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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第24章 大山激動
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第24話 カルテア討伐パーティー

 ワイワイ、ガヤガヤ……


 喧騒の中で行われるパーティー。

 本来ならば1年の終わりと皇太子のお披露目を兼ねたパーティーだったのだが、今はカルテアを討伐したことによる戦勝記念パーティーへとなっていた。


 パーティー会場には多くの貴族が集まっている。元々は貴族を帝都に集めることによって忠誠を誓わせるのが目的だったため仕方ない。

 だが、戦勝パーティーでもある今は帝都にいる兵士たちに対して最低限の人員だけを残して飲み食いして騒ぐことが許可されていた。


 そんなパーティーに俺たちも招かれている。

 帝国へ来た目的はカルテアの討伐などではなく、パーティーへの参加なのだから当然とも言える。


 パーティー会場の隅の方で食事を摂る。

 会場には多くの貴族が集まっており、それぞれの派閥に別れて独自に情報収集に努めている。


 突如として動き出した山、それを討伐した冒険者。

 確認しなければならない事はたくさんある。

 そんな面倒事に絡まれたくないので会場で料理を楽しんでいた。


「失礼、貴方方があの山のような魔物を討伐した冒険者ですな」


 一人の男が話し掛けてきた。

 相手は青いスーツを着た40代ぐらいの男性で普段は体を動かすことがないのかでっぷりとした腹が出ているせいで高価なスーツがパンパンに膨れていた。


「ええ、その通りですよ」


 既に会場中の注目を集めている。

 それと言うのも俺の服装が以前にも着用した白いスーツなのだが、他の人たちと比べれば着慣れていない感じがありありと出ている。明らかに場違いなため注目を集めていた。


 もっとも注目を集めている理由は隣にもある。

 俺の右隣には護衛としてアイラが張り付いており、紅いドレスは以前と違って子供を産んだせいか色気を増しており、若い男性貴族の注目を集めていた。

 そんな視線も気にせずアイラは周囲の警戒を行う。


 そして、左隣にはノエルがいる。このようなパーティーに初めて参加するノエルは当然のようにドレスを持っていなかったので大きく広がったスカートの白を基調としたドレスを用意させてもらった。広がったスカートが尻尾を覆い隠し、ヘアメイクによって獣耳を巧妙に隠していた。禁止されている訳ではないが、パーティーに獣人を連れて来ればいい顔をしない人物もいる。そういったトラブルを避ける為の処置だ。


「何かご用ですか?」

「随分とお若いのに素晴らしい力をお持ちだ。よろしけば我がオリヴィエルト子爵家に士官してみるというのはいかがでしょうか?」


 貴族家への士官。

 多くの冒険者が老後に困らされる現状を考えれば、貴族家への士官は非常に魅力的な話に聞こえ飛び付く冒険者は多い。貴族家に士官することによる仕事は傍での護衛が基本であり、それまでの魔物や盗賊を相手にした殺伐とした仕事に比べれば楽な方である。


 それに安泰である。貴族の方も簡単に切り捨てられないようになっており、理由もなく解雇するようなことがあれば貴族社会での信用を僅かにだが失うことに繋がり兼ねない。その僅かな信用が致命的な問題に発展する可能性もある。


 目の前にいる子爵は笑みを浮かべている。きっと自分の持つ権力に絶対の自信があるのだろう。とはいえ、子爵である。貴族階級の中では中間に位置するのでそこまで偉いと感じない。

 まあ、それ以前に俺が士官するという話自体があり得ない。


「お断りします」

「ほう」

「今回は縁があって手助けさせてもらいましたが、本来ならばメティス王国に属する冒険者です。故郷に家族もいますのでグレンヴァルガ帝国の貴族に仕えることはできませんよ」

「家族がいる……いっそのこと連れて来てもかまいませんよ」


 その後もアレコレと報酬を提示して勧誘してくるが、全てを断ると次第にイライラし始めていた。


「子爵であるこの私が直々に誘っているのだから仕えるべきだろう」

「けっこうです」

「冒険者如きが大人しく……」


 権力に任せて言う事を聞かせようとでも思ったのか?

