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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第10話 魔剣使いの結末

 うつ伏せになったまま氷の中に閉じ込められたホプキンス。

 だが、閉じ込めていた氷に罅が入り、内側から粉々に砕かれる。


「こ、この野郎……!」


 無理に内側から氷を砕いたせいで全身がズタズタになっている。

 それでも立ち上がれるだけのタフさをホプキンスは魔剣を手にしたことで得ていた。

 と、目を閉じて意識を集中させると筋肉が盛り上がって傷口を塞いでしまった。


「さすがは魔剣だ。凄まじい力だぜ」


 魔剣の先がアイラへと向けられる。


「テメェらをぶっ潰す」

「……そんなにあたしたちに虚仮にされた事が気に入らないの?」

「当然だ。女に馬鹿にされたままとあっちゃあ部下に示しがつかない。テメェらを倒せるだけの武器を求めて迷宮へ潜ってみたが、運良く魔剣を手に入れることができたぜ」


 何がホプキンスをそこまで駆り立てるのか分からないが、俺たちを倒せるだけの武器を求めて迷宮へ潜ったらしい。

 だが、すぐに魔剣を手に入れることができたのは運が良すぎる。


「あたしたちを倒すのが目的なら他の人たちを殺す必要なんてないじゃない」

「あぁ? 俺の邪魔をしたんだから当然の報いだぜ」


 本当に気にしていないらしく嗤っている。


「魔剣を持った時の高揚感。それに不思議なスキル――テメェの親父が次々と人を襲って行ったっていうのも頷けるぜ」


 その言葉に全員の視線がムッとなる。

 もちろん、その中にはマルセラさんも含まれていた。

 魔剣に支配されて高揚しながら人を襲って行ったのは事実だが、身内や知り合いの男性の事をそのように言われて平然としていられるはずがない。


 ――カチャ。


 小さな金属音が響き渡る。


「テメェら全員をぶっ殺してやるぜ」

「もう興味がないわ」

「あん?」


 アイラがホプキンスに背を向ける。


「どういうつもりだ?」

「あんたは、あたしの父さんと同じように魔剣を手にしてから自分の欲望のままに剣を振るって来た。最初や過程が父さんと同じだって言うなら結末もまた同じであるべきよね」

「……何を言っている?」


 怪訝そうに眉を顰めるホプキンス。

 次の瞬間、ホプキンスの胴体が上と下に分かれ、ズレた上半身が地面に落ちる。


「たまたま街にいた高ランクの冒険者によって討伐されなさい」



 ☆ ☆ ☆



「――以上が魔剣を入手したホプキンスを討伐するまでの流れよ」


 ホプキンスを討伐した後、報告をする為に冒険者ギルドを訪れていた。


「随分と簡単に討伐してくれたな」


 報告している相手はギルドマスター。

 パレントで昔から前衛として活躍していた冒険者で、その功績を称えられて前ギルドマスターから後継になるよう言われてギルドマスターになった経歴を持つ。戦闘力だけが自慢の人物なので、事務能力に関しては乏しいのだが、元高ランク冒険者だっただけに冒険者からの信頼は厚い。

 そのため冒険者だったアイラの父親とも親しかったらしく、彼が魔剣に支配された時には率先して指揮を執っていた。唯一、残されたアイラの事を気にしてはいたが、冒険者の中にも多くの被害者が出ており、彼らの事を思えば指揮を執る人物として親身になる訳にはいかなかった。


 俺たちの報告を聞いて鍛えられた肉体で頭を抱えている。


「まず、迷宮前でギルドの職員二人が魔剣に斬られたせいで重傷だ。次に街の門の前で報告を受けた兵士の内、3人が重傷、4人が軽傷――死者が一人出てしまっている」


 想像以上の被害に言葉を失くしてしまった。


「さらに街中だけでも目の前にいた人々を次々と斬り殺して行っている。対象にある共通点がない事から本当に目に付く人物を次々と殺して行ったのだと判断した」


 実際、俺たちへの復讐を目標にしていた。

 被害者たちについては、本当に目標を達成するうえで邪魔になるから、という簡単な理由でしかないのだろう。


「ホプキンスを止める為に数人を向かわせたところで意味がない。確実に止められるだけの戦力を調えている間にお前たちが討伐してしまった」

「具体的な人数は?」

「最低でも50人。実際、強制依頼を出したおかげで必要な人数をすぐに集める事には成功した」


 冒険者の中にはピンからキリまでいる。

 果たして集めた50人だけで魔剣使いの討伐が可能だったのか?


「お前ら、何者だ?」


 このように注目されてしまうため魔剣使いの討伐は避けたかった。

 しかし、あの状況でマルセラさんを助けないという選択はあり得ない。


「冒険者の素性を探るのはギルドマスターと言えどマナー違反ですよ」


 冒険者の中には自分の持っているスキルを他人には知られたくない者。過去にどんな事情を抱えていても冒険者として登録することができる事から過去を探られたくない者がいる。

 そのため暗黙の了解として素性を探らない事になっている。


「悪いが、依頼を斡旋する側としてお前らの持っている力は無視できない」

「では、依頼を斡旋してくれなくて結構です」


 冒険者ギルドは、その街を拠点として登録している冒険者の素性やスキルなどといった情報を持っており、探索系のスキルを持っている冒険者へは採取や探索能力が必要とされる依頼を優先的に斡旋するようにしている。

 そういった観点から冒険者のスキルを把握しておくことは必要だった。


 ただし、俺たちが普段から依頼を斡旋してくれているアリスターの冒険者ギルドのギルドマスターは俺が迷宮主である事を知っている。アリスターへ帰れば依頼を斡旋してもらえるようになるし、契約を交わしているおかげで漏れる心配もない。


「ま、待ってくれ……!」


 立ち去ろうとするとギルドマスターが慌てて立ち上がる。


「何か?」


 俺たちがホプキンスの件で報告しているのは、あくまでも冒険者としての善意からであり義務など存在しない。

 適当に終えて帰っても問題ないはずだ。


「この街にはBランクの冒険者が3人いた」


 近くに迷宮があるぐらいで危険な魔物の領域がある訳でもないので、戦力としてはそれぐらいで十分だと考えられていた。


「だが、先ほどの騒ぎで一人が死亡した」


 慢心していたところもあってホプキンスに潰されてしまったらしい。

 ホプキンスと対峙した時もDランクである事を散々馬鹿にしており、相手の怒りを買ってしまったみたいだ。


「現在、魔剣使いホプキンス討伐の為に集められた戦力は解散されている。そこで強制依頼とは別に通常依頼として迷宮に魔剣が残されていないかの調査依頼が出されることになった」


 この依頼にはギルドだけでなく街の領主も噛んでいるらしく破格の報酬が出されることになった。


「その依頼を俺たちにも引き受けて欲しい、と?」


 俺の言葉にギルドマスターが頷く。


「これは街の依頼の為にも絶対に必要な事だ。受け入れて欲しい」


 街の安全を担っているギルドとしては、これ以上の被害が出ないようにする為にも魔剣について確認しない訳にはいかない。


 ただし、人数を多く送ればいいという訳でもない。

 実力の乏しいDランク冒険者でも魔剣を手に入れるだけでBランク冒険者を簡単に倒せるだけの実力が手に入るようになる。

 もしも魔剣が大量にあった場合には手が付けられない状態になってしまう。


「もちろん報酬も出す」


 俺たちに依頼を引き受けて欲しい以上、強制依頼ではなく通常依頼として出されているはずだ。

 当然、安くはない。


「――却下ですね」

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