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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第26章 悠々自適
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第4話 迷宮管理⑤

「まず、迷宮の環境がどういう風に分けられているのか思い出して欲しい」


 イリスに言われてシルビア、アイラ、ノエルの3人が思い起こす。

 地下1階から10階までは洞窟フィールド。

 地下11階から20階までは草原フィールドになっている。


 そこから先は5階層毎に環境が変えられているうえに地下31階から35階にある高山フィールドのように5階層が繋がった階層もある。

 洞窟と草原を例外とすれば基本的には5階層で環境が変わっている。


「もちろんこれにも理由がある」

「え、キリがいいからじゃないの?」


 アイラが一般的な冒険者に広がっている理由を述べる。

 アリスターにいる冒険者たちの間では短過ぎず、長過ぎずという理由から本気で5階層毎に区切られているのがそのような理由だと捉えられていた。


「まあ、当たらずも遠からずなのですけどね……」


 本当の理由を知っているメリッサが苦笑する。


「たとえば1階層だけで火山のようなフィールドを造ったとしましょう。そして、上下の環境は高山と鉱山です」


 間にグツグツと煮えたぎる火山がある。

 自然界では絶対に成立しない環境。


「あまりに唐突な環境を作り出してしまうと上下の階層にも影響を与えてしまうのです」


 先ほどの例で言えば山の地面が高熱で煮えたぎることになって歩けるような場所ではなくなってしまい、下にある鉱山も天井が溶け出して非常に危険な場所になってしまい採掘作業どころではなくなってしまう。

 管理する者としてそういった危険を排除する必要があった。


「迷宮の階層は亜空間によって断たれている。けど、魔力によって作り出された空間だから強過ぎると周囲の階層にも影響を及ぼしてしまう。けど、同じ環境を続けることによって安定させることができる」


 その最適な数が5階層だった。

 そこで21階以降は5階ごとに環境を変えるようにしていた。


 しかも、環境を劇的に変えることによって訪れる冒険者を飽きさせない工夫もされている。

 草原の次に森や湿原でも用意すれば気にしなかった問題だったが、自分たち以外の誰かに継続的に侵入してもらわなくてはならない。


「洞窟と草原は?」

「あそこは最初から用意されていた階層。帝都にある迷宮もそうでしょ」


 グレンヴァルガ帝国の帝都にある迷宮。

 あそこも細かい部分は多々違うものの『洞窟』と『草原』フィールドであるところは変わらない。


 理由は迷宮が必要とされた原因にある。


「元々迷宮は大災害から逃れる為の避難施設。『洞窟』は『居住施設』、『草原』は『食糧生産』の為に必要とされていた。だから10階層ずつ安定するように用意されていた」


 迷宮主が設定した訳ではない。

 むしろ宝箱や魔物の位置、生産される食糧の種類などに手を加えることはできても大規模な変更は迷宮主でもできないようにされていた。

 下手に弄って壊れでもしたら困るので気付いた時点で諦めた。


「これが84階と85階に廃都市フィールドを続けた理由」


 地下81階を前の迷宮主が廃都市フィールドで造ってしまった。

 迷宮の安定を考えるならば地下85階までは廃都市フィールドを続けなければならなかったため環境を継続させてもらった。


「じゃあ、地下86階は?」

「次は大森林でも造るつもりでいるよ」


 さすがに廃都市フィールドまで攻略できる者が現れるとは思えない。

 そもそも下層に農業に適したフィールドがないのは地下55階まで攻略されてしまったところを見て慌てた迷宮主が攻略を諦めざるを得ないほど難易度の高いフィールドを優先的に用意したためだ。


