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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
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第6話 帰還自粛

『君には、これがどう見える? メリッサ?』


 迷宮核(ダンジョンコア)には俺たちが感じた門を潜った時の違和感の正体が分かっていた。


 少しだけ可視化した状態で見せてくれる。

 それは、門に構築されていた結界。


 エスターブールには目に見える形として物理的な壁である外壁がある。

 それとは別に目に見えない壁も存在していた。


「結界、ですね……」


 メリッサにも分からなかった。


『仕方ないよ。これは迷宮の力を利用したものだもの』

「迷宮による結界? ですが、今の私なら帝都にある結界も感知することができます」


 グレンヴァルガ帝国の帝都には、外敵から都市内を守る為の結界が存在する。

 この結界により帝都は何人の侵入も許さず昔から変わらずそこに在り続けることができていた。さすがにカルテアほどの大質量を受け止めることはできないため一時は焦りもしていた。

 普段は巧妙に隠されており、最高クラスの魔法使いでもなければ感知することはできない。

 が、最高クラスの魔法使いであるメリッサには通用していない。


『残念だけど、あそこの結界とは比べようがない、用途が全く違う。だから気付かなかったんだよ』


 用途?


『あの結界は、空間を転移して都市を出ようとする存在を感知して妨害する為の物だよ』


 迷宮から脱出した魔物の中で最も厄介なのが空間転移能力を持ったリッチのような魔物。

 他の地上や空中を移動する必要のある魔物なら迷宮の入口が一つしかないため見逃す事はない。が、全く見当違いの場所から現れてしまえば逃してしまうかもしれない。


 最も避けなければならないのは都市からの脱出。

 だからこそ都市を覆うように脱出を妨害できる結界を構築している。


 結界があるおかげで、都市から空間転移で脱出しようとしたとしても弾かれ、弾かれた先が分かる仕組みになっているらしい。そうなれば位置を特定されて追われる身になる。


「お前にしては珍しいな」


 こちらの自主性を尊重して自分からはあまり意見を言わない迷宮核。

 今回のように詳細が分からなかったとしても結界について教えてくれるのは珍しい。


『今回は、正体が露見するのはマズいからね』


 迷宮核としても謎の迷宮主については気になるところ。

 安易な空間転移によって目を付けられるのは避けたかったようだ。


『教えておけば目的を果たしていないのに都市内からアリスターへ帰ろうとは思わないでしょ』

「まあ、確かに」


 帰るつもりだったアイラが頷いている。

 俺はともかくとして隙を見て夜などの時間が空いた時にでも帰るつもりだったらしい。


「ですが、この結界――【迷宮魔法:転移(ワープ)】を防げるほどの力はありませんよね?」


 メリッサの解析によれば、エスターブールの結界は対魔物――空間魔法を相手にした時を想定したもので、迷宮魔法は視野には入れていない。

 空間魔法よりも迷宮魔法の方が強い。

 もしも、【転移】を防ぐつもりなら、もっと強力な結界が必要になる。


『そうだね。帰るつもりなら帰ることはできるよ』

「そっか」


 どこか安心しているアイラ。

 シルビアも少し喜んでいた。

 やはり、屋敷に残してきた子供たちが心配になっている。


『ただ、その場合は【転移】を使用した事を感知されてしまうけどね』


 空間魔法によるものなのか迷宮魔法によるものなのかの区別は付かない。

 だからこそ、エスターブールを守る人たちは躍起になって都市内から転移した人間の痕跡を探そうとする。

 継続して調査をする必要がある場合、それはマズい。

 それにエスターブールへ戻って来た時は必ず感知されてしまう。


「つまり……」

『調査中は絶対に帰ったらダメだよ』


 ガックリと肩を落とすアイラ。


 まあ、方法がない訳でもない。

 結界は都市を覆うように構築されている。

 つまり、都市の外側は結界の外となっている。帰りたければ都市の外で転移を行えばいいだけの話ではあるのだが……


