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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第23話 海底遺跡の報酬

 翌朝、迷宮の地下69階にある遺跡フィールドを訪れる。

 遺跡フィールドは、石造りの巨大な四角錐の建造物があるだけの殺風景な階層で、建造物の中心にある転移魔法陣へ触れることによって次の階層へ行けるようになっている。遺跡は、古代文明時代よりも遥か昔から存在する建造物――のコピーだ。オリジナルは残念ながら大災害によって全て消えてなくなってしまった。


 そんな階層をミシュリナさんとクラウディアさんに案内していた。

 迷宮主や眷属である俺たちと違って、俺たちと一緒でなければ迷宮へ赴くことができないのでせっかくの機会に案内していた。


「随分と広い廊下ですね」

「ええ、まるで巨人が通るような通路です」


 遺跡内の通路は幅が10メートル、高さが8メートルもある。


「その通りです」


 こんなに広くしている理由は、クラウディアさんが言ったように巨人でも通れるようにする為だ。


「ご苦労さま」


 遺跡内の通路を歩いていると高さが7メートルあるゴーレムとすれ違う。


「今のは?」

「この階層に居る魔物です」


 手には剣と盾を所持しており、一目見ただけで戦闘力が高い事が伺える。

 戦闘力の低い『聖女』と『侍女』では絶対に勝てない魔物だ。


「大丈夫ですよ。迷宮にいる魔物にはあなたたちを絶対に襲わないよう命令しています。万が一暴走するような事があっても俺たちが一緒にいれば安全です」


 そう言っても不安そうにしている二人。


 目的地をただ見せるだけではつまらない。

 そう思って目的地へ辿り着くまでの道も見せただけだったのだが、失敗したのかもしれない。


「着きましたよ」


 とは言っても少し見せるだけだったのですぐに目的地に着いた。


「ここは……」


 今までの通路以上に広い部屋。

 本来は何もない部屋なのだが、部屋の中に大きな容器が並べられている。


「これが話にあった合成魔物ですね」


 容器は、海底遺跡から奪い取って来た合成魔物が入った物。

 あの時は急に目覚められても対処が面倒だったので迷宮へ送っていた。


「さて、全部魔力に変換するか」


 特別する事はない。

 手を翳してスキルを発動させるだけで容器ごと合成魔物が消える。


 ――ゴクン!


