表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
698/1458

第20話 エスターブール迷宮―海原―

 エスターブールの迷宮は地下21階から30階が『大海原フィールド』になっている。

 海に囲まれた大きな島、海に面した広大な森のある場所、中央にポツンと小さな島があるだけで海中を探索する必要のある場所、いくつもの島が連なった場所、船を使って島から島へと移動をする必要がある場所といった具合に同じフィールドでも内容は様々だ。


 地下21階は大きな島。

 海に囲まれているだけで島の上には南国にあると聞かされている木々がいくつかあるだけで見晴らしがいいため開放的な場所だ。


「……ウチの迷宮でも採用してみるか」

「どうでしょうか? 実入りがそれほどいいとは思えません」


 海に近い場所の木にヤシの実を発見。

 足元に落ちていた大きめの石を拾うとヤシの実に向かって投擲。


 落ちて来た物をキャッチ。

 迷宮に頼らなければ手に入らない土地では結構な値段で売れるため目につく物は回収する。

 まあ、自分たちで消費するのが目的だ。


「……この階層は魚とか貝が豊富に採れる階層みたい」


 それで多くの冒険者の姿が見受けられるのか。

 地図を見て採れる素材を確認してみるが、高級魚と呼べるような代物はなく、一般市民に親しまれている魚系の魔物ばかりだ。本物の魚に関しては近くにある海で採れるため困っていない。尤も迷宮に魚がいない訳ではない。

 ただ、今すぐに必要としている物でもない。


「パス」


 という訳で地下22階。


 転移した先は密林の真っただ中だった。

 ここから密林の反対側にある転移魔法陣を目指す。

 その間に密林でしか生息していない獣や虫型の魔物と遭遇し、討伐することで素材を得る。また、密林を進んで行くと海岸に出て魚が採れるようになっている。


「来ました」


 海は無視して真っ直ぐ転移魔法陣へ進んでいるとシルビアが足を止めた。


 スッと顔を右へ向ける。ドシン、ドシンと重たい足音が聞こえて来る。

 音のする方から向かって来たのは大きな猪だ。密林にのみ生える木の実を好物にしている魔物なため外ではあまり見ない。


氷柱(アイスピラー)


