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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
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第41話 迷宮魂縛

 マルスたちが去るのを見送ってから改めて目の前にいる骸骨の巨人を見る。

 青白い光によって構成されていて、普通のスケルトンと同じようにどうやって動かしているのか分からないけど、さっきの攻撃から自由に体を振り回すことができるみたい。


 何よりも大きい。たぶん、わたしの20倍近くはある。

 そんなことは向こうも分かっている。


「ははっ、これだけの力を見せても戦うつもりなんだ」

「何事もやり方次第、かな?」


 錫杖を構える姿を見せると相手――ファラが笑っていた。


「いいよ。遊んであげる。あたしも雑魚を相手にし続けることに退屈していたからね」


 愚者髑髏が剣を振り上げる。

 そのままわたしを攻撃されると立っている『金の狐亭』まで被害を受けることになる。ここは獣人に厳しいエスタリア王国にあってわたしみたいな存在がいるパーティでも受け入れてくれた。壊される訳にはいかない。


地震(アースクエイク)


 スキルで地震を引き起こすと愚者髑髏が体勢を崩す。さらに土魔法で立っていた場所を陥没させてしまうと完全に膝をついてしまった。


「この……!」


 愚者髑髏が剣を振る。薙ぎ払う先には『金の狐亭』がある。

 屋上から飛び降り、剣を弾く……ことができなかったため斜め上へと逸らす。剣が屋上のギリギリ上を通り過ぎていってくれたおかげで建物には一切の傷がついていない。

 地面に着地すると愚者髑髏が左手で上から拳を落としてくる。

 大質量が落ちてきたことにより地面に大きな穴が開けられている。


「あれ……?」


 愚者髑髏の肩に乗ったままファラが戸惑っている。

 もう、殴った場所にわたしはいない。


「はっ!」


 倒れていない方の足首を叩く。

 すると後ろへ倒れて尻餅をついてしまう。


「ちょっとしっかりしなさいよ!」

「その骸骨の弱点は大きいことにある」


 安全の為に肩の上に乗っているファラ。

 さっきからファラの指示に従って攻撃している。あの高さからじゃ地上にいるわたしの姿なんて見えない。


 わたしの位置は【地図】で捉えることができるけど、常に動き続けているわたしに攻撃を当てるのは難しい。


「そこ!」


 わたしのいる位置を正確に指示して拳を落としてくる。


「ああ、もう! どうして捕まらないの!」


 そこには、もうわたしの姿はない。

 けど、わたしの後ろにあった建物は砕け散っている。


「なるほど。それだけ強い攻撃ができるなら今までは問題なかったんでしょ」

「……! そこの建物の壁!」


 建物の壁を駆け上がっていると右拳が振るわれて3階と4階部分が完全に吹き飛ばされる。

 その前に壁を蹴って上へ跳ぶ。

 すると左手が薙ぎ払うように迫って来る。


「【跳躍(ジャンプ)】」


 ここまで上がれば肩の上にいるファラの姿がはっきりと見える。

 【跳躍】でファラの背後まで移動すると乗っているだけで無防備な体へ錫杖を突き出す。

 走り回っている最中ですら【地図】だと対応することができなかった。それよりも長い距離を一瞬で移動すれば対応することはできない。


「やっぱり、あたしのことを無防備だと思って攻撃してきたね」

「……!」


 だけど、青白い光の盾によって阻まれた。


「ちゃんと、その程度の対策はしているに決まっているでしょ」

「これは……!」


 愚者髑髏を形作っている物と同じ物だ。


 スキル【絶対感知】。

 わたしの場合は、神と長く触れ合っていた影響なのか神気みたいな人間が扱うエネルギーとは異なるものに対する感知力が高くなるスキルが発現している。

 愚者髑髏とは別の場所から流れてきた魂が集まり、盾になるところをわたしは捉えていた。


「動きを止めたね」


 青白い光の盾から小さくした愚者髑髏の両腕みたいな物が飛び出してきて殴り掛かってくる。

 錫杖を引き戻して後ろへ跳ぶ。


 けれども、間に合わず殴られ吹き飛ばされると建物と建物の間に落ちる。


「がはっ!」


 体を起こすと口から血が塊になって吐き出される。

 まあ、建物を軽々と壊してしまうような攻撃を受けてこの程度で済んでいるのが異常なんだ。


「落、雷……!」


 【天候操作(ウェザーコントロール)】で空から雷を落とす。


「無駄だよ」


 空を見上げることもなく出現した魂の盾が雷を受け止める。

 治療する為に殴られた胸に手を当てて回復魔法を掛けながら路地を奥へと進む。


「どこへ行くつもりなのかな?」


 建物にも構わず進んで来る。

 当然、愚者髑髏の進行を阻む建物は粉々に砕かれる。


 こんな風に奥へ隠れたって【地図】があるんだからわたしの位置は丸分かり。ただ、街が破壊されるのも気にせずに突っ込んで来るのだけは意外だ。


「街を壊してもいいの?」

「問題ないんじゃない? この街にいる奴らは全員、あたしたちの支配下にあるようなものだから住む家がなくなっても気にしないようにすればいいだけだし、建物なんて後からいくらでも造れるんだよ」

