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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第1章 借金返済
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第5話 地下1階

 迷宮は、大昔からある場所だ。

 記録がある限りでも数千年前から存在していると言われている。

 そんな大昔から存在しているにもかかわらず、地上にある石で作られた洞穴のような入り口は朽ちることなくそこにある。


「さて、行くか」


 入り口のすぐ先には石造りの階段があり、それを下りていくと迷宮の1階となる。


「なるほど。これが洞窟フィールドっていうわけか」


 石造りの階段と土が固められた壁と天井を抜けた先は、地面が土へと変わり、薄らと光を放つ鉱石が壁や天井の至る所から突き出した場所へと様変わりしていた。噂話程度の知識だが、あれは迷宮の一部で壁から抜き取ることはできない、とのことだ。

 道幅も10メートルと広くなっており、そんな道が1階の入り口から四方へと広がるようになっていた。地図がなければ迷うところではあるが、簡略された地図であっても出口へと辿り着くだけなら問題ない。


 それよりも気になるのは、入り口のすぐ横の壁に張り付いた高さが3メートルほどある蒼い光を放つ水晶の柱のような物があった。


 何に使う物なのかと考えていると、突如水晶柱が強い光を放つ。


「くそっ、今回はツイてねぇな」

「まあまあ、素材は多く手に入ったんだからよしとしましょうや」

「そうだぜリーダー」


 光が収まると、いつの間にか6人の男たちが魔法陣の上に立っていた。


「ん、なんだボウズ?」


 リーダーと呼ばれた剣と盾を装備した男が俺から視線を向けられていることに気付いた。


「ああ、初心者か」

「はい。今日が初めての迷宮挑戦になります」

「大方、初めて転移結晶を使われるところを見て驚いていたってところか」

「転移結晶?」

「ああ、各階の入り口にはこうして転移結晶があってな。こいつに触ると好きな階層に一瞬で移動できるって代物なんだ」

「そうなんですか」


 これがあればわざわざ浅い階層を攻略しなくても深い階層まで一気に行くことができる。

 しかし、世の中そこまで甘くはなかった。


「残念だったな。こいつは自分が潜ったことのある階層までしか転移することができないんだ。俺たちなら今までに地下8階まで潜ったことがあったから、そこまで一瞬で転移することができる、って感じだな」

「教えてくれてありがとうございます」

「これぐらい、いいってことよ。新人に簡単に死なれちゃたまったもんじゃないからな」

「皆さんはパーティなんですか?」


 迷宮に限らず多くの冒険者が仲間と共にパーティを組んで依頼に取り組んでいる。

 戦闘に必要な人数、報酬の配分、バランスなどを考えてだいたい4~6人で組まれる。

 目の前に現れたパーティもリーダーに両手剣を装備した前衛、短剣を装備した斥候、弓矢を装備した弓士、ローブを着て杖を装備した魔法使い、背中に大きなリュックを背負ったサポーターといった構成だった。

 俺も将来的にはパーティを組んだ方がいいのだろうが、自分に何ができるのかも分かっていない状態ではパーティを組むのは難しかった。


「ああ、お前も先に進むなら必要だぞ」


 特に必要なのがサポートだ。

 荷物を持ち続けたまま戦闘などできるはずもなく、冒険者として素材を得て、持ち帰るのなら専門の仲間が必要になる。

 また、魔物の中には魔法を使わなければ倒せないのもいる。

 そういった対策に人数を揃える必要がある。


「皆さんはもう帰るんですか?」

「ああ、俺たちは平気なんだが一人が時間切れなんだ」


 サポーターの表情が少し優れなかった。


「時間切れ?」

「迷宮は長時間潜っていると魔力を消費するんだ。だから、あいつみたいに魔力が少ないと長時間潜っていられないんだ」


 つまり、魔力の少ない俺も長時間潜っていられない。


 その後、軽く挨拶をすると男たちのパーティと別れる。


「とりあえず2階へ進んでみるか」


 転移結晶を使えるようにする為にも2階にある転移結晶に触れる必要がある。


「しかし、誰もいないな」


 10分ほど地下1階を歩いているが、人どころか魔物にすら出くわさない。


「やっぱり地下1階は人気がないんだな」


 地下深くへ潜れば潜るほど強い魔物が現れる。逆に地下1階では大した魔物が現れることはない。つまり、魔物の素材を狙っている冒険者にとっては価値のない階層というわけだ。さらに地下1階で宝箱が出てくる可能性も極めて低い。


