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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第20話 VS幽霊潜水艇―前―

 海中から先を進む幽霊潜水艦を見る。


「あんなのをイシュガリア公国へ行かせる訳にはいかない。持てる弾薬の全てを叩き付けてやれ」

「了解です」


 メリッサの魔法によって作られた魚雷が海中を進む。

 幽霊潜水艦まで20メートルという所で幽霊潜水艦の後ろの方にある一部が外れて落ちる。

 外れて落ちたソレは、人の形をした霊体だった。


 世界を羨んで死んでいった魂が膨大な魔力を得たことによって実体化。魚雷と衝突すると迎え撃つ。


「チッ、無駄に終わった」


 膨大な霊体が幽霊潜水艦には備わっている。海底都市を維持していた魔力に霊体が加わることによって増幅されている。


「こんなの迷宮を相手にしているようなものだぞ」


 通常の魚雷では有効打を与えられない。


「メリッサ」

「分かっています。ですが、当てられる保障はありませんよ」

「それでも構わない」


 潜水艇に装填された新たな魚雷が海中を進む。

 新たな魚雷にはメリッサの浄化魔法が組み込まれており、接触した瞬間に内部の浄化魔法が拡散される仕組みになっている。


 先ほどと同じように後部の一部が外れる。

 ただし、ただ外れた訳ではない。

 魚雷のような形になって海中を突き進んでくる。


「チッ、向こうも学習したか」


 魚雷には魚雷をぶつける。

 二つの魚雷が衝突して爆発が起きる。


「どうしますか?」


 浄化魔法を当てることができればアンデッドである幽霊潜水艦は成仏する。

 そこで距離があるために魚雷に浄化魔法を詰め込めて撃ってみたが、武装の性能は向こうの方が上みたいだ。


「さて、どうやって当てたものか」


 浄化魔法を当てる方法について考える。

 すると、幽霊潜水艦の後部から白い光が溢れ出す。


「は?」

「あの……距離がどんどん離されて行きます」


 シルビアが言う。

 レーダーを確認してみるとお互いの距離がどんどん離れて行っている。


「そんなはずは……さっきまでは逆に距離を詰めているぐらいだったのに」


 原因は後部から噴き出した白い炎だ。


「魔力を消費してエネルギーを噴射。そのまま推進力に変えているのか」


 そんな事を続けていればアンデッドとしての消滅が早まることになる。

 それぐらいの事はアンデッド本人なら分かっているはずなのに爆発的に魔力を消費している。それだけ急ぐ必要がある。


「どうやら私の浄化魔法を迎撃させる事には成功しましたが、同時に脅威も感じてしまったので逃げる事を選択したみたいです」


 それに消耗した魔力は逃げた先で得れば問題ない。そんな風に考えたのだろう。


 どうにかして追い付かなければならない。

 しかし、このままだと追い付くのは不可能だ。


「潜水艇の方は任せる」

「分かったわ」


 操縦をアイラたちに任せて、メリッサを連れて跳ぶ。


「飛行は俺の方でやる。お前は、潜水艦を落とす事だけに集中しろ」

「はい」


 潜水艇の中から【跳躍】で上空へ移動する。

 そのままメリッサの体を抱えると全速力で飛ぶ。


「いました」


 すぐに海上を走る潜水艦の姿が見える。

 俺たちの潜水艇よりも大きな潜水艦。戦う事に特化しているらしく、上部しか見えていないにも関わらず魚雷の発射口がいくつも見える。


 けれども、そんな物は俺やメリッサレベルの魔法が使える者がいるのならば関係がない。


「やれ」

「はい」


 浄化を巨大な潜水艦を両断できるほどの大きさの刃状に変えて潜水艦の中央に叩き付ける。

 アンデッドである潜水艦は、中央から真っ二つに分かれて海の中へ沈んで行く。


「……随分と呆気ないな」


 潜水艇よりも速く空を飛ぶ事ができる。

 それに一撃で両断できる浄化魔法を使うことができたから沈める事ができた。


「いえ、まだだったようです」


 メリッサに言われて海中を見る。

 二つに分かれた潜水艦が浄化魔法によって消えてしまった部分はどうにもならなかったが、再びくっ付いて潜水艦としての形を取る。

