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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第26章 悠々自適
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第7話 卵

 5日後。

 地下81階にある畑へ赴くと芽を出していた。


「あ、ご主人様」

「いや、いいよ」


 作物の様子を確認していたシルビアが駆け寄って来ようとしていたのを制する。

 足元には野菜が植わっているのであまり動き回らない方がいい。


 屈んで作業をしなければならないため大変なはずなのだが、シルビアは本当に楽しそうに手入れをしていた。やはり、昔似たような仕事をしていた事もあって嬉しいのだろう。

 あのまま俺や王都でのトラブルに関わることがなければ農場で仕事を手伝っていた可能性が高い。


「順調か?」

「さすがに数日では分かりませんよ」


 それでも何もなかった荒野が緑に彩られるようになった。


「いたっ、いたっ!」


 畑の奥にある建物からアイラの声が聞こえて来る。

 その建物は、家畜を育てる施設である厩舎だった。


「もう! ちょっと卵を貰おうとしただけじゃない!」


 厩舎の中からアイラが出て来る。

 彼女の向こう側には鶏がいる。


「卵の調子はどうだ?」


 ドン!

 魔法で生み出した風を鶏の正面の地面に叩きつけて脅すと鶏が厩舎の中へ戻って行く。


「産んでくれたわよ」

「そうか!」


 アイラの思い付きで迷宮内へ連れて来た鶏。

 雄鶏が5羽に雌鶏が25羽。

 最初の数日はなかなか卵を産んでくれることがなかったが、今日になってようやく卵を産んでくれた。


「これで食生活が豊かになりそうですね」


 家族が増えたことで食費が生活を圧迫するようになった。

 もちろん総資産を考えれば微々たる物なのだが、今後を考えると余裕があった方がいいのは間違いない。

 最初は家畜を育てることを提案されたが、牛や豚のように大きな動物が相手だと手間が掛かってしまう。そこまでの手間は掛けていられなかった。


「厩舎を用意したのは痛手だったけどな」

「う……」


 発案者であるアイラが責任感を覚えていた。

 畑の奥には立派な厩舎が建てられているが、さすがに厩舎を建てる技術など持っていなかったため自分たちで作ることができなかった。


 そこで、【迷宮操作:建築(ビルド)】だ。

 脳内にアリスター近くにある牧場の厩舎をイメージし、そっくりそのまま用意させてもらった。

 手間は全く掛かっていないのだが、迷宮の魔力を消費してしまっている。


 厩舎の中では鶏が飼育されている。

 鶏なら餌さえ与えておけばストレスを感じないよう自由にさせておくだけで卵を産んでくれる。


 餌についても草原フィールドに草がたくさんあるので乾燥させた穂を溜め込んで与えている。


「本当に助かりました。これで色々な事に挑戦することができます」


 以前から卵を使った色々なレシピに挑戦したかったらしい。

 だが、卵は高いので無駄遣いをする訳にはいかなかった。

 今は生産できる卵が少量だが、もう少し安定して生産できるようになれば色々な料理を楽しめるようになるはずだ。


「あ、こら待ちなさい!」


 1羽の鶏が厩舎を脱走して畑へ入って来る。

 アイラが必死に追い掛けているが、作物が埋められている畑の上ということもあって思うように追い掛けることができずにいる。

 対して鶏の方は畑の事など気にせず走り回っている。まあ、鶏程度の大きさなら作物にも影響は少ないだろう。


「コォ……?」


 鶏が首を傾げながら立ち止まって地面から出ている芽を見つめる。


「そこで止まっていなさいよ」


 後ろからゆっくりと近付いて捕まえようとするアイラ。


 ――パクッ!


 だが、アイラの事などお構いなしに芽を食べてしまう。


「あ……!」


 まるで、「どんなもんだ!」とでも言いたげな顔をしてアイラの方を見る鶏。

 アイラも鶏に挑発されていることを理解している。


「それはあたしたちが丹精込めて作っているニンジンよ!」


 どうやら鶏はニンジンの芽がお気に召したみたいで隣にあった芽も食べてしまった。

 満足そうな笑顔を浮かべて、さらに隣のニンジンへ移動しようとする。


 が……


「どこへ行くんですか?」


 頭をシルビアにガッチリと掴まれていた。

 気配に敏感な鳥だが、鳥が相手でも気付かれずに背後へ忍び寄るなどシルビアにとっては造作もない。


「悪い子にはお仕置きが必要ですね」

「コケ!」


 暴れてシルビアの手から逃れると脱兎の如く厩舎の方へと走り去ってしまう。

 やはり、仲間の傍が一番安心することができる。


「本当にどうしましょうか?」


 今日は1羽だけだからいいものの明日には何羽も連れて再チャレンジしている可能性がある。

 よく鳥頭と言っているから明日には忘れているかもしれない。


「柵を用意する必要があるな」


 最初の予定では迷宮内に作った外敵に襲われることのない畑だった。

 外敵が現れた以上は、身を守る為の柵が必要になる。


「まずは、こいつを突き刺して行け」


 道具箱から木の杭を取り出してシルビアたちに渡す。

 1メートル間隔で埋めたところに木の板で覆ってしまう。

 高さが1メートルもあれば鶏の侵入を防ぐには十分だろう。


「卵、回収できたよ」


 厩舎の中から卵を抱えたノエルが出て来る。

 アイラのように鶏から襲われた様子もない。


「ええと……もしかしたらなんだけど、わたしが獣人なせいもあって鶏たちも親近感を覚えてくれたらしくて懐いてくれているよ」


 果たして狐と鶏の仲がいいのか?

 微妙なところだ。


「あたしも仲良くしたいんだけどね」

「コォ!!」


 アイラが卵に触ろうとすると近くにいた鶏が騒ぎ出した。

 相当嫌われているみたいだ。


「うう、あたしが発案者なのに……」

「まあまあ、落ち着いて。せっかくだから食べてみましょ」


 既にシルビアがフライパンを用意している。

 傍にはメリッサが待機しており、魔法でいつでも火を出せるよう準備している。


「どうぞ目玉焼きです」


 その場で食べられる物として単純に卵を焼いただけの目玉焼き。

 6人で分け合って食べた目玉焼きは思いの他美味しかった。


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