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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第24話 レベルダウン

 迷宮の1階を駆け抜けて地下2階へ到達する。


「どっちへ行くの?」


 先頭を走るアイラが尋ねて来る。

 地下2階は下りてすぐの場所が3方向へ分かれていた。


「左」


 簡潔に方向だけを言う。

 アイラも緊急事態である事は分かっているので真っ直ぐに向かう。


「……ねぇ、いつまで走っていればいいの?」


 走り続けるノエルが不安そうに尋ねて来る。

 後ろから二本の魔剣を手に追いかけてくる相手がいるのでは不安になってしまうのも仕方ない。


「さあ?」

「ちょ……」


 本当にいつまで走ればいいのか分からない。

 しかし、タイムリミットは確実に存在する。


「少なくとも地下5階まで走るような事態にはなりませんよ」


 メリッサは、タイムリミットは近いと予想する。

 しかし、こちらの逃走のリミットが先に訪れてしまった。


「静かになりましたね」


 さっきまで壁を壊す音が断続的に聞こえていた。

 それが数秒前からピタリと止まった。


「奴はどこに行った?」


 【迷宮操作:地図(マップ)】を使用してまで迷宮の地図を手に入れたというのにリュゼの位置は表示されない。

 地下1階では背後から聞こえる壁を壊す音から追って来ている事を確認していた。

 その音が聞こえなくなった。


「もう、逃げないでよ」


 急にリュゼが俺たちの前に現れた。

 先頭を走るアイラが急いで足を止める。


 リュゼの左手を見てみれば黄色い魔剣が握られていた。

 【転移】の魔剣だ。【迷宮魔法:跳躍(ジャンプ)】だと見える範囲にしか移動することができないので曲道などがあって遠くまで見渡すことができない洞窟内で使用するには不向きだったため俺たちは使用を避けていた。

 ところが、【転移】の魔剣は見えていない場所にも一瞬で移動することができるらしく急に現れることができた。


 姿を現した瞬間に間髪入れず迷宮操作を使用する。

 地面や天井から生えて来た柱がリュゼに襲い掛かる。

 破壊不可能なオブジェクトは衝突するだけでダメージになる。


 柱による攻撃が回避されてしまう。


「チッ、まだレベルは上昇したままか」


 いくつも柱を生み出して動きを止める。

 回避されてしまっているが時間稼ぎにはなっている。


「明らかに足止めが目的だね。一体、何を企んでいるのかな?」


 時間稼ぎをしている事に気付かれてしまった。


「教える訳がないだろ」


 岩壁を洞窟いっぱいに生み出す。

 リュゼと俺たちの間に岩壁が立ちはだかってお互いの姿が見えなくなる。


 岩壁が斬り裂かれる。


「一体何を考えて……水?」


 岩壁を斬り裂いたリュゼは、俺たちの前に小環が浮かんでいて内側から水を吐き出しているのを見た。ノエルの武器である錫杖に付いている小環だ。

 6つの小環から吐き出された水は濁流となってリュゼを押し流す。


「実戦で使っているところを初めて見たけど使えるみたいだな」

「ううん。大量の水を吐き出せるけど、実際に使うとなると貯める数十秒の時間が必要になる」


 あまり実戦では使えないらしい。

 だが、岩壁で足止めしている間にノエルの準備は整った。


 ノエルの使う錫杖に付いた小環には、使用者の魔力を受けて魔法を纏うことができるという効果がある。錫杖を使用する者が炎属性の魔法が得意ならば炎を纏って飛ばすことができるようになる。

 これを利用してノエルは自分の属性ではなく、スキルを浸透させることにした。

 つまり【天候操作(ウェザーコントロール)】の影響を受けた小環。


 普段から海蛇と模擬戦をしていたノエルは海蛇が巻き起こした嵐を【天候操作(ウェザーコントロール)】で吸収していた。そのため嵐によって発生した大規模な濁流を自由自在に喚び出すことができる。


 このまま嵐が起こった時のように迷宮の奥まで押し流すことができれば……


「いい考えではあったんだけどね」


 流れる水の向こうからリュゼの声が聞こえる。

 まさか、この大量の水の中を泳いで来たのか?


