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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第27章 迷宮探訪
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第2話 エスタリアの盗賊

 エスタリア王国へ向けて出発してから数日。

 午前中の内にエスタリア王国へは入国しており、夕方になると宿を探さなくてはならなくなる。別に野営でも構わないのだが、女性の方が多いので気を遣った結果、可能ならば野営は避けるようにしている。

 探せば小さな町ぐらいならある。


「お、あった」


 街道沿いに歩いていると、ちょうど遠くに町を見つけた。


 だが、それと同時に怪しい者たちの姿を目撃してしまった。


「盗賊、でしょうか?」


 過去の出来事から盗賊を嫌悪しているメリッサが呟いた。

 町へ向かって走っている3台の馬車があるのだが、馬車を馬に乗って追い掛けている集団がある。

 馬車の走る速度からして同行者という訳ではない。

 彼らは必死に後ろから追い掛けて来る馬から逃げていた。


「さて、どうする?」


 仲間に問い掛ける。

 馬車には護衛が乗っていたらしく、馬車の後ろから弓矢が射られる。

 だが、盗賊と思われる者たちは馬を巧みに操って回避し、回避できない矢については腕に装着したガントレットで防いでいる。


 なんというか手慣れている。

 このまま放置しても俺たちには関係のない話だが、目にしてしまった以上は彼らが屍を晒すような目に遭った時には寝覚めが悪い。


 普段なら目立つような真似は避けるところだが、今回は事情があって目立つことを優先して行動する。


「殲滅あるのみです」


 メリッサが即答する。

 聞くまでもなかった。


 直後、メリッサの姿が消える。


「あのバカ……!」


 【跳躍(ワープ)】を使って逃げている馬車を守るように盗賊たちの前まで移動していた。

 普段は冷静なメリッサだが、盗賊が相手の時だけには容赦がなくなって感情的になる。


「俺たちも行くぞ」

「仕方ない」

「うんうん」


 メリッサのステータスを考えれば、たかだか盗賊を相手に後れを取るようなことにはならないだろうが、万が一という事が考えられる。

 それにエスタリア王国には迷宮主が必ずいる。

 最悪の場合を想定して動く必要がある。


「なんだテメェ……!」

「一体、どこから現れやがった!?」


 メリッサと同じように【跳躍】で俺たちも移動すると馬の足を止めていた盗賊たちから不審な者を見る目で見られた。


 突如として現れた人間。

 当然、警戒せずにはいられない。


 それに突如として現れたメリッサは追い掛けていた獲物を簡単に諦められてしまうほどの美貌を持っていた。


「なっ、あんたたち……!」


 馬車の方から男の声が聞こえる。

 盗賊を追い払う為に弓矢を射っていた男だ。

 振り向くと弓に手を掛けたまま動きを止めていた。


「こいつらはこっちで処理しますよ」


 盗賊の人数は20人。

 それなりの規模を持っているみたいだ。


「ほう……言ってくれるじゃないか」


 俺の「処理する」という言葉に盗賊の中でも先頭にいた男が反応した。


「へへっ、お頭。女が4人もいますぜ」

「しかも、全員が上玉ですよ」

「狐女は売れるかどうか分からねぇがな」


 ハハハッ、と笑い出す盗賊たち。

 その言葉を聞いてノエルの錫杖を握る力が強くなっていた。別にノエルが不細工だという訳ではなく、単純に毛嫌いされる獣人だから価値が低いとされていた。選民思想の強いエスタリア王国では獣人は奴隷でも使い捨てにされる程度の価値しかない。


「まあまあ落ち着け」

「けど……」


 不機嫌にさせないよう必死に宥める。

 怒って取り返しがつかないような事態にはさせない為だ。


「分かっているな、メリッサ」

「もちろんです」


 先に来ていたメリッサが前に出る。

 怒ってはいても最優先にしなければならない事は理解しているみたいだ。


「貴方たちは盗賊、という事でよろしいでしょうか?」

「あん? だったらどうしたって言うんだよ!」

「いえ。盗賊でもない人たちを攻撃したとなれば逆にこちらが咎められることになりますので確認をしたまでです」

「その心配なら無用だぜ嬢ちゃん。アンタはこれから俺たちに捕まって一生を慰み者として過ごすことになる。もしくは奴隷として売り渡されることになるだろうな。アンタほどの美人なら高値が付くだろうぜ」


