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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第24章 大山激動
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第23話 カルテアの魔石―後―

 合流した直後、イリスが魔石に向かって駆け出す。


 今がどんな状況なのか?

 相手がどのような能力を持っているのか?


 少なくともこれまでに起こった事は視ていたことで理解しているため迷わずに駆け抜ける。


 魔石の方もゴーレムの内部からレーザーを発射し、目線の先に迸る。レーザーは放たれたのを視認した瞬間には相手に到達している。ただ、真っ直ぐに走っているだけのイリスには避けられない。

 そう思っていたが、イリスの振るった聖剣によってレーザーが地面に叩き付けられている。正確には、聖剣によって軌道が逸らされて地面へと進行方向を無理矢理変えられている。


「……!」


 魔石から動揺したような気配が伝わって来る。

 慌てて第二射、第三射と後退しながら続けて放つもののイリスは次々とレーザーを聖剣で反らして撃ち落としてしまう。


「あれは俺にも真似できそうにないな」


 冒険者としての経験という意味ではイリスが最も強い。

 レーザーが発射される瞬間、光が菱形の中央にある先端部分に集中して発射される。そして、ゴーレムという高い場所から発射しているせいで、下にいる人を攻撃する際には傾けなければならなくなる。

 その時の角度、そして自分との距離からタイミングを計る。


 何度も俺たちに向けられたレーザーを見ていたおかげで到達までの時間も分かっている。

 後はタイミングを合わせて聖剣を振るう。

 しかもアイラのように斬るのではなく、剣で逸らすことを目的に振るっているため最小限の力で済む。


「このまま斬らせてもらう」


 ゴーレムに肉迫したイリスが聖剣を振るう。

 あっという間に細切れにされたゴーレム。


 バラバラになって地面に転がるゴーレムのパーツだったが、ゆっくりと動いて寄り集まると切断面をくっ付けようとする。元々が魔法によって作られたゴーレムであるため元通りにするのも簡単だ。


 だが、寄り集まっても元の様に繋がることはない。


「無駄。斬った時に一緒に凍らせているから繋げることはできない」


 切断面は氷に覆われていた。

 これでは氷が邪魔して接合させることができない。

 ゴーレムを再生させるのと一から作成させるのとでは魔力の消費量が大きく違うため簡単に作り直すことはできない。しかも、カルテアが作り出したゴーレムは性能を重視しているため作り直せるほどの余裕はない。


 どうするべきか迷う。

 寝起きとも言える意識では判断力が乏しい。


 だが、そんなことよりも真っ先に逃げ出すべきだった。

 イリスの凍結能力は今でも生きている。切断面から侵食して来た氷がゴーレムの全身を覆ってしまった。

 カルテアの魔石も氷の中に閉じ込められた。


「お疲れ様。まさか、こんな方法で倒すなんて――」

「いいえ、まだ」

「――なに?」


 凍らせた胸の部分からピシピシという音が聞こえる。

 見れば亀裂が迸り、魔力が溢れ出していた。


 次の瞬間、氷ごとゴーレムの体が砕かれて魔石が飛び出してきた。

 凍らされたことによってゴーレムの内部に閉じ込められてしまった魔石は内部からレーザーでゴーレムを破壊すると脱出を図った。


 ゴーレムから飛び出した魔石が上空に浮かぶ。

 そのまま正面を下にいる俺たちへと向けるとレーザーを放って来る。


 ――ギュゥン!


 薙ぎ払うように放たれたレーザー。

 咄嗟に身を屈めて逃れようとする。


「離れないで下さい!」

「メリッサ?」


 天井に向けて両手を掲げたメリッサ。

 俺たちの頭上3メートルの位置まで迫ったところでレーザーが曲がって壁に叩き付けられる。


「学習しない魔物ですね」


 平原で戦った時も同じようにメリッサの空間魔法によって捻じ曲げられている。

 そのことをすっかり忘れていた魔石は同様の攻撃をしてしまった。


 呆れるメリッサの周囲に10個の光の球体が現れる。

 光の球体からレーザーに似た線が魔石に向かって迸る。


 1本のレーザーと10本のレーザー。

 攻撃の数が明らかに違う。


 後退しながらメリッサの放ったレーザーを回避すると自らもレーザーを撃ってメリッサの攻撃をやり過ごす。


 ――ガガガガガ!


