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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第17話 海底遺跡のゴーレム

 大災害が発生してから500年ほどが経過した頃。

 当時、名を轟かせていた海賊団があった。

 彼らが有名になったのは、武勇や被害が凄かったのもあるのだが、それ以上に彼らが所有していた魔法道具の潜水艇に理由があった。


 海を渡る船。

 それらに全く気付かれることなく海中から接近し、船に乗り込むと財宝を奪い、最後には船を沈めてしまう。


 静かな海のど真ん中でありながらいきなり襲われる。

 あまりの静けさから『沈黙の海賊団(サイレント・パイレーツ)』などと呼ばれるようになっていた。


「お頭、海底に何かありやすぜ」

「あん?」


 そんな時、いつものように海中から海上にいる獲物を探していると偶然にも海底に都市があるのを見つけてしまう。


 海賊団の団長は即座に探索を決意する。

 彼らを有名にしてくれた潜水艇。

 この潜水艇も海に潜っていた時に偶然見つけたのがきっかけだった。


 もしかしたら、また何かが手に入るかもしれない。

 そう、考えた団長が海底都市を見逃すはずもなかった。


 自分たちならどんなに危険な場所でも問題ない。


 ――結果から言えば、そんな想いは慢心だった。


 都市にいる間は危険な事は何もなかった。それは、ようやく現れた生の肉が都市の奥へと誘われていたからに過ぎない。

 そうして、都市の中心にある塔へと入る。


 都市内にあった建物には年月が経過し過ぎていたせいで目ぼしい財宝がなかった。

 塔の中へ侵入した彼らは2階へと足を進める。


「お、お頭!?」


 一人、また一人と傷を負って塔の奥へと連れて行かれる海賊の部下たち。

 海賊団の中でも最も強い団長だけが残った。


「ク、クソッ……何だって言うんだよ!?」


 自分たちの攻撃が全く通用しない魔物。


『貴方が一番使えそうですね』


 合成魔物との戦闘が始まった瞬間から観察するように姿を現した防衛システム。

 光の鎖によって拘束され、気が付けば部下たちは3階にあった箱――当時はまだ牢だった場所へ、海賊団の団長は防衛システムがマスタールームと呼んでいる場所に閉じ込められた。


『この施設には生きた人間のマスターが必要になります。実験を続ける為にはマスターが必要になるからです。前マスターは人を喰らってでも生き続けていたことで感じていた罪悪感に耐え切れず自殺してしまいました。おかげで研究はストップせざるを得ませんでした。貴方には、そのような事がないよう永遠に縛り続けてあげますよ』


 死神にも等しい防衛システムの声を聞きながら団長の意識は落ちて行った。



 ☆ ☆ ☆



「以上が、彼らが海底遺跡にいる経緯です」


 ゴーレムが放つ銃弾を回避しながら念話も使って海賊の情報を伝えるメリッサ。

 彼女が使ったのは闇属性魔法の【読心(リーディングマインド)】。対象の心の内を読み取る魔法なのだが、少しでも魔法抵抗があれば簡単に弾けてしまう魔法なのであまり実用的ではない。

 しかし、対象が眠っている時など意識が無防備な時には読み取り易くなるうえ、メリッサの膨大な魔力もあって死に掛け……というよりも生かされているだけの海賊団団長から読み取ることに成功した。


