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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第4章 奴隷少女
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第10話 王都のギルド

 朝の早い時間の内に宿屋を出ると冒険者ギルドへと赴いていた。

 冒険者の多くが朝の早い時間帯に依頼を受けて夕方に帰って来る。それは、王都でも変わらないので人探しをするなら接触できる可能性の高い人の多い時間帯の方がいいだろうということで、この時間にやって来た。


 さすがに王都にある冒険者ギルドというだけあって建物は見慣れたアリスターの物よりも大きかった。


「うわっ……」


 冒険者ギルドの中にはアリスターとは比べ物にならないほどの人で溢れ返っている。

 受付の数も多いが、受付カウンターの前には長い列ができていた。


「凄い人の数ね……」

「冒険者ギルドに来たことはある?」

「王都のギルドに来たのは初めてね。レミルスの冒険者ギルドは何度か行ったことがあるけど、こことは比べ物にならないわ」


 二人で長い行列に並びながら自分たちの番が来るのを待つ。

 十分以上待ってようやく俺たちの番がやってきた。


「冒険者ギルドへようこそ。本日は、どのようなご用件でしょうか?」


 受付嬢が明るい口調で用件を尋ねてくる。


「オルガという冒険者が王都のギルドにいるらしいのですが、その人に会うことはできますか?」


 オルガ。それがシルビアのお父さんがパーティを組んでいた冒険者の名前だ。

 他にラザロとポップスという人物がいるらしいが、オルガさんがパーティのリーダーを務めているらしい。


 らしい、というのはシルビアもお父さんからパーティメンバーについて紹介されたわけではなく、お父さんの語る冒険譚にそういった名前が出てきたとのことだ。


 一応、同業者の冒険者であることを示す為に冒険者カードも提出する。


 だが、受付嬢は俺の冒険者カードを確認することなく首を横に振っていた。


「残念ですが、ギルドでは冒険者が相手の場合であっても登録している冒険者の個人情報を渡すような行為はしていません」

「ちょっと話を聞くために接触したいだけなんですけど、ダメですかね?」

「申し訳ありません」


 受付嬢に断られるとカウンターの前から退ける。受付嬢は、すぐに俺たちの後ろに並んでいた冒険者の対応をしていた。

 おそらく他の受付嬢に変えても反応は同じだろう。


 ギルドには、他人には知られたくない冒険者の情報がたくさんある。そんなギルドが簡単な情報とはいえ、冒険者の個人情報を渡すような真似をすれば信用を一気に失ってしまう。これが王都で有名な冒険者ならば事情を聞くなど対応がもう少し違ったのだろうが、あいにくとこちらは昨日王都に来たばかりの新人冒険者だ。


「それで、どうするの?」


 お父さんの仲間に話を聞く為に冒険者ギルドへ来たというのに仲間が見つからない。


 たしかにギルドは個人情報を渡してくれなかったが、だったら相手を変えればいいだけの話だ。


「次は冒険者に聞く。ギルドは規則で教えることを禁じられているかもしれないけど、冒険者は誰にも縛られていないからな」


 幸い話を聞くべき冒険者はギルドの中にたくさんいる。

 どこのギルドでも同じなのか酒場が併設されているため酔っていて口が軽そうな冒険者もいる。


「でも、そう簡単に教えてくれる?」

「問題ない。魔法を使って聞き出すから」

「え?」


 よく分かっていないシルビアを連れて酒場の隅の方で酒を1人で飲んでいる冒険者の傍へと近付く。


 別に迷宮魔法みたいな特別な魔法を使うわけじゃない。

 条件さえ満たせば誰でも使える魔法を使うだけだ。


「なんだ、にいちゃん?」


 酔っていてもさすがは冒険者なのか俺の気配に気付いた男の冒険者が近付く俺の方へと視線を向ける。


 男の前にそっと大銀貨を置く。


「聞きたいことがある」

「答えられる内容なら答えてやろう」

「え~」


 何か言いたそうな目でシルビアが見てくるが、これが一番確実な方法だ。

 たいていの人間は金に弱い。一獲千金を狙っているような冒険者ならば、それも顕著なので酒代を奢るだけでも口が軽くなる。さすがに冒険者として活動していくうえで不利になるような情報を売り渡せば相手から恨まれてしまうが、話しても問題ない情報なのかどうかは自己判断になる。


