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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
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第23話 ギルドからの招待

「買取をお願いします」

「あ、はい」


 昼過ぎ。夕方まで十分な時間がある時間までに探索を切り上げて地上へ戻って来た。予定通り、地下30階のボスを倒したところで止めている。これ以上、無理に探索を進める必要もない。


 とはいえ、今日の成果を換金する必要はある。

 イリスの提案で冒険者なのだからギルドでも売った方がいいと言われて今日はギルドの方へ素材を持ち込んだ。


 蟹や蝦、凶暴な鮫や鰻、ボスだったウツボと多種多様な魔物の肉が中心だ。


「今日は随分と早いんですね」


 受付ではローナさんが暇そうにしていたため対応してくれた。


「明日は明日でやる事がありますからね」

「そうなんですね。ウチに所属している冒険者の多くは今日の内に可能な限り稼いで夜は宴会をするんですよ」


 そして、そのまま酔い潰れて明日を消費する。

 迷宮に潜ることができないため時間を持て余してしまうらしい。


「いいんですか? けっこうな依頼が残っていますよね」


 迷宮も全ての素材に対応している訳ではない。

 エスターブールの近くで採れる素材については外で回収して下さい、と言わんばかりに対応していなかった。と言っても、エスターブールの近くで採取できる物は緊急性が低いため依頼が放置されていてもあまり困っていなかった。


「ギルドとしても依頼が放置されたままなのは困るのですが、こればかりは仕方ない事なんです」


 冒険者に採取へ行って来いと命令する訳にもいかない。

 ギルドにそんな権限はない。ギルドは、所属している者が活動し易いようにサポートする集団の事であるため緊急事態でもなければ命令権はない。


「では、奥にある倉庫の方へお願いします。最低限の荷物しか持っていないように見えますが、かなりの量を持ち込んでいるんでしょう?」

「ええ、まあ」


 ローナさんに案内されて狩って来た物を道具箱(アイテムボックス)から出して倉庫に並べる。

 量が量なので鑑定を担当している職員には呆れられてしまったが、自分たちで消費する物以外は出さない理由がない。


「……紅蟹(クリムゾンクラブ)はどうしました?」


 屋敷に帰ってからシルビアに調理してもらう予定なのでギルドにクリムゾンクラブを渡す予定はない。

 問題はローナさんがクリムゾンクラブを俺たちが狩ったことを知っていたことだ。


「クリムゾンクラブを討伐した件ですか? それでしたら地上へ帰還したスコットさんが教えてくれました」


 クリムゾンクラブとの討伐後。面倒事に巻き込まれるのは嫌だったため、何も言わずにその場を後にした。

 スコットという名前には憶えがないが、あの場にいた冒険者の誰かだろう。


 ローナさんから話を聞くとどうやら地上へ帰還した彼らは目当てだったクリムゾンクラブを討伐した後に起こった出来事まで詳しく語ってしまったらしい。


「スコットさんは、スウェールズ伯爵からの無茶な依頼でクリムゾンクラブの討伐をしなければならなかったんです」


 明日、そのスウェールズ伯爵という人物がパーティーを開くつもりでいた。

 その際にクリムゾンクラブを使うつもりでいた。


 ところが、クリムゾンクラブはレアな魔物であるため既に前回の『構造変化』から時間が経過してしまっている今となっては買取価額が高いせいでほとんどが狩り尽くされてしまっているため見つけるのに苦労する。

 それに苦労して見つけてもBランク冒険者パーティでも合同で討伐に当たって討伐できるレベル。


「それでも見つける事には成功したんです」


 前日からは夜も探索に当ててクリムゾンクラブを見つけた。

 そして、朝を過ぎた頃になってようやく見つけることができた。

 どうにか依頼の期限までに間に合わせることができた。


 ところが、夜通し探したせいでフラフラだったため精神力を必要とする魔法使いが失敗を犯してしまった。

 コントロールが甘かったせいで威力を高めた魔法が外れてしまった。


「あ~~~」


 そういう失敗を失くす為にも体調は万全にしておかなければならない。もしくは不調なら休まなければならない。

 あの窮地は体調管理を怠った彼らの責任とも言える。

 まあ、依頼の期限が差し迫った状況で焦っていたのかもしれない。


「戻って来た彼らはマルスさんたちに感謝したくて探していたんです」


 俺たちの特徴を言って誰なのか探そうとしていたらしい。

 最初はギルドの受付嬢に聞いていた。だが、ギルドは冒険者の秘密を秘匿しなければならない。特に高ランクの冒険者ともなれば秘密にしている事が多くなる。ギルドはきちんと何も教えなかった。