 結局、55階以降の攻略者は現れていない。

 もう攻略される事を恐れる必要もないはずだ。


 大森林なら色々な農業ができる。


「ただ、今は迷宮の魔力が階層を追加できるほど余裕がある訳ではないから無理」


 自然に溜まるのを待っていたら数十年後。

 強力な財宝を手に入れたとしても神気の塊に匹敵するような財宝でなければ階層の追加はできない。


「という訳で今は廃都市フィールドを開墾するしかない」


 道具箱から鍬を取り出してやる気を見せる。

 ただ、彼女たちはどうにも乗り気でない。


「シルビアさんの為を思った開墾だというのは理解しました。ですが、大事な子供たちの放っておいていいのですか?」

「大丈夫だろ。シエラがアルフとソフィアの面倒を見てくれている」

「いや、赤ん坊が赤ん坊の面倒を見るとか訳が分からないから」


 メリッサの質問に答えるとノエルが突っ込んで来た。

 だが、心当たりのあるシルビアとアイラが気まずそうにしている。


「あれ?」

「昨日の事なんだけどな――」



 ☆ ☆ ☆



 数日前にはシルビアに対してあれだけ子供から目を離すな、と言っていたにも関わらずアイラは同じ事をやらかしてしまった。


「大変、シエラがいなくなった!?」

「はあ!?」


 ちょっと目を離した隙に自分の部屋からいなくなってしまったシエラ。

 部屋の中を隈なく探したものの見つからず、焦ったアイラは部屋で寛いでいた俺のところへやって来た。


「ど、どうしよう……!」


 子供がいなくなるなど考えていなかったアイラは動揺している。


「はぁ……」


 ――ゴツン!


「いたっ!」


 溜息を吐きながら立ち上がると持っていた本で頭を叩く。

 ちょっと冷静になって考えれば分かることなのに動揺してしまっているせいで気付けずにいる。


「落ち着け。いくらハイハイできるようになったからと言って赤ん坊がそんな遠くへ行ける訳がないだろ」

「でも……」

「屋敷内にいるのは確実だ」


 屋敷内なら【地図】が使える。

 それに屋敷に滞在している家族の魔力反応は迷宮核が記憶している。赤ん坊の反応は弱いため識別が難しいが位置を特定するぐらいなら難しくない。


「やっぱり屋敷内にいたな」


 屋敷内にあった赤ん坊の反応は3つ。

 それも同じ部屋にいる。


「居場所さえ分かれば簡単だ」

「シエラ!」


 慌てたアイラが部屋を飛び出す。

 向かう先はシルビアの部屋だ。


「し~」


 部屋に入った瞬間、シルビアから静かにするよう言われる。

 赤ん坊が寝ているのだから静かにするよう言われるのは当然だ。


「こっちに来ていたわよ」


 双子が寝ている間にはシエラが寝ていた。

 どうやらアイラが目を離した隙に会いたくなってしまったせいで部屋を抜け出してしまったらしく、朧気な記憶を頼りに廊下をハイハイで移動してきたようだ。


「アルフはすぐに寝てくれたんだけど、ソフィアはなかなか寝てくれなくて困っていたところにシエラも来て隣に寝かせてあげたら簡単に寝てくれたわ」


 姉が来てくれたおかげで妹も安心して眠ることができたらしい。

 二人ともしっかりと手を繋いでいる。


「それにしても、この間はわたしにあれだけ偉そうに説教していたのにシエラだけでこの部屋まで来たっていうことは……」

「そうよ。あたしもちょっとトイレに行きたくなってやらかしたわよ!」


 煽るシルビアと逆切れするアイラ。

 赤ん坊の寝ている部屋で騒がしくする訳にもいかず迷惑の掛からない迷宮へ転移して喧嘩をしていた。



 ☆ ☆ ☆



「という訳で姉がいるから問題ない」


 もちろんシエラに頼っているのは半分冗談だ。

 初孫を可愛がりたい祖母がいるので多少は離れても大丈夫なだけだ。


「なら、安心かな」


 ノエルもやる気を出してくれたらしく錫杖を手にする。


「魔法を使えばそこまで苦労することなく畑を用意することもできるだろ」

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