「それって、さっきの検問をもう一度やり直さないといけないっていう事でしょ」


 非常に手間が掛かる。それぐらいならば多少の我慢をして厄介な理由で正体が露見してしまうのを避ける方を選ぶ。

 母親である二人の事を思えば申し訳なくなってしまう。


「まずは、予定通り冒険者ギルドへ行こう」



 ☆ ☆ ☆



「大きいな」


 目の前にある巨大な建物を見て思わず呟いてしまった。

 シルビアたちも同様だ。イリスだけはパーティに加わる前に色々な所へ出向いているおかげで同じくらい大きなギルドを見たことがあるのか冷静だ。

 アリスターにある冒険者ギルドも辺境で魔物の被害が多いため大きく造られていた。だが、エスターブールのギルドは、その3倍以上ある。


「ようこそ、いらっしゃいませ」


 冒険者ギルドへ入ると受付嬢が出迎えてくれる。

 これは、どこの街にあるギルドでも同じだ。


「多いな」


 ギルドの中にいる冒険者の数だ。ざっと100人近くはいる。


 エスターブールの街は昼過ぎであっても多くの冒険者で賑わっていた。

 アリスターや今までに立ち寄ったことのある冒険者ギルドだと朝の内に依頼を受けて夕方に戻って来て報告するのが普通だ。

 だから、昼間は冒険者が少ない。ギルドにいるのは朝の内に依頼を引き受け損ねた人や長期の依頼から帰って来たばかりの人。ギルドに置いてある魔物や薬草について描かれた資料を確認しに来た人。中でも最も多いのがギルドに併設された酒場で酒を飲んでいる人たちだ。依頼が終わって報酬を得ると、そのまま飲んでいる人が多い。


「エスターブールは初めての方たちですね」

「そうです」

「では、冒険者カードを確認させていただけますか?」


 ベテランっぽい年上の受付嬢が対応してくれる。

 門の時と同じように冒険者カードを提出する。


「Aランクですか。凄いですね」


 門番と違ってあっさりとした対応で冒険者カードを機械に通して行く。

 門の時と同じように問題点がないのか確認している。


「確認が取れました。私たちは貴方たちを歓迎します」


 と、冒険者カードを返してくれる。


「他の街と比べてかなり違いますよね」

「そうですね」

「私も最初はこの街のギルドしか知らなかったので、別件で他国のギルドへ行った時は驚いてしまいました」


 昼に冒険者が少ない事に驚いてしまった。

 しかも、今日はこれでも少ない方らしい。


「この街にある冒険者ギルドは迷宮の管理が主な仕事になっています。都市外にいる魔物の討伐依頼もあるにはあるのですが、そういった仕事は街に常駐している騎士団が解決してしまいます」


 迷宮内は管理している冒険者ギルドに任せる。

 治安維持を担当している騎士団は、住人を守る為にも都市内での活動に限らず外での活動も受け持っている。

 やっぱり冒険者として外へ行くのは難しそうだ。


「冒険者ですが、迷宮に夕方から朝まで潜る場合があるんです。魔物の中には夜にしか活動しない魔物もいるので、そういった魔物を狙うなら徹夜するしかないんです。で、戻って来たら朝、という訳です」


 時間が不規則になっている者が多い。


「人が多いのは分かりました。建物が大きいのは人が多いからですか?」

「それもありますが、一番の理由は迷宮から得られた素材を保管しておく為の倉庫ですね」


 毎日のように冒険者の手によって素材が持ち帰られる。

 だが、持ち帰った素材をすぐに消費できる訳ではない。次第に持ち込まれるギルドに溜め込まれることになる。

 何らかの理由によりパンクした時に備えて大きく造っているし、街にある他の場所にも予備の倉庫があるらしい。


「皆さまはどのような用件でエスターブールへ?」

「ここの迷宮に挑みに来ました」

「Aランクともなれば危険を冒してまで一獲千金を狙う必要もないのでは?」

「せっかくなので挑みに来ただけですよ」

「……まあ、いいでしょう」


 どこか怪しんだ様子の受付嬢。

 ギルドとしても強い冒険者は歓迎だが、面倒事を持ち込まれるのは困る。その為の冒険者カードを使っての検査だったが、特に怪しいところは見当たらなかったので受付嬢も困っていた。


「では、こちらの書類に必要事項を記入して下さい。迷宮へ入る為の申請書となっております」

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