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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第22章 魔剣生産
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第4話 姦しいギルド

 午前中に墓参りを済ませると冒険者ギルドを訪れる。

 冒険者としてパレントにどのような依頼があるのか気になったからだ。


 冒険者ギルドの中は閑散としていた。一般的な冒険者は朝の内に依頼を引き受けて夕方に帰って来る。そのため今の時間は忙しい時間を乗り切った後で職員もまったりとした時間を過ごしていた。もちろん、そういう事情を分かっていたからこの時間を狙って訪れていた。

 もっとも冒険者が誰もいない訳ではなく、10人ほどの冒険者がギルドの中にいた。情報収集の為に資料を読んでいる者はいい。問題は早い時間からギルドに併設された酒場で酒を飲んでいる連中だ。子供の教育によろしくないので他の場所で飲んで欲しいところなのだが、飲む場所は個人の自由なので文句を言う訳にも行かない。


「ようこそ冒険者ギルドへ」


 入口正面にあるカウンターに座った受付嬢が迎え入れてくれる。


 受付嬢は5人。

 対応してくれたのは中央にいた一人だが、他の受付嬢も手が空いている訳ではなく朝の内に依頼を受けた冒険者の書類の整理で忙しそうにしていた。


 全員が若い――俺たちと同年齢ぐらいの女性だ。

 受付嬢は、ギルドにとって顔とも言える仕事だ。そのため男の多い冒険者に気分よく依頼を引き受けてもらう為に若い女性が任される事が多い。

 たまたまだが、俺たちの担当をしてくれるのは明るい栗色の髪を持つ女性だ。


「初めての方ですよね」


 パレントまで走って移動する為に服装は冒険者仕様にしている。

 冒険者の姿に見慣れている受付嬢なら俺たちの姿を一目見れば冒険者だと分かる。


「あたしは数年振りだけど、他の皆は初めて来たわ」


 故郷ということで対応はアイラに任せる。


「では、冒険者カードをお預かりします」


 冒険者カードを渡せば現在拠点にしている街やランクなどが分かるようになっている。そうして相手に相応しい依頼や情報を渡す。


「え、Aランク……!」


 冒険者カードを確認した受付嬢の手が止まる。

 他の受付嬢も冒険者カードを確認した受付嬢が思わず口にしてしまった高ランクに興味を示してしまった。


「しかも全員……! あ、一人違った」


 最後にノエルの分を確認して胸を撫で下ろしていた。

 ただし、その反応にノエルが少し落ち込んでいた。


「わたしだって時間さえあれば依頼をこなしてランクを上げられたんだから」


 ノエルのランクは残念ながら未だにDだ。

 実力はあるのだが、やはりいくつもの依頼をこなさなければランクアップに必要な実績を得る事ができない。


「えっと……Aランク冒険者が5人もいるパーティですか」

「メンバーの構成に関して何か問題がありますか?」

「いいえ! 何も……!」


 どこか緊張した様子の受付嬢。

 たしかに数多くある冒険者パーティの中でも最高ランクと言ってもいいAランクが5人いるパーティが珍しいパーティである事には違いない。


「すみません。この子は半年前に入ったばかりの新人でして……」


 堪らず隣にいた受付嬢が割り込んでくる。


「いえ、別に何かあった訳じゃないからいいわよ」

「ありがとうございます。では、こちらで確認させていただきます」


 冒険者カードを預かる受付嬢。

 奥にある専用の機械に通せば詳しい情報が出て来るようになる。


「え……!」


 詳しい情報を確認していた受付嬢が驚いている。


「もしかしてアイラ……!?」


 何事かと思っていると冒険者カードを机の上に置きながら先頭にいたアイラに尋ねていた。


「そうだけど……」


 当然、そんな反応をされたアイラは困っていた。


「私よ、私。子供の頃はよく一緒に遊んだマルセラよ!」

「マルセラ! 凄い久しぶりね」


 どうやら受付嬢とアイラは知り合い……それも幼馴染らしい。


「え、本当にアイラ!?」

「帰って来たの!?」


 さらに他の二人までアイラの前へ寄って来る。

 残った一人は少し年上の人で、仕方ないわねといった感じで肩を竦めている。


「もしかして……イザベラとミュア?」

「正解!」


 集まって来た二人もアイラの幼馴染だった。


「3人ともギルドで働いていたんだ」

「まあね。ギルドの受付嬢と言えば美人でないとなれない事で有名だからね。こうしていれば突然やって来た高ランクの冒険者……と言うよりも甲斐性のありそうな男と知り合う機会も多いだろうし」

