表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
571/1458

第28話 魔剣の作り方

 地面に散らばった19本の魔剣を回収する。

 最初に冒険者が倒したスケルトン以外は全て俺たちの手で倒してしまったので魔剣の所有権も俺たちにある。


 残念ながらスケルトンそのものには魔石以上の価値ある物はない。

 骨は放置でいいだろう。


「で、それについてはどうする?」


 スケルトンを倒した冒険者に尋ねる。

 俺が確認しているのはスケルトンの手から落ちた魔剣。

 倒した者に所有権があるので倒した彼らの物になるはずだ。


「もちろん持って帰るさ」


 手にするだけでスケルトンをあそこまで強化することができる魔剣。

 自分で使ってもいいし、他人に売っても大金が手に入る。


 もっとも……持ち帰ることができれば、の話だ。


「がっ……!」


 金色の魔剣を手にした途端、男が口の端から涎を垂らして全身を痙攣させた。

 明らかに異常な状況。


「おい……」


 仲間の一人が近付いて呼び掛ける。


「ひっ……!」


 次の瞬間、金色の魔剣が仲間に向かって振り下ろされる。

 仲間は突然の事態に全く反応できていない。


 ――キン!


 金色の魔剣を受け止める。


「やっぱりこういう事になったか」


 魔剣を押して男を吹き飛ばす。


「その魔剣は厄介なぐらい強力だ。けど、その代わりに魔剣の放つ精神汚染は他の魔剣よりも強い。あんた程度の魔力や精神力だと耐えられなかった訳だ」

「がぁ!!」


 レベルが引き上げられると同時に凶暴性も引き上げられる。

 そうなれば後は自我を失くして目に付く物を片っ端から斬って行くだけの存在へと成り果てる。


 とりあえず一番近くにいた人間である仲間を斬る。

 それを受け止められたことで怒った男がさらに振るう。


「無駄だ。レベルが上がってステータスも強化されているけど、怒りに任せた攻撃にやられるほど弱くはない」


 剣をひたすら真っ直ぐに振り下ろしているだけの剣。

 普通の冒険者が相手だったとしても反応すらできない速度なため問題ないのだが残念ながら俺は追う事ができる。


「ぐぅ」

「お前は仲間とはいえ魔剣を手にして人を襲ったな」


 その時点で男は罪を犯した魔剣使い。

 アイラの父親と同じ境遇だ。


 魔剣を握った腕が地面に落ちる。


 魔剣を持っている腕を斬り飛ばす。

 それ以外に有効な手立てが思い付かない。


 気を失った男が倒れている。

 そして、倒れた男を介抱している仲間。

 一時は襲われてしまったが、これまで苦楽を共にして来た仲間である事には違いなく、魔剣に支配されていたという事情もある。

 しかし、腕からの出血が酷く、このままでは死に至る危険があった。


「これを使え」

「これは?」

「その程度の傷なら癒せる回復薬(ポーション)だ」


 男たちの前に薬液の入った瓶を置く。

 さすがに失った腕を取り戻せるほどの回復力はないものの出血を止めるぐらいの効力はある代物だ。


「どうして俺たちにそんな施しをくれるんだ?」

「色々事情があって強化されたスケルトンに対してベテラン冒険者がどれくらい戦えるのか見させてもらったけど、俺がさっさと全てのスケルトンを片付ければ誰も犠牲にならずに済んだ戦いだ。ちょっとした詫びと代金だな」

「代金?」


 分からない男の為に握られたままの魔剣を指す。


「あの魔剣の所有権を今でも主張するっていうならそれでも構わない。なにせ、あの魔剣はすぐに精神汚染されたそいつだけで倒したものじゃなく仲間と一緒に討伐して手に入れた物だ。お前らにだって所有権を主張する権利がある」

「それは……」


 主張を躊躇する男たち。

 まあ、少し触った程度で精神を汚染されてしまったのだ。たとえ売却先に伝手があったとしてもそこまで持って行く方法がない。


「まあ、回復薬(ポーション)だけっていうのも安すぎる」


 男たちの傍に金貨を10枚置く。


「こ、こんなに……!」

「それだけの価値がこの魔剣にはある」


 魔力に変換したところ魔剣1本で金貨50枚以上の価値がある事が分かった。

 魔剣を20本手に入れられる事になるので金貨1000枚分。

 金貨10枚ぐらいなら大した痛手ではない。


「譲ってくれないか?」

「……分かった」


 彼らも無事に持ち帰られるとは思っていない。ここで幾許かでもいいから金に換えてしまった方がいいと判断したのだろう。

 気絶してしまっている本人の了承は得られていないが、これで金色の魔剣が20本も手に入った。


 すぐに【魔力変換】したところ金貨1000枚分ちょっとの魔力が手に入った。魔剣を握りしめた状態のまま【魔力変換】してしまったので男の腕まで魔力になってしまっていた。