 渡せる金さえ持っていればという条件を満たせば誰でも使える魔法だ。

 金の力は偉大だね。


「オルガって冒険者を探している。パーティメンバーの誰かでもいいけど」

「オルガぁ~?」


 酔った冒険者が虚ろな目でギルド内を見渡す。


 やがて目当ての人物を見つけたのか依頼票が貼ってある掲示板の前を指差す。


「オルガの奴ならあそこにいるぞ」


 掲示板の前には大剣を背負った俺よりも大きな男と、剣と盾を持った男、胸当てとローブという軽装に弓矢を装備した30代の男たちが立っていた。


「あの大剣を持った男がオルガだ」

「ありがとう」


 謝礼としてもう1枚大銀貨を置いてその場を後にする。

 1人目の聞き込みで分かったおかげで、予想以上に早く見つけることができた。




 ☆ ☆ ☆




 掲示板の前で依頼を吟味していたオルガさんたちに話しかけ、少し話をしたいということを告げると行きつけの食堂へと連れられた。既に全員が朝食を終えていたが、体が資本の冒険者なのでもう1食頼むことにし、その食事代を奢ることで情報料としてもらった。


「なんだ、お嬢ちゃんはラルドの奴の娘なのか。奴とはそれなりに長く組んでいるけど、奴に娘がいるなんて聞いたことなかったな」


 ガハガハ笑いながらオルガさんがシルビアのことをジロジロと眺めていた。

 その隣では、装備を外した戦士のようなラザロさんと弓使いのポップスさんが困ったような目でリーダーであるオルガさんのことを見ていた。


「すいませんね。どうも知り合いの娘に会えたのが嬉しいみたいなんです」


 俺たちの親と同世代にもかかわらず低い姿勢で対応してくるポップスさん。

 最初は普通に話してくれていたのだが、俺の自己紹介を終えたところで敬語になりだした。敬語はいいです、と言ったのだが一向に止める気配はない。どうやら自分たちよりも冒険者ランクの高い俺に対して委縮してしまっているらしい。彼らは長年冒険者を続けたこともあってCランクにまで到達することはできたが、それ以上――ギルドマスターに認められず、Bランクに到達することができなかった。

 そのためギルドマスターに認められた実力のある俺が羨ましいのだろう。

 とはいえ、俺の実力なんて迷宮主になって得られたものばかりなんだよな。


「で、何が聞きたい?」


 意外な相手に出会えて笑っていたオルガさんが真剣な眼差しになる。


「わたしは一昨日に王都へ来てから知ったんですけど、父が犯罪者として疑われているそうですね。そのことについて知っていることがあったら教えてほしいんです」

「やっぱり、その件についてか……」


 娘が尋ねて来たということもあって、知りたいことが父親の件であることまでは予想していたらしい。


 やはり、時々とはいえパーティを組んでいた相手が犯罪者として疑われていれば気にもなってしまい、情報を集めていたのだろう。


「まず、お前さんたちはどこまで事情を知っている。奴隷になっているところを見るにある程度の事情は知っているはずだ」


 オルガさんの視線がシルビアの首輪へと向けられていた。

 奴隷はその身分を明確にする為に首輪などの拘束具を隠してはならないと決められている。そのためシルビアの首を見れば奴隷であることは簡単に分かる。奴隷であるシルビアが俺と一緒に行動していることから俺が主人であると予想したのだろう。


「父が貴族を殺し、盗みを働いたと聞いています」

「俺も似たようなものです」

「なるほど。本当に噂程度の情報しか持っていないわけか」


 オルガさんが水を一気に飲み干す。


「事の始まりは10日前の話だ。ギルドで奴とバッタリ会った俺たちは仕事に誘ったんだが、『大口の仕事が入った』って言って断られた。その次の日には、殺された貴族の私兵がやって来て、奴の似顔絵を見せて『こいつで間違いないか?』って聞かれた。こっちはただの冒険者だ。貴族相手に嘘なんて吐くわけにはいかないから正直に名前なんかを教えたさ」

「殺されたのは貴族だったのですか?」

「正確には前当主だな」


 それなら捜索に熱が入るのも頷ける。


 殺した張本人は捕まえられず、代わりに娘であるシルビアを捕まえた。

 貴族の中には妙にプライドの高い者がいるから身内を殺されたことから躍起になっているのだろう。


「しかも、逃げる時に運悪く館にいた私兵に前当主が持っていたはずの宝石を持っている姿を目撃されている。そこから似顔絵が出回って、あいつが犯人っていうことになっているのさ」

「そんな……父は、そんなことをするような人じゃ……」

「お前さんがラルドの奴をどう評価していたのか知らないが、奴になら貴族の館に忍び込むなんて簡単だからな。状況証拠も揃っているし、未だに逃げ続けていることから本当に犯人なのかもしれないぞ」


 その言葉を受けてシルビアの表情が青くなる。

 オルガさんには確信に至る何かがあるようだった。


「何か根拠があるんですか?」

「根拠ってほどのものじゃないが、奴には1つだけ特別なスキルがあるんだよ」


 スキル、か。

 シルビアを見ると覚えがないのか首を傾げていた。家族にも内緒にしていたスキル。


「奴が持っていたのは『壁抜け』っていうスキルだ」


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