 そんな音が聞こえてきそうな感じがした。


「どうだ?」

『うん。それなりに強力な魔物が使われていたし、合成されたことで魔物が持っている魔石も強くなっていた』


 魔力を取り込んだ迷宮核の報告を聞く。

 それなりに苦労したので成果が欲しいところだったのでよかった。


『ただ、凄まじく手に入ったっていう訳でもないね』


 迷宮核が言っているのは神樹の実の事だ。

 特別な物ではあっても神樹の実ほどの力は発揮してくれなかった。


「でも、けっこうな量が手に入ったんだろ」

『ただ……』


 目の前の床に魔法陣が現れる。

 そこから姿を現したのは去年から使っていた潜水艇だ。

 思い入れのある潜水艇は、幽霊潜水艦との戦闘によってあちこちに修理が必要になっていた。


『潜水艇をギリギリ直せるレベルの魔力しかないよ』


 潜水艇は部品一つ取っても今では造る事ができない物まで使われてしまっている。そのため修理するなら部品の生産まで含めて全てを生産しなければならない。


「できれば修理する方向で頼む」

『分かったよ』


 今年は無理そうだが、来年も海で遊ぶ時の為に修理しておきたかった。

 それに今回のように相手が海中を移動するのならば海を自由自在に航行できる乗り物が必要であるのも間違いではない。


「後は、これだな」


 合成魔物に関する研究資料。

 無事に確保できた物は持ち帰っていた。

 もっとも、研究を続けるつもりはない。


「何か使い道があるかもしれないからな」


 迷宮の奥深くにしまって解析だけは進めておく。


「こうやって魔力に換えるんですね」

「実際には何も面白いところなんてないでしょう?」


 ただ消えて魔力になっただけなようにしか見えない。

 それに迷宮核の言葉が聞こえない二人には詳しい事は何も分からない。


「いえ、これはこれで興味深かったです」

「そうですか?」


 本人がそう言うなら問題ない。


「それよりも、せっかく迷宮へ来たのだからいいところへ行きませんか?」


 明るくシルビアが提案する。


「何かあるんですか?」

「はい。この少し上の階層になるんですけど、温泉が湧いているんです」

「温泉!?」


 迷宮には不似合いな代物だ。

 どうして、そんな物があるのかと言うと……


「元々は、以前の迷宮主が迷宮を訪れた冒険者の休憩所を目的とした施設がいくつもあったんです」


 休憩を目的としたフィールドでは魔力の吸収もない。そうして休めることで連続して迷宮へ挑んで欲しい。

 それが冒険者向けの階層を作った理由だった。


「実際のところは?」

「完全な娯楽施設を作ってみたかっただけみたいです」


 その一環として遺跡内に温泉が作られていた。

 迷宮主になったばかりの頃は、魔力の無駄に思えたのでさっさと廃棄してしまおうかと思ったのだが……


「それが、ハマり出すと自分で色々と改装したくなっちゃって」


 気付けば以前の面影を失くすほど豪華になった温泉。

 あのクオリティなら2年前にアルケイン商会と行ったフェルエスにも劣っていないと思える。


「行ってみてもいいですか?」

「どうぞどうぞ」


 さすがに眷属でもない女性と一緒に入る訳にもいかないので迷宮内の案内は彼女たちに任せて俺は迷宮の最下層へ赴く。

 これでも迷宮主として色々とやらなければならない事がある。



 ☆ ☆ ☆



 ――ザァ、ザァ、ザァ。


 波が砂浜に規則正しく押し寄せる。

 そうして海を漂っていた球体もまた砂浜へ流れ着いた。


『こんな、はず、では……!』


 砂浜へ流れ着いた球体は海底遺跡で防衛を担っていたシステム。そのデータの一部を移植された筐体。


 防衛システム本体は塔と共に海の底へ沈んでしまった。

 筐体にできたのは、最期がどのようになるのか見届ける事だけ。

 しかし、その結果に納得いかなかった。


『もっと多くの人間を仕留めることができた、はず……』


 既に最強の魔物を生み出す事しか防衛システムの頭にはなかった。

 その作ろうとした理由に、危険な魔物から人々を守りたい、という純粋な想いは失われてしまっている。


『認められない』


 だが、防衛システムにできる事は何もない。


「だったら私が協力してあげる」


 そこへ後ろから掛かる女の声。


『誰です?』


 今さら何もできない防衛システムは目玉を少しだけ後ろへ向ける。

 しかし、全く動かない体では声の持ち主が栗色の髪を腰辺りまで伸ばしたことぐらいしか分からない。


「私? 私は、知識の探究者」

『知識の探究者が一体何の用ですか?』

「あなたが海底にある遺跡で何をしていたのかは知っている」

『なぜ?』

「簡単。地上からは海底遺跡に関する資料が全て失われたと思っているみたいだけど、実際には残っているところには残っているの」


 女は、その残された文献から海底遺跡で合成魔物に関する研究がされていた事を知る。

 女としてはぜひとも調査に訪れたかった。

 しかし、海底を探索する術を持っていなかった。


「困っていたところ海底遺跡を監視する為に置いておいた使い魔から報告があったの」


 海底遺跡に侵入者が現れた事。

 さらには侵入者によって最終的には遺跡が潰されてしまった事。

 中であった詳しい事は分からないが、外であった事については全て知っていた。


『それは、残念でしたね』


 遺跡は海の底に沈んで潰れてしまった。

 欲しい物があったとしても既に手に入れることは不可能となった。


「いいえ、私が欲しい物はここにあります」


 女が球体に手を伸ばす。


『な、何をするつもりですか?』

「私は知識の蒐集に関しては貪欲なんです。貴方の体には合成魔物に関する知識が詰め込まれている」


 本体に何かがあったとしても観測だけは最期までできるよう球体には合成魔物に関する基礎理論(・・・・)だけが詰め込まれていた。


「私なら基礎理論からだけでも完全に再現する事ができる」

『や、止めろ!』


 球体の視界に赤い本が映る。

 その光景を最期に球体の自意識は完全に閉ざされる。


「これで汚名返上にはなったはずです。他の人たちは上手くやれているといいんですけど」


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