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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第27話 魔剣の軍勢

「おいおい、あいつら帰って来ていないってよ」

「マジかよ。潜ったのが昨日の夜になる前だったから一晩潜っていたんだよな」

「それでも帰って来ないっていう事は本当に穴にでも落ちたんじゃないか?」


 テントの外から聞こえる声に目が覚める。

 外は既に明るい。


「おい、全員起きろ!」


 同じテントの中で寝ていた3人を起こす。

 ちょっと仮眠するだけのつもりだけだったのに熟睡してしまった。


「……おはようございます」


 疲れた様子のメリッサが身だしなみを整えて体を起こす。


「もう、朝?」


 アイラはまだ寝ていたいようだ。


「……」


 未だに眠り続けたままのノエル。


「ダメだ。こりゃ」


 普段なら規則正しく起床する事ができる。

 たとえ戦闘を終えた後であったとしてもだ。


 理由は……


「まさかシルビアがいなくなったぐらいでここまでダメになるなんて」


 なんだかんだと言って最も付き合いの長いシルビア。

 彼女がいないだけで生活リズムが崩れ出してしまった。


 テント内で着替えて外で食事を用意する。用意すると言ってもシルビアが用意しておいてくれた作り置きを取り出すだけだ。


「さて、この後は迷宮へ行く訳だけど大丈夫だな」

「地下38階まで行くだけでしょ。出てくる魔物もあたしたちにしてみれば余裕だから大丈夫でしょ」


 アイラが余裕を持って言う。

 昨日の敗戦を引き摺っていなくてよかった。


「幸い、こっちには【地図】がある。最短距離を突っ切って攻略を優先させればいいだろう」


 改めて【地図】を視界の隅に表示させて迷宮の攻略に想いを馳せる。

 しかし、地下1階の現在の様子を確認した瞬間に中断した。


「なんだ……?」


 物凄い数の魔物が地上を目指して走っていた。

 いや、魔物の前に一人の人間が走っているところを見るに女を追っている。


 それでも奇妙な話だ。普通の魔物は自分が生まれた階層からは出ないようになっている。たまに暴走して階層を飛び出してしまう魔物がいるが、それは稀に現れる単体での話で、群れと呼べるほどの大量の魔物が同時に出てくるのはあり得ない。


