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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
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第46話 最下層への跳躍

 アイラをあの場に残し、下水路を走る。

 どこへ続いているのか分からないが、都市の東側へと向かっているのは間違いない。


「そろそろ迷宮のある場所です」


 地上には俺たちの姿を探している人間がうじゃうじゃいる。

 だが、地下にいたままでは目的地である迷宮へ行くことができない。


「いいな?」


 メリッサの指摘に従って地上へ出ようとする為に確認すると二人とも頷いてくれた。

 斜め上へ向けて掲げた炎が天井に衝突した瞬間、爆発を起こして大穴を開ける。


「出るぞ」


 速度を緩めることなく地上へと飛び出す。

 直後、周囲でウロウロしていた全員から視線を向けられる。その目に込められている感情は憎悪しかない。


「走れ!」


 離れた場所には数日の間に見慣れた迷宮の入口がある。

 普段なら荷物持ちとして働く為に冒険者を待ち構えている子供たちで溢れているのだが、子供たちの代わりにベテランと呼べるレベルの冒険者たちが待ち構えていた。

 ベントラーには既にこちらの目的地が迷宮だと知られている。

 当然、俺たちを妨害する為の戦力を入口前に用意しておいたとしても不思議じゃない。


「イリス、分かっているな」

「もちろん」


 襲ってくる奴らだが、なるべく怪我をさせないようにして攻撃し、倒れた体を踏み付けて奥へと進んでいく。


「ま、待ってくれ……!」


 入口へと走っていると6人の冒険者が近付いてきた。


「何者だ?」

「Aランク冒険者のマッシュだ。この状況について分かっているなら教えてくれないか!?」


 先頭を走る格闘家の男が走りながら尋ねてきた。

 【階級支配】の影響下にない、ということは外国から来た冒険者なのだろう。


「いいや、こっちも何が起こっているのかは分からない」


 事情を説明していられるような余裕もないため適当にはぐらかす。


「だが、街中の人間が敵に回っているのは間違いない。知らない人間が近くにいるのは危険だ。だったら、人間のいない場所へ移動しよう、っていうのが俺たちの考えだ」

「人間のいない、場所……そうか、迷宮か!?」


 迷宮にも人はいる。

 だが、広大な空間でありながら密閉された空間でもある迷宮内は誰を信用したらいいのか分からない状況で頼るには打って付けだった。


「俺たちはなるべく下の方の階層へ行きます」

「下へ?」

「はい。下へ行った方が人の数は少なくなります。本来なら凶暴な魔物もいて危険なのですが、そこまで行けるのは一握りの存在だけです」

「ああ、その通りだな」


 迷宮前に陣取っていたAランク冒険者を倒す。

 入口が見えるようになったところでマッシュたちが駆け込む。


「先に行かせてもらう!」


 謝りながらも彼らが足を止めることはない。

 急いで追い掛ける必要はない。追い抜いた彼らは、少し離れた場所で足を止めていた。


 迷宮へ入ったばかりの地下1階の入口。

 そこでは、人と同じくらいの大きさがある結晶が地面から突き出ていた。

 他の階層との行き来を可能にする迷宮の構造物(オブジェクト)――転移結晶だ。


 マッシュたちは転移結晶を使用して一気に下層まで移動するつもりでいた。

 ところが、いつものように使用しても転移結晶は全く反応しなかった。


「おい、どうなっているんだ!?」

「まさか、壊れているなんて……」

「転移結晶が壊れるなんて話は聞いたことがないぞ!」


 次第にヒートアップする議論。

 だが、議論しているような暇がないことにすぐ気付いた。迷宮の入口からは何人もの冒険者が次から次へと押し寄せ、迷宮内からも少なくない冒険者が押し寄せてきている。


 こちらの目的が迷宮だと分かった時点で挟み撃ちをしようと考えていたベントラーは優れた冒険者を何名も潜ませていた。


「クッ……お前ら、この異常事態なんだから転移結晶の使用は諦めろ!」

「だけど……」

「俺たちの目的はイカレタ連中から逃げ果せることだ。走って突っ切るぞ」

「へい!」


 仲間を引き連れたマッシュが人の密度が薄い場所を狙って突撃する。


「ぎゃあ!」


 その過程で一人が体を斬られて犠牲になった。

 それでも残りの5人は逃げ果せることに成功した。

 襲撃者たちにとってマッシュたちは目標である俺たちへ攻撃をするうえで邪魔な存在でしかない。たまたま自分の道を阻んでいたから斬り捨てた。同じ冒険者でも襲ってきている奴らの方が強い。