「まあ、問題ないか」


 人間一人の腕一本だけでは微々たるものでしかない。


「行くぞ」


 気付けば眷属たちが近くに寄って来ていた。

 ここからは一気に迷宮を攻略する。


「行く、って……あんた迷宮へ行くつもりか?」


 恐る恐るといった様子で一人の冒険者が尋ねて来る。


「そうだが」

「さっきの見ただろ。魔剣を手にして迷宮の上層に出現するスケルトンでさえ強化されている。下の方にいる魔物が魔剣を手にしていたらもっと危険な場所になっている――この迷宮は、もうお終いなんだよ」


 最弱クラスの魔物でさえ全滅を覚悟しなければならない。

 魔剣が迷宮の魔物に対してどれだけ行き渡っているのかは分からないが、簡単に稼げるような場所ではなくなってしまったのは間違いない。

 強制依頼が失敗に終わってもパレントを後にする冒険者が出てくるだろう。


「それでも、依頼を引き受けたこっちは迷宮へ行く必要があるんだよ」


 何か言いたそうな冒険者を置いて迷宮へ向かう。



 ☆ ☆ ☆



 迷宮の攻略する最短距離を進む。

 【地図】があれば迷う事もないので簡単な物だ。


 ただ、途中でどうしても魔物と遭遇してしまう。戦闘をすれば時間を取られてしまうこともあるが、足を止める事なく奥へと進む。


「グギャ」


 今も3体のゴブリンがいたので斬り捨てた。

 既に50対近くの魔物を討伐している。


「それにしても魔剣を持った魔物は入口まで来たスケルトン以外には他にいないわね」


 迷宮の中を走りながらアイラが呟いた。

 シルビアがいない状況なのでアイラが先頭を走り斥候役を務めていた。


「あのスケルトンだけが特別だったのか?」

「いえ、そういう訳ではないと思います」


 俺の意見を隣を走るメリッサが否定する。


「どういう事だ?」

「魔剣の作り方です」


 メリッサには迷宮核(ダンジョンコア)が詳しく言わなかった方法が分かっているらしい。


「いえ――私も迷宮核から言われて初めて気付きましたから」

「それで、どうやって生み出しているんだ?」

偽核(フェイクコア)です」


 巨大魔物を生み出す為に用いられていた迷宮核(ダンジョンコア)の代用品とも言える偽核(フェイクコア)


「偽核には巨大魔物を生み出していた時の方法から分かるように周囲の土地から魔力を取り込んで魔物を生み出す事が可能です。ですが、その方法で生み出せるのは魔物に限らないはずです」


 迷宮の魔力を取り込んで偽核から魔剣を生み出した。

 ただ、気になるのは魔力を取り込むことで色々な物を生み出せるからといって魔剣が生まれてくる訳ではないという事だ。


「いえ、その辺りもある程度は 操作(コントロール)が可能なのでしょう?」

「そうなの?」


 万が一の場合を警戒して最後尾を走るノエルが首を傾げている。


「はい。巨大魔物を生み出していた時は大量の魔力を溜め込んだうえで強力な魔物を1体精製していました。巨大魔物に比べれば弱くても大量に生産する事だってできたはずです」


 大量の魔力から強力な魔物を1体作り出す。

 魔物を大量に生産する。


 ある程度の方向性を持たせる事はできる、という事か。


「そして、魔物ではなく財宝を生み出させる事も可能なはずです」


 元々、この迷宮は魔剣が生まれやすい性質の迷宮だった。

 その魔力を大量に取り込んで魔剣が量産される体制を整えた。


『僕も同じような意見だね』


 迷宮核も否定しなかった。


「ま、答えは迷宮の最下層まで行けば分かるだろ」


 既に主や干渉者のいなくなった迷宮。

 攻略はそれほど難しくない。


「さっさとボスも攻略しよう」


 目の前には迷宮の地下10階の最奥にある部屋を隔てる巨大な扉。

 既に4分の1を攻略済みだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