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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第26話 リュゼ戦の反省会

 地上へ戻る。

 既に異様なほどの騒ぎになっていた。


「本当だ! 迷宮の地面が崩落していたんだ」

「俺も見たぞ」

「本当の事だよ」


 二人の男の冒険者と一人の女性冒険者が地上で待機していた人たちに注意を喚起していた。


 内容は地下1階に開いた大穴。

 俺たちも戻って来るついでに上から見させてもらったが、道が完全に崩落しており落下してしまう可能性があったため危険な状態になっていた。

 実際に見た冒険者が注意するのも分かる。


「おいおい、そんな嘘を言うなよ」

「迷宮の階層が繋がるなんて話は聞いたことがないぞ」


 実際に見た訳ではない冒険者たちは迷宮に開いた大穴の存在を信じていなかった。

 彼らが注意しているのは壊れるはずのない物が壊れてしまったという内容。

 常識を知っている者なら信じるはずがない。


「大方、迷宮へ入らせない為の罠だろ」


 人は自分の信じたい物だけを信じる。


「チッ、だったら迷宮へ行けばいい。そして、穴に落ちるんだな」

「ハハッ、本当に穴があったんならな」


 笑った後、迷宮へと向かって行く。

 洞窟の中は薄暗い。注意していれば大穴にも気付くだろうが、注意を全く信じていない人たちは落ちてしまう可能性がある。


 しかし、こちらもそこまで構うつもりはない。


「おう、お前ら……随分と暗い顔をしているな」

「ええ」


 地上へ戻った俺たちをレドさんが迎えてくれた。

 兵士たちも裏切り者に等しいゲイリーが現れた事で慌ただしいが、アイラと最も親しい兵士という事でレドさんが事情を聞く為に近付いて来た。


「どこまで行った?」

「地下2階です」

「地下2階!? お前ら、あれだけ大口を叩いていたのにそれしか進めなかったのかよ」


 まあ、恥を掻いている事には違いない。

 短時間しか迷宮に潜っていないとはいえ地下2階までしか進む事ができなかった。


「……大丈夫だったのか?」


 レドさんは純粋に心配してくれている。

 俺たちのランクが偽物などではない事を理解しており、地下2階までしか進んでいないとは思えないほど疲労している事も分かっている。

 何かがあった。


 しかし、そんな事を理解できない冒険者もいる。


「へっ、どうせランクも何らかの詐欺をして手に入れた物だぜ」


 さっき魔剣と戦うところを見せたはずなのに既に信じていない者までいる。


「この……」

「ああ、いいですよ」


 嘲笑する冒険者を怒ろうとしていたレドさんを宥める。

 そのまま周囲を無視して離れた場所で野営の準備を進める。


「こんな物か」


 夕食は温め直したスープとパンに肉を挟んだ物。

 シルビアが作り置きしておいてくれた物に手を加えただけだ。


「なんだかいつもと変わらないはずのメニューなのに質素に感じられるな」

「それだけシルビアさんに頼っていたという事ですね」


 今は屋敷で待機している彼女に感謝しながら食事を進める。


『へへっ……』


 シルビアもこちらの様子は同調して確認している。


「それじゃあ、反省会を始めよう」


 リュゼに逃げられてしまったが、間違いなく俺たちの方が負けていた。


「正体不明の迷宮主と迷宮眷属か」


 少なくとも二人以上の眷属がいる事は確定。

 そして、どちらもこちらの眷属よりも強い。


「理想としては、こっちの眷属で向こうの眷属を一人倒せるようになる事」

「で、主である俺が迷宮主の相手をする」


 迷宮主と迷宮眷属の関係を考えれば少なくとも迷宮主は同じ迷宮主で対処しなければならないだろう。


「おそらく、これまで巨大魔物を生み出していた人と同じ人物でしょう」

「だろうな」


 迷宮の力を使って生み出された巨大魔物。

 そして、迷宮の力に干渉して作られた魔剣。


 どちらも迷宮主に関係した人物でなければ不可能だ。


「まず間違いなく再び接触する事になるだろう」


 その時に備えて対策する必要がある。


「一番簡単な方法は各々のレベルを上げる事だ」


 これには全員が頷く。