「ようやく、か……」


 さらに歩き続けて10分。

 目の前にようやくゴブリンが現れた。


「ギャッ!」


 ゴブリンも洞窟の何もない通路で俺の存在にようやく気付いたのか手に持っていた木の棍棒を振り回しながら近づいてくる。


「フッ」


 久しぶりの戦闘に息を吐いて気持ちを落ち着かせると、ゆっくりと(ゴブリンとしては走っているつもり)近づいてくるゴブリン目掛けて剣を振るう。

 次の瞬間、ゴブリンの首が切断され、頭部が地面に落ち、首をなくした胴体が崩れ落ちる。


「よわいな……」


 率直な感想を言うならそれしか言えなかった。

 村の近くで遭遇したゴブリンでさえもう少し強かった気がする。


「そういえば、迷宮は深く潜れば潜るほど魔物が強くなるんだよな」


 てっきり強い上位種の魔物が現れるのかとばかり思っていたが、どうやらそうではなく、同じゴブリンだったとしても地下2階で出てきたゴブリンは、今倒したゴブリンよりも強くなっている可能性がある。

 ただ、強化に関しては油断しなければ問題ないだろう。


 さて、倒したゴブリンについてだが……


「ゴブリンの場合、換金できるような素材って魔石と持っている武器ぐらいしかないんだよな」


 腰に差したベルトからナイフを取り出すとゴブリンの左胸に突き刺す。そのまま胸を切り開くように動かすと、ナイフで中を探りながら固い物を探していると体が小さいこともあってすぐに魔石が見つかった。


 そのままナイフで取り出すと緑色の小さな球体が現れる。

 これがどんな魔物でも持っている魔石だ。


 魔石は昔から様々な魔法道具(マジックアイテム)の動力源として使われている。アリスターの街中にもいくつかの魔法道具があり、メインストリートを夜でも明るく照らしてくれる街灯から調理に使われる竈を動かす為など……その範囲は多岐に渡る。

 ただ、ゴブリンの魔石が持つ力は弱く、冒険者ギルドなどで買い取ってくれるが、今戦った感触から銅貨5枚程度の金額になればいい方だろう。

 それでもないよりはマシだろうと小さいために荷物にもならないため、持ってきた鞄の中に詰める。


「あとは……」


 ゴブリンの持っている武器が売れることはあるが、倒したゴブリンが持っていた武器は木の棍棒……というよりも太めの幹をそのまま持っていたような代物である。

 これは、魔石と違って売れるのかどうかすら怪しいうえに荷物にもなる。


 武器の回収を諦めると再び歩き出す。


「もう、着いちまったよ」


 さらに歩き続けて10分。

 迷宮に入ってから30分と経たずに地下1階を踏破し、目の前には地下2階へと続く階段が姿を現していた。

 結局、戦闘も弱いゴブリンと1回しただけで、他の魔物と遭遇することもなかった。


「ま、慣れるのが目的だし、2階に行くか」


 2階に下りると、地下1階に辿り着いた時と同じような光景が広がっており、横には蒼い光を放つ転移結晶があった。

 とりあえず触れてみると地下1階の時とは違い、淡い光を放っていた。


「さて、ここからどうするかな?」


 このまま帰ったのでは、まだ時間的にも早く、戦闘も1回しかしていないため慣れたとは言えない。せっかく地図もあるからということで2階の探索へと進むことにする。


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