 何が面白いのか笑い出す盗賊たち。


 ハッキリ言って盗賊たちは雑魚も同然だ。

 なぜならメリッサの放つ殺気が強くなった事に誰一人として気付いていない。


「もう、結構です」


 メリッサの周囲にバチバチと電撃の爆ぜる球体が20生まれる。

 ちょうど盗賊たちと同じ数だ。


「貴方たちのように他者を顧みない者に慈悲を与えるつもりはありません」

「……っ!? 全員、逃げろ!」

「遅い!」


 球体が盗賊に向かって飛んで行く。

 盗賊たちは馬を走らせて回避しようとする。が、馬がすぐに旋回できるはずもなく直撃してしまう。


「ぎゃあ!」

「がっ!」


 球体の直撃を受けた盗賊が馬から落ちてしまう。

 落ちた時に怪我をしてしまうが、幸いにして生きてはいる……いや、致命傷になりそうな落ち方をした盗賊についてはメリッサが魔法で助けている。

 それでも全員が麻痺しているだけだ。


「相手を麻痺させる魔法だと……!? オレたちのレベルなら魔法にも耐性を持っている! なのに無詠唱で放った魔法の一撃で昏倒させられるはずがない! お前ら、絶対に直撃するなよ!」

『はい!!』


 盗賊のリーダーがメリッサの魔法から逃れ、馬を巧みに操りながら叫ぶ。本人もそれほどの余裕はないはずなのだが、部下に指示を出す必要はあった。

 だが……


「ぎゃ!!」

「うきゃ……」


 一人、また一人と直撃を受けて馬から落ちて行く。

 メリッサの魔法を受けた状態では馬に乗っている事すら不可能になる。


「クソッ……」


 気付けばリーダーだけになっていた。

 馬を操る技術は相当なもので最後まで逃げ切る事ができていた。

 とはいえ、たった一人では何もできない。


「へっ、盗賊である俺たちを殺さないなんてとんだ甘ちゃんだな」


 リーダーが笑いながら馬から降りる。

 既に勝敗は決している。


「甘ちゃん? 何を勘違いしているのですか?」

「なに?」


 リーダーはメリッサが慈悲の心から情けを掛けたと思っていた。

 残念ながらメリッサには盗賊に与える慈悲などない。そもそも最初に「慈悲を与えるつもりはない」と宣言している。


「私の用件は一つだけです。貴方たちのアジトはどこにありますか?」


 盗賊のリーダーに冷たく言い放つ。


「そ、そんな事を聞いてどうするつもりだ!?」

「無論。アジトに溜め込んでいる全ての財宝を頂戴します」


 盗賊を討伐した場合、盗賊が所有している財宝については討伐した者に権利が移動する。

 もしも、盗賊に奪われてしまった者を一般人が取り返したい場合には討伐した者から買い戻さなくてはいけなくなる。


「お、教えられる訳ないだろ……!」


 怯えた様子でリーダーが叫ぶ。

 自分たちの溜め込んだ宝を渡せない、という理由もある。が、それ以上にアジトの場所を教えて用済みとなれば自分たちが処分されてしまう、という恐怖もあった。

 それだけ今のメリッサは怖い。


「安心して下さい。アジトの場所を教えたからと言って私たちの手で処分するような真似はしません」


 ホッと安心して息を吐き出す盗賊たち。

 だが、次の言葉を聞いた瞬間、地獄に叩き落とされた。


「皆さんには奴隷として働いてもらいます」

「奴隷?」

「そうです。殺すなんて勿体ない真似をするはずがありません」


 彼らは盗賊――犯罪者だ。

 奴隷商へ持ち込めば労働力として売り払うことができる。

 盗賊を拘束した場合、彼らの所有権が拘束した者に発生する。

 どうしようが、捕まえたメリッサの自由という訳だ。


「ふ、ふざけるな!」

「人を捕まえて売り渡すのは良くて、自分たちが売り払われるのは良くない、ですか……」


 メリッサの興味はもう盗賊たちにはない。

 それよりも気になった事がある。


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