 足を止める。

 すると、目の前を銃弾が通り過ぎて行った。


『行動予測プログラムをさらに修正――発射』


 腕から放たれ続ける弾丸。

 何万発と撃ち続けられるせいで近付くことも叶わない。


「【迷宮結界】」


 光の壁を生成して銃弾を受け止める。

 俺の傍にはメリッサとアイラもいる。


「で、どうやって倒すの?」

「まずは、近付かないといけないんだけど……」

「この銃弾の嵐では簡単に近づけませんよ」

「そうなんだよな……」


 ゴーレムの様子を【迷宮結界】の向こう側から見ていると銃弾が尽きた。

 しかし、壁から出てきた管がゴーレムの背中に針の付いた先端を突き刺す。


 すぐさま銃弾を放ち始めるゴーレム。


「あの管が突き刺さると体が再生されるみたいだ」


 体の傷だけではなく尽きたはずの銃弾も元通りになっている。

 おかげで銃弾が尽きる様子がない。


『私がどうにかする』

「イリス?」


 どうするのか具体的な方法を聞くが、集中しているのかイリスからの返事はない。

 イリスの張っていた【迷宮結界】が銃弾を受けて砕ける。


「あいつ、何をやっているんだよ!」


 自分の【迷宮結界】から出て助けに行こうとする。

 その手をメリッサが掴んで止める。


「彼女が自分に任せるよう言ったのですから信じましょう」


 銃弾の嵐を前にして無防備な姿を晒すイリス。

 ついでに彼女の張っていた【迷宮結界】の後ろにいたシルビアとノエルも無防備になっていた。


「【壁抜け】」


 イリスとノエルの体に触れたシルビアがスキルを使用したことによって銃弾が彼女たちの体を通り抜けていく。


『銃弾の嵐まで通り抜けてしまうとは恐ろしいスキルです。ですが、いつまで通り抜けることができますか?』


 決して止む事のない嵐。

 嵐を前にしたシルビアは目を閉じて集中しているイリスと慌てているノエルの服を掴むとマスタールームを走り回る。


『むっ……』


 シルビアを追って行く左腕。

 依然として右腕は俺へ向けられたまま左腕だけを動かして追いかける。


『私の後ろにでも回り込むつもりですか? それでも構いませんよ』


 ゴーレムの背中の一部が開いてミサイルが飛んで行く。

 その先にはシルビアがいる。


「くっ……」


 二人を抱えたシルビアが【壁抜け】を使用する。

 ミサイルそのものが三人の体を擦り抜けて壁に衝突すると爆発を起こす。爆発の影響から逃れる為にスキルをさらに使用する。


「はぁ……」


 シルビアが大きく息を吐く。

 本来、自分一人で使う事を想定された【壁抜け】を複数人で行ったことで消耗がいつも以上に激しくなっている。


「まだ?」

「……実は、少し前に終わっている」

「ちょっと!」


 閉じていた目を開けたイリスを放り投げる。


「終わったのなら許してあげる」

「ありがと」


 シルビアが白い息を吐いて落ち着かせている。

 こっちもいい加減に寒さが我慢できなくなってきたところなのでそろそろ終わらせてほしい。


「マスタールームの温度が低くなっていますね」


 シルビアが気付いたように少し前から寒くなったように感じていた。

 冷気の発生源はイリスだ。


 ゴーレムが銃口を向ける。

 しかし、カチッカチッと音が鳴るばかりで銃弾が発射される事はなかった。


『なぜ!?』

「簡単。銃みたいな精密機械は寒さに弱い。調子に乗って銃弾を撃ち続けている内に内部も含めて凍らせてもらった」

『この……!』


 ゴーレムが無理矢理にでも銃弾を発射しようとする。

 しかし、銃弾が発射されることはなく逆に何か致命的なダメージを負ってしまったのか「バチッ!」という音までした。


『壊れたのなら直せばいい!』


 防衛システムの指示を受けた塔が壁から管を伸ばして針を突き刺す。


 ――パキッ!


『な、なに?』

「言ったはず。凍らせてもらった、って。そんな背中を凍らせた状態で針を突き刺せば砕ける。ついでに管の中に入っていた液体も凍らせてもらったから直すのは絶対に無理」

『……ク、クソッ!』


 怒ったゴーレムが腕を伸ばす。

 だが、動けば動くほどイリスの魔法の範囲内へと入って行くことになってしまう訳で……


『わ、私は……』


 ゴーレムの全身が凍て付いたことで動けなくなった。


「こんな物、壊す必要もないし、氷の中に閉じ込める必要もない」


 全身に氷が張り付いた事で動かなくなったゴーレム。

 普通の人間が相手なら部屋の温度が下がり始めた段階で冷気に気付いても不思議ではないが、相手は感覚のないゴーレム。凍り付く瞬間まで部屋の温度が低くなっていることに気付けなかった。


 イリスがゴーレムに背を向けてこちらへ歩いて来る。


『マスターとの約束です。私は……研究を続けます!』


 ゴーレムの頭部に張り付いていた防衛システムの目玉から光が失われる。

 代わりに何本もの管が椅子に座って死に掛けていた海賊団の団長の体に突き刺さる。


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