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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第26章 悠々自適
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第12話 生産体制

 農作業を初めてから1カ月。

 成長の早い作物だと既に収穫が可能になっている物もある。


「ピーマン、ナス、ダイズですね」


 どれも地面から伸びた茎に実が成っている。

 育てた以上はこれらを収穫しなくてはならない。


「ほら、シエラ。これがダイズよ」


 迷宮の中に作られた畑にアイラがシエラを連れて来てしまった。

 もうすぐ1歳になるシエラの情操教育の為に作物がどんな風に手に入るのか見せたいらしい。


 シエラが目の前にあるダイズの茎が何なのか分からないまま掴む。

 だが、赤ん坊の腕力では引き抜くことができない。


「えい!」


 アイラがシエラに見えないよう斬撃を飛ばして茎を切断する。

 シエラの手に莢のついたダイズの茎が握られている。


「あぃ!」


 嬉しそうに自分が初めて収穫したダイズの茎を眺めている。


「これ後でお願いしてもいい?」

「大丈夫よ」


 シルビアがアイラから枝豆を受け取る。

 シエラも離乳食として枝豆を食べたことがあるのでせっかく自分で収穫した物なのだから食べさせてあげたい、という親心だ。

 すり潰してスープに混ぜた離乳食なのだが、嬉しそうに食べてくれるので好き嫌いもないみたいだ。


「さて、遊ぶのはこのぐらいにして収穫することにしましょう」


 実の付いたピーマンやナスをハサミで切って収穫する。

 どれも下の方にあるので屈んで作業をしなければならないため大変だ。

 今さらながらに農家の苦労を身に染みて理解した。


「農家の人たちはいつもこんな事をやっているのか」

「大変ですね」


 そう言っているメリッサだが、大変そうに見えない。

 なぜなら、彼女だけは全く屈んでいない。


「おい……」

「魔法という便利な力があるのですから有効利用しない手はないではないですか」


 風属性魔法【鎌鼬】で茎を切断。

 そのまま地面に落ちるはずの実だが、闇属性魔法の【念動力】によってゆっくり持ち上げられるとメリッサの抱える篭の中に収まる。


 その間、屈んでいないどころか手すら動かしていない。

 動かしているものと言えば視線ぐらいだ。

 ずっと屈んでいるせいで腰を痛くしている俺たちからすれば、はっきり言ってズルい。


「何を言っているのですか。作業効率は私の方が高いのですからほとんどの作業を私がやっているようなものではないですか」


 メリッサだけで半分近く終えている。

 それに比べて俺たちは5人がかりで半分。

 一人だけ5倍の作業を担当している。


「……ようやく終わったな」


 最後のピーマンを収穫し終えたところで立ち上がる。

 ずっと屈んでいたせいで腰が痛い。


 手で腰を叩いているとメリッサから回復魔法が飛んで来る。

 ……温かい。


「では、これは私が持って帰って処理しますね」


 調理するところまでシルビアに任せ切り。

 色々と任せてしまっている事を申し訳ないと思いつつも楽しそうに作業をしているので任せることにしている。

 今回収穫できた野菜の量もそれほど多い訳ではない。あくまでも自分たちで食べられる範囲で収められている。


「マヨネーズの時のように相談せずに大量に作るような真似はしないで下さいね」

「分かっているよ」


 色々と管理しているメリッサにしてみればアルケイン商会に頼らざるを得なかったのは失態だったらしい。

 できる事なら仲介手数料を渡すような真似はしたくないとのことだ。


「で、例の物は用意できたのですか?」

「どうにかなんとかなったよ」


 ――ゴブリン隊集合!

 号令を掛けると近くにあった小屋の中で待機していた10体のゴブリンが出て来て整列する。


 ゴブリン隊。

 知能の高いゴブリンを必要としていたため聖騎士小鬼(パラディンゴブリン)召喚(サモン)させてもらった。


 聖騎士小鬼(パラディンゴブリン)

 知能と忠誠心の高いゴブリンで、戦闘力は通常のゴブリンよりも少し高い程度なのだが、戦略を考えて行動するため初期投資にさえ目を瞑ることができればメリットの大きい魔物と言える。

 魔力の消費量を考慮した結果、最適だったのがパラディンゴブリンだった。


 召喚されたパラディンゴブリンは、召喚時は白銀色の鎧を着ていたのだが、農作業にはどう考えても邪魔にしかならないので脱がせていた。おかげで普通のゴブリンとの見分けが見た目だけならつけられなくなってしまっている。


「はい、じゃあ後片付けよろしく」

『ゴブッ!』


 収穫の終わった茎を抜いて別の場所へと運んで行く。

 そこは、予め農作業をするパラディンゴブリンの為に用意しておいた大穴。そこにゴミとなった野菜を捨てて行く。

 そこに土を敷き詰めて肥料とする。


 いくら知能が高いと言っても普通の魔物と比べた場合の話なのでパラディンゴブリンたちは、自分たちの行動が肥料を作る為に必要な行動だとは理解していない。単純に廃棄する植物は一か所に纏める。その後、土を被せておくことで数カ月後にはこの土を使って作物を育てる。

 意味までは理解せずに言われた事を黙々と熟していた。


「後は害虫が付いていたら排除する、土が乾いて来たら水をやる、毎日の育成状況を報告する」


 収穫できるかの判断までは教えることができなかったため届いた報告から収穫が可能なのかこちらで判断してパラディンゴブリンに収穫させるしかない。

 それでも最低限の農作業はできるよう仕込む事には成功した。

 彼らが今後の農作業のメインを担当することになる。


「これで畑の方は大丈夫だろ」


 せっかく用意した家庭菜園だったが、しばらく空けることになるので誰かに頼まなければならない。

 これが迷宮の中でなければ家族や人を雇って頼むことも可能だったのだが、地下81階では誰かを連れて来ることも不可能だ。


 また迷宮内にいるレンゲン一族も信用していない。

 実力的には申し分ないが、彼らに家庭菜園を任せる気にはなれない。


「そろそろ行くことにしようか――エスタリア王国へ」

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