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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第31話 隠された出口

「とりあえず地下30階まで到達した訳だけど……」


 荒野では様々な魔物が出て来た。

 暴れ牛(ギャングカウ)刃牙虎(サーベルタイガー)茶鹿(ブラウンディアー)鋼犀(アイアンライノス)


 暴れ牛(ギャングカウ)は、荒野を狂ったように走り回る魔物で、見つけた獲物に突進して仕留めると肉を喰い散らかしてしまう。


 刃牙虎(サーベルタイガー)も荒野を猛スピードで一直線に走り、鋭く長い牙で串刺しにする。


 茶鹿(ブラウンディアー)は、地面に擬態する能力を持ち、土属性魔法を使って荒野の固い地面を味方に付けることができる魔物だ。


 鋼犀(アイアンライノス)は、鈍重ではあるもののパワーと耐久力があるため討伐が難しく、一度敵として認識されてしまうとどこまでも追い掛けてくるというしつこさがある。


 他にも色々な魔物が出てきたが、途中にいた魔物は全て斬り、追いかけられても全速力で置いて来た。

 結果――地下21階から29階までの攻略に掛かった時間は3時間もない。


「転移魔法陣がどこにも見つからないな」


 これまでと同様に転移魔法陣を通って移動したところ見渡す限りの荒野が広がっていた。


 この場所が荒野フィールドであるのだから荒野が広がっているのは問題ない。

 問題なのは、どこにも次の階層へ行く為に必要な転移魔法陣が見つからない、という事。


 改めて【地図(マップ)】を確認する。

 これまで最短時間で次の階層まで移動することができたのは、転移魔法陣がどこにあるのか事前に分かっていたから。

 しかし、地下30階の【地図(マップ)】を見ても次の階層へ繋がっている転移魔法陣がどこにも表示されていない。


 念の為に細かく表示させてみる。

 普段は上から見下ろした俯瞰図のように表示されている【地図(マップ)】だが、細かく調整させれば立体的に表示させる事も可能だし、周囲の地形や造形物も正確に表示させられる。


 肉眼でも見える範囲と確認。

 結果――【地図(マップ)】が間違っていない事が分かった。


「どうする? 地下30階まで実際に来れば何かが分かると思ったんだけど」


 アイラは本当にお手上げらしく困っていた。

 俺も本気で困っていた。


「地下31階があるのは確実だ」


 既に地下31階の【地図(マップ)】は手に入れている。


「でも、本当に何もないよ」

「だからこそ迷宮を訪れた人は地下30階が最下層だと思い込んだのよね」


 何もないから最下層。

 迷宮について知らなければ、そう思うのかもしれない。


 しかし、迷宮について詳しく知っている者ならそうではない事を知っている。

 迷宮の最下層には迷宮核(ダンジョンコア)が安置されている。それを手にすることによって新たな迷宮主が登録されることになっている。


 だから、迷宮核がない以上は地下30階が最下層ではない。

 あるべき物がない。


「転移魔法陣がないとか?」

「そうだったとしても次の階層に繋がる別の何かは必ずあるはずなんだ」


 迷宮を運営するうえでのルール。

 迷宮が吸収した魔力は最奥にある迷宮核へと集積される。そのため最奥まで何らかの手段により繋がっており、その出入口を塞ぐなどとして使用不可にすることは禁止されている、というルールがある。