 しかし、ギルドには多くの冒険者がいた。

 少し聞き込みをしただけで特定には成功したらしい。特にクリムゾンクラブの足をぶった切っていたアイラはしっかりと覚えていたらしい。さらに運の悪い事に聞き込みをした中に海でバーベキューを振る舞った冒険者がいた。


「……まあ、俺たちだっていう事が知られるぐらいはいいですけどね」

「そうですか。それでお礼を言いたいと仰っていますけど、どうしますか?」

「あまり気にするほどの事でもないんですけど」


 蟹が食べたかったから討伐しただけだ。

 感謝されるほどの事ではない。


「もしも受けられるのなら今日の夜、ここへ来て欲しいそうです」


 ローナさんが地図の描かれたカードを渡してくる。

 目的地は冒険者ギルドから近い場所にある酒場らしい。


「打ち上げをするので参加して欲しいそうです」

「分かりました」


 感謝したい気持ちも分からないでもない。

 もしも、あの場でアイラの介入がなければせっかく手に入れたクリムゾンクラブを捨て置いて行かなければならなかった。


 その場合、依頼に失敗することになる。

 伯爵からの依頼を失敗したとなれば今後の活動にも支障を来たしてしまうことになる。

 それらの損失に比べれば酒場で驕るぐらいは大した出費ではない。

 彼らの気が晴れるというのなら付き合ってあげよう。


「おう、終わったぜ」


 諸々の話をしていると鑑定が終わった。

 買取金額は金貨80枚。

 1日の稼ぎとしては十分過ぎる金額だ。


「じゃあ、打ち上げの方には後で参加しますね」


 まだ夜まで時間がある。

 クリムゾンクラブを討伐していた彼らは夜通し探索していて疲れているので今は寝ていることだろう。


 鑑定の様子を見ていたイリスを呼び寄せる。

 彼女は俺の護衛だ。

 鑑定に全員が付き合う必要もないため他のメンバーはギルド内で自由に行動している。


「あ、ちょっと待って下さい」

「はい?」


 帰ろうとしたところローナさんに呼び止められた。


「実は折り入ってお願いがあります」

「何ですか?」

「どうやらウチのギルドマスターがマルスさんたちに興味を持ってしまったみたいなんです。パーティにいる一人以外がAランク冒険者。そんなパーティなかなかありませんからね」


 普通は、Aランク冒険者を中心にランクの低い冒険者が何人か集まってパーティを組む。ランクが低い内は同じランクでパーティを組むことがあるが、Aランクまで行ける冒険者は本当に一握りしかいないためそのようになる。

 そこでも目立つのは分かっていた。


 ようやくギルドマスターまで辿り着くことができた。


「……それで?」

「ギルドマスターに会ってはいただけませんか? 時間はそちらの都合に合わせます」


 ギルドマスターとの面会。

 むしろこちらからお願いしたい事だが、逸って要請してしまうと変に思われてしまうため向こうから言い出すのを待っていた。


「そちらの方が望まれているみたいですし」


 そう言ってローナさんの視線がイリスに向く。


「何をしていたんだ?」


 イリスが何かをしていたのは知っていた。


「別に。ただ、冒険者ギルドが求めている素材を譲ってあげただけ」

「ええ、彼女には本当に助かりました。迷宮があるおかげでエスターブールには多様な物がありますが、どうしても手に入らない物があります。ですが、収納系のスキルを所有していた彼女が偶然にも所持していてくれたおかげで譲ってもらえたので助かりました」

「……そうですか」


 そんな活動をしていたのは初耳だった。

 道具箱を使えるイリスなら色々な物を取り出すことができる。もちろん道具箱の中にない物もある。そういった物についてはアリスター迷宮の力で生み出していたのだろう。


 多少の支出はあったのかもしれない。

 しかし、そのおかげで予定よりもかなり早くギルドマスターとの面会が叶った。


「いかがですか?」

「明日は別の予定があるので明後日なら大丈夫です」

「そうですか。では、午前中に会えるようギルドマスターには伝えておきますね」

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― 新着の感想 ―
[一言] >自分たちで消費しない物以外は出さない理由がない。 自分たちで消費しない物”以外”=自分たちで消費する物 出さない理由がない=出す →自分たちで消費する物を出すという意味になり、 不用…
[一言] >自分たちで消費しない物以外は出さない理由がない。 否定が多すぎてわかりにくいというか、 意図と逆になっていない?
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