「実際、Aランクの冒険者を逸早く見る事ができた訳だし」


 そう言って3人の視線が俺へ向けられる。

 が、すぐに興味が失われてしまった。


「ただね。パーティメンバーを見る限り、私たちが割り込む余地があるようには見えないし」


 どう見ても俺を中心としたハーレムパーティにしか見えない。

 ここへ別の街に住む受付嬢が今から割り込むのは至難だ。


「しかも、子供までいる男性はちょっと……」

「ぅ?」


 シルビアに抱えられたシエラ。

 誰かの子供を預かったまま冒険者ギルドを訪れるような真似をするはずがなく、俺の子供だと思われている。


「それで、魔剣のトラブルも解決したみたいだし、ようやく帰って来る気になったの?」

「知っていたの?」

「これでも3年前から受付嬢をしているからね。魔剣が破壊された話なら私たち3人ともが知っているわよ」

「ちなみに他の友達にも伝えてあるからね」

「だから、すぐに帰って来ると思っていたのに」


 色々とあってアイラはパレントへは帰らずにアリスターで冒険者を続けていた。


「だって帰り難かったから」


 問題は片付いても問題があった事には変わりない。

 飛び出してきたアイラには最初から帰るつもりがなかった。


「そんな事を気にしなくてもいいのに」

「そうそう。昔の事をいつまでも気にしているなんてあまりいないわよ」

「ありがとう」


 やっぱり帰って来たい想いはあった。

 少なくとも友達からは受け入れてもらえると知って安心していた。


「お墓参りはもう済ませたの?」

「うん、午前中の内に済ませたわ。それで、今は冒険者としてギルドが困っている依頼が何かないか確認しに来たの」

「今のところは特にないわね。この街のギルドは主に近隣で発生した魔物に関する情報を整理して冒険者に渡したり、迷宮で手に入れた財宝を適正価格で買い取ったりするのが仕事だからね」


 特に大きな問題はないらしい。

 それだけ平和な証拠でもあるので歓迎すべき事だろう。


「というか子供連れのパーティに頼まないといけない事なんてないわよ」

「そうそう」


 さすがにシエラを連れて魔物のいる場所へいくはずがない。

 その時には誰かが宿屋で留守番をする事になる。


「あたしだって自分の娘を危険な場所へ連れて行くつもりはないわよ」

「分かっているならいい」

「……ちょっと待って。その子は、その金髪の人の子供じゃないの?」

「違うわよ」


 シルビアからシエラを受け取って顔に近い場所で抱き上げる。


「正真正銘。あたしが生んだ子供だからね」

「嘘ッ!」

「信じられない!」

「いや、パーティメンバーの子供だから自分の子供だって言い張っているだけでしょ」

「どうして信じないのよ……」


 3人にアイラの言葉をそのまま信じる様子はなかった。


「そんなにおかしな事ですか?」


 それまでシエラを抱えていたシルビアが首を傾げる。

 アイラの年齢を考えれば多少は早過ぎる気がしないでもないが、決して子供がいないという訳でもない。


「それが、この子は本当に小さな頃から父親に剣術を叩き込まれていて同年代の中では女の子なのに男の子よりも強い子だったんです。だから、仲の良かった子たちの中では結婚とか出産が一番遅いだろうね、って予想していたんです。それが、私たちの中で誰よりも早く産むなんて……」

「そう言えば、そんな話をしたような気もするわね」


 当のアイラはうろ覚えだった。

 本人にしてみればあまり興味のなかった話題だったのだろう。


「他の皆は子供がいないの?」

「予定だと再来月にフィアが出産するみたいだけど、他は結婚もしていない人たちばかりね」

「そっか」


 冒険者ギルドを訪れたアイラは笑顔で昔話に興じていた。


「けっ、冒険者ギルドはいつから女共の溜まり場になったんだ?」

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