する俺の姿を見ると拾うのを諦めて後ろへ跳ぶ。


 電撃を纏った剣を振るう。

 自分自身がやったように当てることができなくても至近距離で攻撃を放たれれば無事では済まされない。


 防御の為の壁を瞬時に構築する。

 ここはベントラーの迷宮。俺がやるよりも早く【迷宮操作:壁】によって防御壁を構築することができる。

 が、壁など意味を成さない。


「なっ……擦り抜け」


 そのまま前へと駆ける。

 すると、俺の後ろには無傷な壁がそのまま残されていた。

 シルビアから借りた【壁抜け】だ。


「斬る――」


 ただ、目の前にある物を斬ることだけに意識を集中させる。

 アイラから借りた【明鏡止水】にノエルの【天候操作】によって生み出した電撃を合わせた斬撃なら全ての物を斬り飛ばすことができる。


「――集まれ!」


 腕を掲げて防御するベントラー。

 その腕が青白い光で包まれると叩き付けられた斬撃を防いだ。

 魂の塊であるが故にスキルは失敗してしまったらしい。


「それぐらいのことはできるよな」


 ファラの愚者髑髏を限定的に出現させて防御したのだろう。


「見たか! これが俺の――」

「知るか」

「へ?」


 剣に纏わり付いていた電撃を暴発させてベントラーを腕だけだった愚者髑髏ごと吹き飛ばす。


 空中に魔法陣を出現させると大量の岩が雨のように飛んでいく。

 咄嗟に腕だけだった愚者髑髏を全身を覆うように出現させて防御する。

 何人もの魂で作られた愚者髑髏は、この程度ではビクともしない。


「なるほど。剥がすことができるのか」


 何か参考になれば、ということでノエルの戦闘を見てみれば【ティシュア神の加護】によって強制的に魂を剥がしているところだった。

 俺では【ティシュア神の加護】を十全に扱うことはできない。

 だが、俺とノエルの間には主人と巫女、という繋がりがある。

 ノエルを経由する形でスキルを使用すれば魂を剥がすのも難しくない。


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