「この魔剣の事を忘れていたらダメだよ」


 リュゼの手に茶色い魔剣が握られており、正面に掲げている。

 茶色い魔剣の1メートル先にある空間で押し出されたように水が左右へと流されている。


「あれは……」


 茶色い魔剣は迷宮から発掘されたもののギルドマスターが事前に魔剣に備えていたおかげで誰の手に渡る事もなくギルドへ運ばれた魔剣。

 茶色い魔剣については使われる可能性を完全に排除してしまっていた。


 【迷宮魔法:鑑定】を使用して効果を確認する。


「クソッ……」


 相性の悪い魔剣を持っていた。

 どんな魔剣だったのか忘れてしまった訳ではなく、誰も手にしていなかった魔剣だったため効果を知らなかった。


 【反発】の魔剣。

 魔剣を中心に近付こうとする物を押し離してしまう。

 その代償に何かへ近付かなければならない衝動に駆られる。


「この魔剣を持っていれば濁流も怖くはないよ」


 魔剣の所有者も守られる対象らしく水を押して近付いて来る。


「……コレだけはやりたくなかったんだけどな」


 迷宮に対してスキルを使用する。


「【迷宮操作:崩落(コラプス)】」


 迷宮の天井を崩す。

 地下1階に大きな穴が空いてしまうことになるが、今はリュゼを足止めする方が優先だ。


「次から次に色々とやってくれるね」


 金色の魔剣を振るえば崩落して振って来た岩を全て斬ってしまっている。

 岩の崩落を逃れたタイミングを狙って斬り掛かる。


「アナタたちみたいに強い人たちと戦えるのは楽しかったけど、アタシも用事が済んだならそろそろ帰らないといけないの。だから、もう終わりにしよう」

「いや、タイムリミットが訪れたのはお前の方だ」

「何を言って――」


 ガクン!

 それまで凄まじい速度で動き回っていたリュゼの体が急に落ちる。


「あ、あれ……?」


 リュゼ自身も困惑して体の動かし方が分からなくなっている。


 トン、と軽く後ろへ跳ぶ。

 先ほどまでのレベルなら軽く跳んだだけでも反対側の岩壁まで移動できる力だったのだが、今の状態では10メートル後ろへ跳んだだけで終わる。


 その程度の距離はあっという間に詰められる。


 剣を上から叩き落とす。

 リュゼが金色の魔剣で受け止めるものの受け止め切れずに後ろへ飛ばされてしまう。


「どうして?」

「それが魔剣のデメリットだ」

「そんな事は分かっている!」


 レベルを上昇してくれる魔剣のデメリット。

 長時間使用し続けてしまうと上昇させた分のレベルだけ今度はレベルが下がってしまう。200から100上昇させた事で300にまでなっていたリュゼのレベルは100に下がっていた。


「アタシが言っているのはタイムリミットが来るのが早過ぎる事だよ!」


 リュゼの予想では数十分は大丈夫なはずだった。

 ところが、金色の魔剣を使用してから10分程度でタイムリミットが訪れてしまっている。明らかに速過ぎる。


「こっちには【空間魔法】まで使える魔法使いがいるんでね。『空間』に干渉する魔法は使い方次第では『時間』にまで干渉できるらしい」


 もっとも時間を移動するような真似はできない。

 今の状況でメリッサがした事と言えばタイムリミットのある武器に干渉して時間を加速させたぐらいだ。

 もっとも【空間魔法】にのみ集中してもらう必要があったため他の戦闘は俺たち3人で全て行われなければならなかった。


 逃げ回っていたことでデメリットが現れるタイムリミットがようやく訪れてくれた。


「お前には色々と聞きたい事があるんだ」

「聞きたい事?」


 首を傾げるリュゼに剣を突き付ける。

 レベルが本来の状態から半分にまで下がってしまったリュゼでは俺たちの攻撃から逃れることができない。

 こちらの要望を聞くしか彼女には選択肢がなかった。


「それで、何が聞きたいの?」

「迷宮眷属なのにどうやって迷宮に干渉した?」


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