 だが、その先を口にしようとした瞬間、パーティー会場にリオが姿を現した。


 あっという間に静かになるパーティー会場。それだけリオの存在は貴族たちに恐れられていた。


「皆、数日前は不埒者によって帝都が危機に晒されるところだった。だが、どんな危機でも帝都にいる多くの人たちが協力することによって乗り越えられることができると俺は信じている。今回は、俺の伝手を頼って乗り切ることができた。ただ、彼らは栄達を望んでいない。だから、国として勧誘することもなければ、個人の戦力として雇うことも皇帝として禁止する」


 ざわざわ、と騒ぎ出す貴族たち。

 オリヴィエルト子爵のように俺たちを雇おうと考えていた人々がそれだけいたという証である。

 だが、俺たちの事情を知っているリオからしてみれば枷にしかならないのは分かり切っている。なので、皇帝として先に手を打ってくれた。


「くっ……」


 目の前にいるオリヴィエルト子爵が歯噛みしている。

 リオの言葉によって全ての勧誘が封じられてしまったようなものだ。


 結局、誰もが近付けずにいる。


「これでよかったか?」


 そんな状況で近付いて来られるのは言い含めた張本人であるリオぐらいだ。

 皇妃であるカトレアさんを伴ったリオが近付いて来た。


「ああ、助かったよ」


 勧誘を断り続けるのも下策である。

 俺には、やはり貴族相手の会話など難しい。


「こっちとしてもどこかの貴族に肩入れされるのは困るからな」


 自由に動けない迷宮主の立場として俺たちには自由に動いて欲しい。

 それだけ今回も裏で糸を引いていた連中の事を危険視している。

 貴族家に士官することができれば将来は安泰になるが、その家に縛り続けられることになるので冒険者にとって最大の利点である『自由』が失われることになる。


「そっちは俺たちの方でどうにかする」

「今回の一件、やっぱり本当なら帝国の力だけでどうにかしたかった」


 リオは少しばかり悔しさを感じていた。

 本当の危機が差し迫った時には自分たちの力だけでは対処することができないと証明してしまったようなものだ。おかげで軍の士気が下がることになる。

 それに俺たちに頼ればどんな問題でも解決する事ができる。

 その考えが問題だ。


「少なくとも大抵の問題には対処できるよう力を付けさせるつもりだ。お前たちは例の迷宮主を探せ」

「とはいえ情報が少なすぎる。もっと、ゆっくり探すことにするよ」

「いいえ、そうでもありません」


 メリッサが会話に加わって来た。

 彼女は貴族との会話に慣れているので率先して情報を集めていた。


「東部の方で妙な事件が起こっているらしいです」

「東部、と言うとメンフィス王国か? あそこは女神の喪失によって国内が著しく荒れているからな」


 隣で話を聞いていたノエルが責任を感じて落ち込んでいた。


 ノエルの故郷であるメンフィス王国。

 その騒ぎには深く関わっているので奇妙な事件が起こっても仕方ないと思ってしまう。


 だが、メリッサはこちらの推測を否定する。


「メンフィス王国よりもさらに東にあるエストア神国で騒動が起こっているようです」


 エストア神国。

 メンフィス王国が崇める女神ティシュアとは別の神を崇める国。

 その国では農業が盛んに行われており、毎年のように豊作なのだが、今年は例年以上に豊作になってしまった。本来ならば収穫した作物の多くを廃棄しなければならないところだったが、近くにあるメンフィス王国が不安定な国内情勢のせいで不作だったために食糧不足に陥ってしまっており、大量に輸入することになった。


 それだけならば作物の異常で片付けられた。

 メリッサが集めた情報によればエステア神国の至る所で植物の異常成長が見受けられるらしい。


「奇妙な事件の裏に謎の迷宮主の影あり、です。もしかしたら何の関係もないかもしれませんが、調査してみる価値はあるかもしれません」

「そうだな」


 確証はない。

 それでも今のところ他の手掛かりもないので向かわない理由もない。


「こっちでも可能な限りの情報は集めてみるつもりだ。何かあったら連絡させてもらう」


 俺たちから離れて貴族たちの挨拶回りに行くリオ。

 本来なら皇帝であるリオの方へ行くべきなのだろうが、これまでの経緯もあって自分から近付いて行く貴族の方が少ない。


「少しよろしいでしょうか?」

「はい?」


 リオから離れてカトレアさんだけが戻って来た。

 そっと近付くと耳打ちする。


「彼女の事も気にしてあげて下さい」

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