「ダメだ! やっぱり反応しない!」


 転移結晶を使用しようとしたイリスが叫ぶ。

 俺たちが使用しても無反応。

 ベントラーは、俺たちが迷宮の最下層へ辿り着けないようにする為に地下31階からの再スタートができないよう転移結晶の機能を停止させた。


「そうか!」


 俺も思わず叫ぶ。

 同時に笑みが浮かんでくるのを抑えられず笑顔になる。


「条件は全て揃った」


 迷宮まで辿り着くこと。

 眷属からの邪魔が入らないこと。

 そして、転移結晶の使用を禁止させることが最下層まで到達する為に必要な条件だった。


「たしかに普通の冒険者を最下層へ行かせない為なら最適な行動だったのかもしれない」


 周囲を風の壁で覆う。

 近付いてきた冒険者たちは暴風に押し飛ばされていた。それでも、鍛えられた冒険者だけあって受け身を取って再度こちらへ向かって来ている。ただ、残念なことにいくら強くても暴風の壁を突破できるほどではない。

 俺のここでの仕事は邪魔が入らないよう二人を守ることにある。


「イリス、任せた」


 意識を集中させたイリスは俺の言葉に答えず転移結晶に触れたままだ。

 迷宮主の特権として、迷宮の機能の一部を一時的に停止させることが可能だ。今回の転移結晶が使用不能になったのも最下層にある迷宮核から迷宮に干渉することで可能になった。

 常に使用を妨害する為の力が全ての転移結晶へと働いている。


「――捉えた!」


 迷宮代理人であるイリスは俺と同等、一部の機能に至っては俺以上に迷宮の力に詳しいことがある。機能の使用停止もイリスの方が詳しい。

 イリスが捉えたのは使用を妨害する為の力が流れてきている大元――迷宮核のある最下層の位置。

 空間的に断絶され、離れた場所にあるにもかかわらずイリスは正確な位置を捉えた。


「では、次は私の番ですね」


 転移結晶に手をついたままのイリスの肩にメリッサが手を置く。

 メリッサもまた目を閉じて意識を集中させるとスキルを発動させる。


「【魔力解放】!」


 使用することによって一時的に魔力値を999999まで上昇させることが可能になるスキル。手に入れた当初は99999だったが、メリッサのステータスが上がったことによってスキルを使用することによって得られる効果も十倍にまで上昇していた。

 強くなったことでできるようになったことがある。


「……っ! こちらも把握しました。跳びます!」

「頼む」


 俺も空いていたイリスの肩に手を置く。

 次の瞬間、目の前の景色が全く異なる場所へと移動していた。真っ白な岩肌の洞窟みたいな場所。その空中へと放り出されていた。


「……申し訳ございません。高さまでは指定することができませんでした」

「辿り着いたんだから問題ない」


 謝るメリッサを慰める。

 消耗して倒れそうになるメリッサとイリスを抱えて地面に着地する。


「どうやら最下層へと辿り着くことができたみたいだな」


 洞窟の奥には白い神殿のような建物がある。

 あれが迷宮核の安置されている建物だ。


「ですが、うまくいったみたいで安心しました」


 メリッサの見つけた最下層への到達方法。

 イリスが迷宮核のある位置を捉え、【魔力解放】によって膨大な魔力を手にしたメリッサが空間魔法と【迷宮魔法:転移】を併用させることによってイリスの捉えた位置まで強制的に空間を跳躍する。


 もしも、ベントラーが俺たちの30階までの到達を阻止せず、残っていた31階から最下層までの40階層を攻略させている間に妨害するなんていう手段を採られていれば成功しなかった。ベントラーが本格的に引き籠ることしか考えていなかったからこそ成功した作戦だ。


「お前の敗因は俺が自分と同じ迷宮主だっていうことを忘れていたことにある」


 迷宮に関しては同じくらいの知識を保有している。

 にもかかわらず、ベントラーは迷宮に関して知らない者を相手にしているような手段を採ってしまった。


「きさま……!」

「ようやく会えたな。あんたがベントラーだな」

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