 眷属のレベルもそうだが、主である俺のレベルを上げてステータスが上昇すれば眷属のステータスも上昇する。

 今後は、レベルアップを念頭に置いて行動する必要がある。


「後は武器だな」


 最後に使用した絶剣。

 あれは性能だけでも魔剣を上回っており、非常に厄介な特性を備えている。


迷宮核(ダンジョンコア)、こっちも絶剣を手にする事は可能か?」

『残念だけど、こっちには絶剣の情報がないから魔力をいくら溜め込んでもむりだろうね』


 一人だった頃に迷宮が生み出せる財宝については一通り目を通している。

 少なくとも『剣』の中では神剣が最上品であるのは間違いない。


『ま、方法が全くない訳じゃないけどね』

「それは?」

『この迷宮で生み出された魔剣だよ』


 どんな方法を用いたのか分からないが、リュゼは迷宮の力を用いて魔剣を量産する事ができていた。


『魔剣は、それ自体が特殊な力とエネルギーを秘めた武器だよ。やり方次第では膨大なエネルギーを秘めた聖剣以上の剣を生み出すことができるかもしれない。彼女だって巨大魔物を生み出した時と同じように……ああ、そういう事か』


 何かに納得した様子の迷宮核。


「何があった?」

『魔剣を量産した方法について考えがある』

「本当か?」

『単純に巨大魔物を生み出した時と同じ方法だよ』


 巨大魔物を生み出した方法?

 そう言われても答えに辿り着けなかった。


『とにかく明日になったら迷宮探索を再開させよう。そして、最下層まで辿り着けられれば答えも自然と分かるはずだよ。彼女だって急な逃走に物を回収するほどの余裕があったとは思えない』


 だから魔剣を量産させる為に必要な物も置きっ放しにしている。

 それを回収する事ができれば、こちらにも魔剣を越える物を生み出せるように可能性が得られる。


 ――迷宮の最下層まで到達しろ。


 それは迷宮の攻略と同意義だ。


「なあ、ここの迷宮ってどんな感じなんだ?」

「え、地図があるんだから分かっているでしょ」


 パンを頬張りながらアイラが答える。

 俺たちの中ではアイラの方が迷宮の情報に詳しい。

 それは、地図で分かっている情報ではなく、一般に知れ渡っている情報という意味だ。


「そうだな。迷宮の地下10階までは洞窟フィールドが続いている。そこから先は岩山を舞台にしたフィールドと荒野だ。どちらも資源を得るには向いていないせいで出現する魔物を狩って得られた素材を売る冒険者が多い」


 中には高額で取引される魔物もおり生活には困らない。

 ただ、洞窟フィールドに比べて魔物が一気に強くなってしまうので洞窟フィールドに慣れた新人冒険者だと失敗してしまう可能性が高く、年に何人かの犠牲者を出してしまう。

 アイラの父親も迷宮内の特定の場所にのみ出現する魔物を相手にしていて稼いでいたらしい。


 それがアイラから得られた情報だった。


「気になるのはお父さんから聞いていた迷宮は地下30階までしかないっていう話だったのよね」

「それは間違いだろう」


 最下層まで到達していたのなら迷宮主になっていた可能性が高い。

 ところが、今の状況を考えれば迷宮主がいる迷宮には思えない。

 おそらく、地下30階に最下層だと思わせる何かがある。


「もしくは何も見つけられなかったから最下層だと判断した可能性があります」


 ここで言う『見つけられなかった物』は次の階層へ続く階段だ。

 迷宮の構造的に階層と階層を繋ぐ物がない、というのはあり得ないのだが、そんな事を知らない一般人なら最下層だと判断しても仕方ない。


「とにかくギルドマスターとも異常を排除すると約束したんだから最下層へ向かおう。そして、そこで得られた物で強くなる」


 今回こそ無事でいられたが次も無事でいられる保証はない。

 相手の迷宮主と遭遇した時に備えて強くなっておく必要がある。


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― 新着の感想 ―
[一言] んーよく分かりませんね。 一度ただの眷属にもやられて敵対することも分かっているのに強くなろうとする処かただダラダラ過ごすだけ! 自分処か子供もいるのに守ろうと思わないのかな? ヒロインはとも…
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