 イリスが魔法で作り出した氷柱が地面から生え、突進して来ていた猪型の魔物の腹を貫いていた。

 腹を貫いていた氷柱を引き抜くと同時に傷口の凍結処理もされている。


「けっこう美味しいみたいだし、屋敷に帰ったらみんなで食べよう」


 そういう訳で猪を持ち帰ることが決定した。


 地下23階。

 小さな島がポツンとあるだけの場所。


 船で沖合に出れば様々な魚が得られ、海底には貝が転がっている。

 ある意味、エスターブールの水産食品供給を最も担っている階層だ。量で言えば外にある海で採れる量が一番なのだが、種類の多さで言えば迷宮内で採れる魚の方が多い。

 船で海に出て釣りでもすれば楽しいのだろうが、今は探索を優先させる。


「さて、次は――」


 転移した先は小さな島だった。

 小さい、と言っても直径で1キロ近くある円形の島だ。今いる島から少し離れた場所に同じくらいの大きさの別の島が見える。


 島と島の間は100メートルほどしかないため橋によって繋がれており、海中を渡りたくない者は橋を利用することになる。

 島の周りの海底はゴツゴツとした岩で形成されている。


「こういう構造をしていると狭い場所を好む魚介類が住み着きやすい」


 イリスが説明してくれる。


「特に蛸なんかは美味しい」

「え~、あたし蛸は嫌い」


 あのウネウネとした体が気色悪いらしい。

 俺は気にしたことがないのだが、女性の中には気にする人が多い。

 以前に巨大海魔と戦った時は巨大過ぎて逆にその辺りの気色悪さを感じるような余裕もなくなってしまっていたらしい。


「でも、料理すれば美味しく食べるでしょ」

「う……」


 シルビアの指摘にアイラが言葉に詰まる。

 生きている内は気色悪さが目立って嫌悪される食材だが、シルビアの手によって調理されれば気にせずペロッと食べてしまっている。

 が、今は蛸が目的ではない。


「俺たちの目的はあっちだ」


 地下24階には他の冒険者もいる。

 比較的得やすい魚介類を採っている者もいるが、地下24階にいる冒険者が他の階層よりも多い理由は別にある。


 真珠だ。

 この階層には海底に貝があり、その中に真珠が入っていることがある。


 真珠は高値で取引される。

 一獲千金を狙っている冒険者は真珠を狙って海底を漁っている。


 今もちょうど海の中から何人かの男たちが出て来た。


「……どうだった?」

「ダメだ。チクショウ!」


 貝を開けて中を確認するが、真珠は見つからなかった。

 真珠を手に入れやすい階層だが、千個の中でいくつかある、というレベルの確率だ。男たちが海中から採って来た数十個の中になくてもおかしな話ではない。


 結局、海中での探索に疲れてしまったらしく今日は帰ることにしていた。


「では、私たちも海中探索に向かいますね」


 離れた場所にある茂みへと向かうシルビアたち。

 茂みの中に入ると数秒で戻って来る。


「お待たせしました」


 戻って来た彼女たちは水着に着替えていた。

 海に潜るなら着替える必要がある。収納リングに着ていた服を収納し、予め収納されていた水着を着るように出現させる。俺だけが近くにいるなら見られることを気にしなかったのだが、この場には他の男たちもいる。一瞬とはいえ、服のない状態があるため他人に見られる訳にはいかなかったため茂みで姿を隠していた。


 その考えは間違いではなかった。

 突如として現れた水着の美女の姿に周囲にいた冒険者の視線が釘付けになっている。

 そんな連中に着替える姿を見せる訳にはいかない。


 彼女たちが着ている水着は以前に購入した物だ。

 シルビア、アイラ、メリッサ、イリスの4人の水着姿は海へ行った時など何度か見たことがある。が、ノエルの水着姿は初めて見た。

 ノエルが選んだ水着はワンピースタイプの白い水着。スラッとしていながら出るところは出ているノエルらしい水着だ。


「な、なに……?」


 ジッと見ているともじもじし始めた。

 あまり特徴のない水着だが、狐尻尾を出す為の穴が開けられている。恥ずかしそうにする度に揺れる尻尾が可愛らしい。


「いや、なんでもない」


 どうにか落ち着かせて俺も着替える。

 と言っても着ていた服を収納するだけ。最初から『大海原フィールド』に挑むことは分かっていたため事前に水着を服の下に着用していた。これなら脱ぐだけで着替えを済ませることができる。


「真珠を探しにいくか」


 海の中に飛び込む。

 全員、迷宮で泳ぐ練習をしていたおかげで潜るのは問題ない。


『大丈夫だな?』

『はい、問題ありません』


 水中でも念話があるおかげで意思疎通は問題ない。


『各自、散開』


 それぞれ別れて真珠を回収に行く。

 と言っても探す必要はない。攻略地図には海中の地形も表示されており、どこに真珠があるのか表示されている。さすがに貝全てを表示させてしまうと地図が凄まじいことになってしまうが、一定以上の価値がある貝のみを表示させればスッキリする。


 今回、表示させているのは金貨1枚以上の価値がある真珠。

 真珠も大きさによって価値がピンキリだ。

 あまりに小さ過ぎる物はそのままにして最低限以上の価値がある物だけを回収する。


 ――1時間後。


「ふぅ、結構稼いだな」


 傍にある木箱には真珠がぎっしりと詰め込まれていた。

 これは、とてもではないが近くにいる冒険者には見せられない。

 せっかく今も一生懸命真珠を探している冒険者たちだが、申し訳ないことに俺たちの手でほとんどを回収してしまった。


「焼き上がりましたよ」

「ありがとう」


 せっかく海にいるので遅めの昼食はバーベキューだ。

 普通、迷宮に挑む冒険者は少しでも多くの素材を持ち帰る為に荷物を最小限にするため昼食は非常に質素な物になる。そんな事情をお構いなしにバーベキューをすれば羨ましそうな目で見られる。


「悪いな、俺たちまで」

「いいんだよ。参加費は払ってくれているんだから」


 仕方ないので招待した。

 もちろん参加費としてお金を貰っている。荷物を少なくする為に食事を質素にしているだけで食事ができないほど困窮している訳ではない。

 幸いにして金は持っているため大盤振る舞いできる。


「その代わり、俺たちにちょっかい掛けて来るような真似は遠慮してくれよ」


 態々、彼らを誘ったのは宝石を持ち帰った時のようないちゃもんを未然に防ぐため。

 俺たちがこうして大容量の荷物を持ち運べるスキルを持っている事や実力について知られるようになれば面倒事も減ってくれるだろう、と考えての事だ。


「その事なら心配するな」

「ん?」

「この間の件は聞いている。あいつもそれなりに腕が立つ奴だったんだが、それが何もできずに倒された事を聞いて突っ掛かって来る奴はいねぇよ」

「ああ……」


 いちゃもんをつけた挙句に凄まれて漏らしてしまった。

 もう、冒険者として活動ができないほどの恥だ。

 おそらく、これ以上のランクアップは望めないだろう。


「ま、今日の件も含めて広めておいてやるよ」


 美味そうに肉を食う冒険者。

 満足してもらえたようで何よりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