「あ、そっか」


 ここは迷宮だ。だったら【迷宮操作:建築】が使える。

 街の再建なんて迷宮の魔力さえあれば簡単なことを忘れていた。


「マルス、あのね――」


 再建が思ったよりも簡単なことを伝える。


『それは良かった』


 マルスも安心している。

 うん、後から絶対に必要になることだからね。


「さて――」


 本体を狙っても彼女の支配下にある魂が自動で守ってしまう。

 愚者髑髏自身は、わたしの攻撃程度じゃあ転ばせるのが精一杯で倒せるほどのダメージを与えられていない。

 とにかく保有しているエネルギー量が尋常ではない。


「鬼ごっこは終わりにしようか」

「え……」


 骸骨の巨人が四つん這いになり、顎を外して大きな口をこちらへと向けている。

 すると大砲みたいな物が口の中から出てくる。


「『魂縛砲』――準備」


 青白い光が大砲へと集中していく。


「ど、どうしよう……!」


 見ているだけで危険な物だと判断できる。

 できれば愚者髑髏の後ろまで行きたいところだけど、相手が大きすぎて向こう側を目視することができない。


 どうすれば――!?


『随分とピンチですね』

『その声は――!』


 頭の中に響いてくる声。

 【迷宮同調】による念話に似ているけど、わたしだけが聞くことのできる声。


『ティシュア様!』


 以前、仕えていた神。

 今は悠々自適な生活を続けている……わたしのお金で。


『今はティシュア様に構っている暇は……』

『状況は分かっています』

『どうして、ですか?』

『いえ、暇だったので迷宮の最下層へお邪魔して迷宮核に頼んでそちらの様子を見させてもらいました』


 最下層の様子を確認すると迷宮核の前に暢気にお茶を飲んでいる。

 人が忙しくしている時に何をしているんだろう。


『さて、今連絡したのは現状を打破する方法を教える為です』

『あるんですか!?』

『貴女は既に持っていますよ』

『え――?』


 ティシュア様から提示されたのは【ティシュア神の加護】。けど、このスキルはティシュア様との繋がりが強くなるぐらいで現状を打開できるような効果は見込めないのですが……


『そんなことはありません。相手が支配されているアンデッドや魂だけの存在だからこそ有効なスキルになり得ます』

『そうなんですか?』

『その通りです。貴女は「巫女」です。今は私の「巫女」ではなく、迷宮主の「巫女」となってしまいましたが、それでも私の「巫女」としての力を振るえるようになるのが【ティシュア神の加護】の本来の使い方です』


 その本来の使い方をしていなかったティシュア様がスキルの正しい使い方を教えてくれる。


『――本当に可能なのですか?』

『試しにやってごらんなさい。もう、時間がありませんよ』

「あ!」

「――発射!」


 放たれた砲撃が射線上にあった建物を吹き飛ばし、街を囲む外壁まで到達すると壁に大きな穴を開ける。

 さらに首をゆっくりと左へ振ると砲撃も動き、扇状に街が破壊されていく。


「綺麗サッパリ吹き飛ばされたかな……あれ?」


 更地になった場所の真ん中に立つわたしの姿を見てファラが驚いている。

 周囲が全て消えてなくなっているため攻撃の範囲内にいたのは間違いない。だけど、無効化した方法が分からない。


「何をしたの!? あたしの【魂縛砲】は捕らえている魂を少し消費するせいで無制限に撃てる訳じゃないけど、街を吹き飛ばせるだけの威力があるのよ! それなのに、どうして!?」

「さあ? それよりも気を付けた方がいいわよ」

「何を……」


 更地になった場所を駆け抜け、愚者髑髏の足先を錫杖で叩く。


「そんな攻撃……っ!?」


 バランスを崩す愚者髑髏。

 ファラも前へ倒れそうになる体を押さえて愚者髑髏の足先を見る。

 そこにあるべき左足の親指が消えていた。


「何で……」


 すぐに回復させようと予備に用意しておいた魂を集める。

 保有している魂はまだいくつもあるけど、ファラ自身のレベルが低いせいで愚者髑髏の大きさは今が限界だった。そのため使える量も限られている。


「どうやったのか分からないけど、こっちは魂のストックがまだまだあるの! いくら指先を削ったところで……」


 左足の親指を修復している間に右足の指が全て消失していた。

 思わず体勢を保てないせいで倒れる。


「これから巨人の体をガンガン削っていくわ。覚悟しておきなさい」

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