 そのルールに照らし合わせれば何かしらの出入口があるはずだ。


「こういう時にイリスさんがいてくれれば……」


 メリッサがボソッと呟いた。

 色々な知識を有していて、いつも助けてくれるメリッサだが、冒険における着眼点などで優れているのか最も経験のあるイリスだ。


 こういう迷宮で困った時にはイリスが色々と気付いてくれる。

 そんな声が聞かれてしまったのか……


『そっちに喚んで』

「イリス!?」


 屋敷で寝ているはずの人物から念話が届いた。


『私の状態は私が一番理解している。自分のやるべき事をしたらすぐに戻る』


 声の調子はあまりいいとは言えない。

 しかし、やらなければならないという使命感を感じられる。


「分かった。その代わり用が終わったらすぐに戻れよ」

『それでいい』


 【召喚(サモン)】でイリスを喚び出す。

 目の前に青髪の少女が現れた。


「お前、あれだけ消耗した状態なのに来たのか?」


 イリスは自らの傷を癒す為に限界以上の魔力を引き出した。

 具体的に言うと残っていた魔力だけでは足りなかったので生命力まで利用して不足していた魔力を補った。その結果、意識を保っているのすら厳しい状態へとなってしまい、屋敷へ戻ると意識を失って寝込んでしまったと聞いていた。

 今朝も状態を確認したが、とても迷宮探索に参加できる状態ではなかった。


「大丈夫。それに状況も分かっている。自分の目で確認したかっただけだから少ししたら戻る」


 まだふらつく頭を押さえながら地下30階へ来た時に利用した転移魔法陣へと向かう。


 転移魔法陣を見つめながら考える。

 それも十数秒で終わった。


「分かった」

「何が分かったんだ?」

「私よりもメリッサの方が正確に記憶していると思う」

「私、ですか?」


 メリッサに転移魔法陣を確認するように言うイリス。

 ただし、ある部分だけを注視するように指示を出した。


「ああ、そういうことですか」


 メリッサにも謎が解けたらしい。

 転移魔法陣に魔力を注いで起動させる。


 メリッサの姿が消える。

 数秒後、彼女は何食わぬ顔で戻って来た。


「地下29階に戻っていた訳じゃないんだよな」

「はい。きちんと地下31階へ行って来ました」


 無事に地下31階へ行けたと言うメリッサ。

 今の光景をそのまま考慮するなら……


「この転移魔法陣は地下30階の入口なだけではなく出口も兼ねていたのです」


 転移魔法陣を起動させる際には、魔力を注ぐだけでなく「下へ行く」という意思が必要になる。

 逆に戻る場合には「上へ行く」という意思が必要になる。


 地下30階へ来た時に利用した転移魔法陣だから地下29階にしか繋がっていない。

 そんな常識に囚われてしまっていた。


「良く気付いたな」

「似たような(トラップ)のある遺跡に挑んだ事もあるから。こういうのに気付くには経験が必要になる」


 それから迷宮代行者(ダンジョンエージェント)としての知識がイリスに活路を与えてくれた。


 メリッサも転移魔法陣の魔法陣を正確に記憶しており、これまでの転移魔法陣にはなかった不要な紋様を見つけた。その紋様は2ヶ所を繋ぐだけでなく、3ヶ所を繋ぐ為に必要な紋様との事だ。


「しかし、随分とリスクのある(トラップ)だな」


 知らなければ延々と地下30階を探索させる事ができる。

 けれども(トラップ)について知られてしまっていると地下30階をスルーされてしまう。


「迷宮について詳しく知らない者なら地下30階を最下層だと勘違いしてもおかしくない(トラップ)。意地悪な迷宮主(ダンジョンマスター)が思い付いてそのまま実装したのかもしれない」

「面倒な事をしてくれたものだ」

「もっとも次の階層に自信があったからなのかもしれません」

「どういう事だ?」

「見れば分かります」


 【地図(マップ)】で地形などは分かっているが、【地図(マップ)】で分かるのは地形や罠の有無まで。

 どのような場所なのかは自分の目で光景を見てみるまで分からない。


「とりあえず移動するか」


 メリッサに言われるまま地下31階へ移動する。


「は?」


 これまでの洞窟や岩山、荒野といった自然的な場所とは異なる景色に思わず声が漏れてしまう。


 そこでは、グツグツと煮えたぎる溶けた鉄が流れており、上部には鉄鉱石が採れる鉱山があった。

 【地図(マップ)】を確認した時点で地下31階から37階までが階層を繋げた巨大な構造になっている事は知っていた。


「まさか鉱山と製鉄所……いや、鍛冶場だとは思わなかったな」


 魔剣を精製する為の施設があった。


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