 だが、回避されてもメリッサにはよかった。

 彼女の最大の目的は最初から魔石の向こうにある壁を砕くことにあった。


 レーザーに砕かれた壁が崩落する。落ちて来た瓦礫に巻き込まれないよう魔石が移動する。

 そんな動きに構わずメリッサが両手を広げて動かす。

 広げる動きに合わせてレーザーがあちこちへ広がって行く。


 崩落する空洞。


「脱出しますよ」


 メリッサに言われるまま空洞から脱出する。

 空を飛べないアイラとノエルを抱えて瓦礫を回避しながら飛ぶ。


 空洞から脱出して5人で並んで山の頂上に立つと崩落した岩に呑み込まれて行く空洞が見える。


「どうするつもりなんだ?」


 まだ魔石は生きている。

 それは、カルテアが移動を再開した事から間違いない。


「壁が崩落したことによって魔石の動きが著しく制限されました。火山のように見える場所ですから実際に火山へ変えてしまいましょう」

「……待て、何をするつもりだ?」


 俺の言葉に答えずにメリッサが魔法を使用する。

 イリスもそうだったが、二人とも怒っている。よほど俺が傷付けられたのが悔しいらしい。


「火・土混合属性魔法――溶岩封鎖(マグマロック)


 現れたのは岩石。ただし、炎を纏っており、ドロドロに溶けだしたマグマが岩石から溢れ出している。


 岩石が空洞の中へと落ちて行く。

 落ちた岩石が空洞を埋め尽くしていた瓦礫を吹き飛ばした。


 吹き飛ばされたことによって瓦礫の隙間から飛び出してくる魔石。頂上にいる俺たちの方へと向かって来るが、山頂に届く直前になって動きがピタッと止まってしまう。


「どういうことだ?」

「簡単です。アレも魔物には変わりなかったというだけの話です」


 魔石は魔物の体内に必ず存在する。

 ルールに反して自由に動き回ることができたように見えた。

 だが、実際のところは自らの体内で動き回っていただけの話。


「魔石はどのように頑張ったところで空洞から出ることは叶いません」


 空洞の中にいる魔石にできるのはレーザーを撃って攻撃することだけ。

 しかし、メリッサの展開した魔法陣によって逸らされてしまっている。


「このような場所から出ることができない相手など恐れる必要がありません」


 魔石の撃ったレーザーを押し返すメリッサのレーザー。

 レーザーを撃つ為に使用していた魔力を防御の為に使用したのか魔石はレーザーに貫かれることなく耐える。それでも、破壊されることなくても後ろへ押し返されている。


 後ろ――空洞の内部へ……


 ――ボチャン!


 既に空洞の底は溶岩封鎖(マグマロック)から溢れ出したマグマによって埋め尽くされている。離れた山頂にいるはずの俺たちにまで熱気が伝わって来るぐらいだ。イリスが空気を冷却してくれていなければ倒れていたかもしれない。


 そんな熱気も魔石には影響を与えない。

 ……影響を与えないからこそ上にいる俺たちにばかり敵意を向けていて下がどんな状態になっているのか気付くことができなかった。

 退路がないことに気付いていれば迎撃ではなく回避を選択したはずだ。


 全てを溶かすマグマから魔石が飛び出してくる。

 痛みはないのかもしれないが、自らの体が溶かされて行く状況には耐えられないはずだ。


「往生際が悪いですね」


 飛び出した魔石をマグマから出て来た腕が捕らえる。

 カルテアが何度も使っていた岩の腕(ロックハンド)のマグマ版――溶岩の腕(マグマハンド)だ。


 マグマの海に引き摺り込まれて行く魔石。


「これは火山だな……」


 先ほどまでの何もなかった空洞とは違う。

 そこは、メリッサの魔法によって火口へと変えられていた。


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