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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第6話 消えた秘薬

 4人の持っている秘薬の状態を確認する。


 まずはノエル。まだメリッサからもらって数週間しか経っておらず、まだ子供が欲しいとは思っていないみたいなのでノエルが持っている瓶には薬液が残されたままだった。


 次にイリス。彼女は俺以外では自分だけが使える【迷宮操作】が冒険において必要な物だという事を理解している。そのため護衛として俺から離れる訳には行かないため妊娠する訳にはいかない。


 メリッサも使用した可能性があったが、使ってしまった彼女に配慮した結果、未使用のままなのだろう。


 最後に残されたシルビア。

 命令に対して左手で右手の手首を掴んで押さえることで必死に抵抗している。だが、そんな苦労を嘲笑ってしまうのが【絶対命令権】だ。シルビアが微かに手から力を抜いた瞬間に収納リングから瓶が出て来てしまう。


「あ、ああ――!」


 ガックリと肩を落とすシルビア。

 ここまで物的証拠が出て来てしまっては隠し事などできるはずがない。


「……で、お前はどうして使ってしまったんだ?」

「それは――」


 空っぽになった瓶を持つシルビア。

 わざわざ【絶対命令権】まで使用したのだから別の瓶という可能性もない。間違いなく『妊娠促進薬』が使われている。


「いつ、使った?」


 シルビアの体を見る。

 服の上からでは妊娠していると分かるほどの変化はない。少なくともまだ初期段階といったところだろう。


 それに――この数カ月を思い返せばシルビアの順番が少なかった気がする。


「……2カ月前です」

「シエラが生まれてすぐだろ」


 呆れるしかなかった。

 シエラの育児で全員が冒険以上に疲れ果てていた。赤ん坊を育てるのがここまで大変だとは考えていなかったためだ。

 だから、こんな状況で誰かが妊娠するとは考えていなかった。


「何か事情があるんじゃないの?」


 育児の大変さを一番実感しているアイラが傍に寄って尋ねる。


「……母さんからのプレッシャーが凄かったんです」

「オリビアさんの?」

「シエラの事を本当の孫のように可愛がる母ですけど、やっぱり自分と血の繋がった孫を抱いてみたいらしくシエラが生まれてから1週間も経つ頃にはわたしへ孫を催促するようになってきたんです」


 元々、俺との関係を知られた段階で孫には期待していた。

 そこへシエラを抱いてしまったことで孫を期待する気持ちが強くなってしまったらしい。


「後は……お義母様です」

「母さん?」

「はい。お義母様は自分が女の子を育てた時の経験からアイラに色々とアドバイスをしていました」


 アイラが困った時には母が色々と相談に乗っていた。

 実の母を亡くしているアイラにとって育児で一番相談し易かったのは義母だったからだ。

 3人の子供を産み育てた母は相談相手には適任だ。


「その姿が凄く羨ましかったみたいで……わたしにも女の子を産むようそれとなく要求してくるようになったんです。それで、その子を育てるうえでわたしに色々とアドバイスをしたい、と……」

「それは、さすがに……」


 頑張るのは構わないが、さすがに子供の性別までどうにかする事は……


『なあ、産まれて来る子供の性別を操作するような魔法道具はあるか?』

『さすがにそこまでの物は……』


 迷宮核に尋ねてみるものの芳しい結果は得られなかった。

 だが、なかった訳ではない。


『研究自体はされていたんだけどね』

『成功しなかったのか?』

『うん。「生命を操作するなど何事だ!」って声が大きくて研究費用の方がなかなかおりなかったせいで研究が進まなかったんだ』


 そうしている内に大災害が起きてしまって必要な技術が失われてしまった。

 いや、もしかしたら海底遺跡で合成魔物の研究がこっそりと続けられていたように発表されていないだけでどこかに完成された物があるかもしれない。


 ……ま、ここまで育ってしまっては既に命は誕生していると言っていい。大昔にいた人じゃないけど、命を冒涜するような真似はしたくない。自然になるがままで問題ないだろう。


『必要としている人はけっこういたんだけどね』


 特に貴族などの跡取りを必要としている場所に求められていた。

 昔も今と変わらず貴族家の当主には、よほどの事情がなければ男児がなる場合が多い。当然、跡取りを産む事になる正妻には男児が求められる。女性が生涯の間に産める子供の人数は限られているからそういった道具が求められる理由も分かる。


 そう言えば帝国の皇帝になったリオの正妻であるカトレアさんも家臣から男の子を求められていたのを見た事がある。


「事情は分かった」


 オリビアさんのプレッシャーに負けて使ってしまった。

 シエラが生まれた事を喜んでいたせいで、そういった家庭内の雰囲気に気付けなかった俺にも責任がある。


「……それで、本当なんだろうな?」

「はい。アイラと違って最初の内から病院へ通っていましたから」


 既に検査で妊娠している事は確定済みらしい。

 これまで言えずにいたのは黙って使用してしまったため怒られるのを恐れたから、との事だ。

 ただ、アイラと違って妊娠している自覚はあったので子供の事を考えてこっそりと病院へは通っていた。


「そんな事で怒ったりはしない」


 既に使用してしまったものは仕方ない。

 現実を素直に受け入れるだけだ。


「ありがとうございます」


 そっと自分のお腹に手を当てるシルビア。

 そういう反応をされると男としては困ってしまう。


「で、3人が知っていた理由は?」


 アイラは知らなかったみたいだが、メリッサとイリス、それにノエルはシルビアが薬を使ってしまった事を知っていたみたいだ。


「さすがにわたしも相談なしに使ったりはしません」


 順番を譲ってもらうことになるのでアイラ以外には許可を得ていた。

 ……そんな許可を得るぐらいなら俺にも許可を得て欲しかった。


「オリビアさんからのプレッシャーが凄い事は私たちも知っていましたから」

「さすがにアレは可哀想」

「唯一の解決策を選択するしかないかなって……」


 オリビアさんの要望を叶える。

 それが最も簡単な解決策なのは間違いない。


「3人とも納得しているならいいさ」


 問題は話を通していなかったアイラだ。


「あたし、聞いていないんだけど……」

「いや、アイラが一番大変そうだったから来年にはさらに大変な事になるって教えて変なストレスを与える訳にはいかなくて――」

「単純に羨ましかっただけでしょ」

「う……」


 シルビアが色々と言い訳を述べていたけど、結局はシルビア自身が自分の子供を持っているアイラの事を羨ましく思ってしまったのが原因だ。


「という訳でシエラは1歳を迎える前に二人の弟妹(きょうだい)を迎える事になるみたい」

「よかったじゃないシエラちゃん」

「う?」


 意味が分かっていないシエラ。

 どうやら来年には賑やかになりそうだ。


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