 そうして潜行したままイシュガリア公国へ進路を取る。


「……メリッサ!」

「はい!」


 メリッサを抱えたまま再び飛ぶ。

 潜水艦のいる場所の上まですぐに着く。

 浄化魔法が海中に向けて放たれる。


「あ……」


 しかし、海中にいる潜水艦までは届かない。


「申し訳ありません」


 『聖女』でもないメリッサの浄化魔法では海中まで届くほどの威力がなかった。


「仕方ないさ」


 落ち込んでいるメリッサを宥める。

 その間に念話で連絡をして潜水艇を海上まで浮上させるようアイラに連絡する。後は上部にあるハッチさえ開けてもらえば【転移】で潜水艇内まで一瞬で移動することができる。いちいち降りている時間が勿体ない。


「お互いの距離は?」

「約1キロ……ですが、時間と共に離されて行っています」


 シルビアからの報告を聞く。

 浄化魔法で両断した時には距離を詰めることができたが、修復が終わると再び全速力で飛び出して行ってしまったらしい。それに俺たちを回収する為に浮上したのもタイムロスになっている。


 地図を確認する。

 現在位置と地図を見比べると全速力を出した場合には、イシュガリア公国にある港町まで1時間と掛からずに辿り着けるはずだ。それに港町への影響を考えるなら遠く離れた場所で止めたい。


「相手は、潜水艦の思想から外れた存在だからな」


 文献を読んで得た知識と迷宮核から教えられた知識しか持っていないが、古代文明時代にあった潜水艦については知っていた。

 潜水艦は、本来ならば海中を静かに進んで敵に奇襲を仕掛ける為の乗り物。

 ところが、今の幽霊潜水艦は海中を物凄い爆発力によって突き進んでいた。あまりの爆発力に不自然な海流が発生しており、海上では荒波が発生している。おそらく海面に船がいれば海中におかしな存在がいる事は知られているはずだ。


「――そうか。荒波には荒波だ」

「まさか……」


 ノエルには俺が何をしようとしているのか気付かれたみたいだ。

 しかし、俺が考えている作戦を行う為には潜水艦の前に出る。もしくは、潜水艦の近くまで行く必要がある。


「潜水艇が壊れるかもしれない可能性があってもよければ前に出る事は可能だと思います」


 メリッサが提案して来る。


「……アレをイシュガリア公国まで行かせる訳にはいかない。やむを得ないだろ」

「分かりました」


 なんとなくメリッサがやろうとしている事が分かる。

 だからこそ表情が渋くなってしまう。

 そうして、潜水艇の後ろへ杖を向けると魔法を発動させる。

 メリッサが発動させたのは幽霊潜水艦と同じ。潜水艇の後ろに爆発を起こし、潜水艇の推進力とする。


「おい、同じ事をしたって追い付けるとは……」


 限らない――そう言おうとした。


「いいえ、確実に距離が縮まっています」


 シルビアの報告では確かに距離が縮まっている。


「何をした?」

「向こうは単純に爆発を起こして前に進んでいるだけですが、こちらは同時に水流も操って波も味方に付けています」


 その結果、水中における抵抗なども軽減されているおかげでこちらの方が速く進むことができる。

 しかし、そんな細かな操作を行っているメリッサには相当な負担が掛かっている。今も倒れそうになる体を支えながら魔法を使い続けている。


「あと10秒もって――!」

「――はい!」


 シルビアの声にどうにか応えるメリッサ。

 そうしている内に潜水艦を追い抜いた。


「もういい!」

「はっ――」


 息を大きく吐く。

 魔法が解除されて潜水艇が徐々に速度を落として行く。

 同時に潜水艇の至る所から軋む音が聞こえて来る。限界以上の速度を出したことによって船体が壊れてしまい、水圧に耐えられなくなってしまっている。万が一の場合を考えるなら海上へ行くしかない。


 だが、その前にやる事がある。


「【召喚(サモン)】」


 迷宮から魔物を喚び出す。

 それは、巨大な海蛇の姿をした魔物。


 ――GYAAAAA!


 海蛇の魔物が雄叫びを上げる。


 直後、海が荒れた。

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