 何かが起こっている。

 それは間違いないのだが、【地図】だけでは詳細は分からない。


「行くぞ」


 全員が食器を片付けて立ち上がる。

 迷宮の入口に近付けば騒ぎを聞き付けた冒険者が入口を囲むようにして集まっていた。


 迷宮の奥からドタドタといった騒がしい足音が聞こえて来ていた。


「一体なんだっていうんだ?」

「まさか迷宮から魔物が出てくるのか?」


 訝し気に迷宮を見る人たち。

 しばらくすると一人の女が出て来た。


「た、助けておくれ!」

「どうした?」

「スケルトンが出たんだよ!」


 スケルトン――人骨から生み出された兵士。

 アンデッド系の魔物の中では最弱の魔物だ。


「スケルトン? そんな魔物が出たぐらいで何をビビっているんだよ」

「あたしだってただのスケルトンならビビらないさ。ただ……」


 女性が迷宮を振り返る。

 そこから20体のスケルトンが姿を現す。


「その程度か。なら、問題ないな」


 スケルトンの数を確認した一人の冒険者が剣を抜く。

 この場には新人も含めれば50人近い冒険者が待機している。

 全員で協力すればスケルトンの20体ぐらいは簡単に討伐できる。


「数は問題じゃないよ。奴らが使っている武器を見てみな」

「武器? ……なっ!?」


 スケルトンの使用する武器を確認した冒険者が驚きから声を荒げる。

 彼らの手には金色の魔剣が握られている。


「アレ、全員に行き渡っているのか」


 一番奥にいたスケルトンが持っていた金色の魔剣を天に掲げる。

 その合図を確認した他のスケルトンが魔剣を構える。

 こちらからは同じスケルトンにしか見えないが、スケルトンの中には上下関係がしっかりとあり、先に指示を出したように見えるスケルトンが部隊の隊長を務めるらしい。


 そして、出された指示はおそらく『各々好きに襲え』。

 バラバラに動き始めたスケルトンが近くにいた人たちに襲い掛かり始める。


「けっ、魔剣を手にしていようがスケルトンはスケルトンだぜ」


 斧を持った冒険者がスケルトンを圧し潰すべく上から叩き付ける。

 振り下ろされた斧はスケルトンの掲げた剣の上を滑り、男の体勢を不安定なものにする。


「ぐはっ!」


 無防備になった胸に突き刺さる剣。


 男は決して弱い訳ではなかったし、魔剣を侮っていた訳ではなかった。

 しかし、相手がスケルトンであるという事から無意識の内に手加減をしてしまったのだろう。

 相手がスケルトンのような弱い魔物であれば全力で相手をする必要はない。迷宮のような休憩が難しい場所でどんな魔物にも全力で戦っているようではすぐに体力が底をついてしまう。だからスケルトンを倒す為に必要な最低限の力だけで攻撃を行って探索に体力に残す。

 その無意識の手加減がスケルトンを生かす事になった。


 口から血を吐く男から剣を抜いて声は出ていないが笑ったように骨だけの体を動かすスケルトン。

 すると他のスケルトンも同じように動かして笑う。


「こ、こいつら……!」


 スケルトンが笑う光景を見ていた冒険者の顔に怒りが滲み出てくる。

 最弱の魔物に笑い者にされるというのは魔物と戦う事を仕事にしている者にとっては屈辱的だ。


「こいつら無茶苦茶強いんだ。あたしの仲間も一斉に襲い掛かられたところを全員が殺されちまった」

「どうやら覚悟が必要な相手みたいだな」

「一人で倒そうとするんじゃなくて複数人で確実に仕留めろ」


 武器を構えた冒険者が複数で一体のスケルトンを相手にできるよう動く。

 スケルトン側も冒険者が数の利を活かして戦おうとしている事に気付いたらしく迷宮の入口から離れないように動いている。スケルトンたちはお互いにカバーして自分たちの後ろへ行かれないようにしている。


「よし!」

「次は……ぎゃあ!」


 3人で1体のスケルトンを相手にしていた冒険者のグループ。彼らの内の一人が目の前にいたスケルトンの四肢を斬って歓喜していたところに横合いから伸びて来た別のスケルトンの魔剣に斬られていた。

 斬られた冒険者は、一緒に戦っていた冒険者に回収された。

 どうやら死んだ訳ではないが、これ以上の戦闘継続は難しそうだ。


 他のスケルトンとも一進一退の戦いが繰り広げられている。


「これがリュゼの狙いの一つかな?」


 量産した魔剣を効率よく運用するのなら信頼できる者に与えて使わせた方がいい。

 リュゼのように一人の人間が複数の魔剣を使おうとしても状況や相手に会わせて使い分けるだけで終わってしまう。


 しかし、こうして安価な魔力で精製ができるスケルトンに魔剣を与えることでベテラン冒険者でも苦戦させられてしまう軍隊を作り出す。

 これは脅威になる。


「そろそろいいのではないですか?」

「そうだな」


 メリッサの質問に答える。


 ベテラン冒険者たちが戦っている姿を俺たちは離れた場所から見ていた。

 魔剣を手にしただけでスケルトンの脅威がどこまで強化されるのか把握する為だ。【鑑定】のおかげで魔剣によるレベルアップが50であり、スケルトンのレベルが10から60になった事は分かっていた。


 それだけでは脅威の判定にはならない。

 一般的な冒険者たちで苦戦させられてしまうのか?


 結果は――悲惨なものだ。

 このままだと全滅はしないだろうが、無視できないレベルの被害が出ることになる。


 ――ガシャン!


 スケルトンの体を蹴ってバラバラにする。

 あちこちに骨が散らばっている。


 スケルトンが魔剣を振ろうとしている。スケルトンの厄介なところは既に死んでいるため骨がバラバラに散らばった程度では体を動かして攻撃しようとしてくるところだ。


「【風槌(エアハンマー)】」


 なので、固めた風を叩き付けてスケルトンの骨を粉々にする。

 さすがにスケルトンも粉々にされては動くことができなくなる。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして」


 助けた形になった冒険者がお礼を言って来る。

 こっちとしては報酬があるからスケルトンを倒したに過ぎない。


「3人とも相手はスケルトンなんだから遠慮せずに本体の方を粉々にしろ。魔剣は絶対に回収しろよ」


 魔物を倒した場合、魔物が所持していた武器については討伐した冒険者に所有権が移る。

 今回の場合で言えば金色の魔剣の所有権が俺たちに移る。


「残り18本全てをもらおうか」

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