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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第11話 古代の技術

 長い廊下を進む。

 塔の入口を開けた先には灯りのない真っ暗な廊下が続いており、奥に出口と思われる光が見える。


「ここは……」


 廊下の先には広大な円形の空間が広がっていた。

 顔を上へ向けてみれば30メートルほど先に天井がある。

 外から見えた塔の高さを考えれば天井が終着点という訳ではないだろう。


「上へ行く方法は――」

「外側に螺旋階段があります」


 入口とは反対側の壁から階段が始まっており、壁沿いに天井に開いた穴まで続いている。

 段数は考えたくない。


「面倒だな……」


 階段を見た時点で登る気が失せてしまった。


「ですが、塔内部の調査をするなら階段を使わない訳にはいきません」


 円形の空間の壁にはいくつもの扉があった。


 中には何があるのか?


 塔の調査をするなら部屋の中も確認しなければならないだろう。


 そして、扉は螺旋階段の途中にもある。

 どうせ螺旋階段にトラップがないかも確認しなければならないので登る必要がある。


「どうする? 手分けして探索する?」

「それもそうだな」


 先ほどのレーザーを考えると危険な罠がある可能性がある。

 分かれ過ぎるのも問題だ。


 そこで、【探知】のできるシルビアと俺で分かれる。

 俺の方にはイリスとノエル。

 まだまだ冒険者としては未熟なところのあるノエルのフォローをする為に冒険者の経歴が一番長いイリスと組ませる。


 シルビアたちが右手にある部屋へ入る。

 俺たちは入口から左手にある部屋を調査させてもらう。


「倉庫?」


 部屋の中には金属で造られた棚が規則的に並んでいた。

 棚の上には50センチほどのボロボロになった容器が置かれている。中身を確認してみるが、容器以上にボロボロで何が入っていたのか知ることはできなかった。


「ダメ、他の容器も同じような感じ」

「かなり古い物だけど、匂いがしないのが救いね」


 朽ちた容器を開けたというのに埃が舞うようなこともない。

 向こう側のグループと連絡を取ってみたが、同じような状況らしい。


「これが何なのか分かる奴いるか?」


 試しに聞いてみるが、イリスとノエルは首を横に振っている。

 シルビアたちも同じような状況……


『この容器は古代文明時代に中身の状態を維持する為に用いられていた物ですね』


 メリッサは知っていた。


「知っているのか?」

『はい。この塔のようにいつ作られたのか分からない建造物の中で稀に発見される代物で、この倉庫にある状態の悪い代物と違って状態のいい代物なら収納リングと同じように時間を経過させずに保存することができる物です』


 収納リングと同じような効果を発揮する容器。

 と言うよりも、収納リングがこの容器を研究して作られた代物らしい。


『収納リングと違って収納できるのは容器の大きさまでなので効果が劣っているように思えるかもしれませんが、この容器は誰でも開くことができるようになっています』


 収納リングの場合は、収納する際に魔力を流す必要があるため、その時に使用者が認識されてしまっているので使用者でなければ出すことができないようになっている。

 そんなデメリットは収納している物を本人しか手にしないのなら意味がない。

 だから、俺たちは今まで気にしたことがなかった。


『このようなメリットがあるので軍や商会で物資のやり取りをする際には重宝されているようです』


 物を渡す者と受け取る者。

 組織ともなれば違って来る。


『そういう人たちにとっては収納リングよりもこちらの方がありがたられるみたいです』


 なによりもコストの問題がある。

 収納リングは空間の圧縮も兼ねているため高価な素材をいくつも使っている。

 金さえ出せれば手に入れることはできる。しかし、その為には冒険者で言えば、Aランク冒険者と同等の収入が必要になる。そのため中小規模の商会は手を出しにくくなっている。


『何よりも収納リングの生成については成功しているのですが、容器については成功していないのです』


 そういった事情があって収納リング以上に普及していない。


「よく知っていたな」

『商人を相手にしていれば、これぐらいの知識は手に入ります』


 冒険者になる前は、商人を相手に色々とやって資金を溜めていたメリッサ。

 彼女なら容器について知っていてもおかしくなかった。


『もっとも古代文明時代の遺産なら私以上に詳しい人物がいます』

「『―――――』」


 全員の意識がそちらへ向けられる。


『本当は、僕に頼って欲しくないんだけどね』

「これについて知っているのか」

『うん。僕が人として生きていた時代には普通に使われていた代物だからね』


 収納リングよりも安価に作れる便利な容器。

 そんな便利な道具も大昔にあった大災害によって素材が得られなくなり、作れなくなってしまい、作る人がいなくなったことによって技術もいつの間にか失われてしまった。


『と言うよりも、どうして君が容器について知らないんだい?』

「どういう事だ?」

『迷宮のカタログを見てごらん』


 言われるままに迷宮の力で作れる魔法道具の一覧を呼び出す。

 カタログには魔法道具だけでも何万種類という数がある。日常生活に使える魔法道具から戦闘に役立つ物まで様々だ。

 そのため迷宮主である俺も全てを覚えている訳ではない。

 この辺は魔物と同じだ。


「あった……」


 俺と同じようにカタログを見ていたイリスが見つけた。


「『状態保存の箱』。ここにある物と同じだ」

「どうして、覚えていなかったの?」


 俺が覚えていなかった事に対してノエルは疑問に思っている。

 カタログを見て俺も昔に見ていたのを思い出した。


「それは、生み出す為に必要な魔力を見れば分かるだろ」


 自分で使う分には収納リングがあったから困ることはなかった。

 迷宮を訪れた冒険者に与える事も考えなくはなかったが、生み出す為にはかなりの魔力を必要としていた。元を取る事を考えたら中層に来られるだけの実力を持つ冒険者に何日も滞在してもらう必要があったが、それだけの実力を持つ冒険者なら『状態保存の箱』を売ったとしても二束三文にしかならない。

 魔力だけで生み出そうとすると損してしまうので興味を失っていた。


「それでも、『状態保存の箱』があったことで分かった事がある」

「そうね」

「なになに、どういう事?」


 ノエルは分かっていないみたいだけど、倉庫の状況に俺とイリスは頭を悩ませていた。

 向こう側にいる3人も同じような雰囲気だ。


「この容器は、古代文明時代には普通に使われていた物だ。そして、大災害以降には作り方そのものが喪われてしまっている。つまり、この塔……もしくは遺跡そのものが大災害よりも前に使われていたっていう事だ」


 大災害が起こるよりも前には今よりも優れた文明があったと伝えられている。

 そうなると確認しなければならない事がある。


「なあ、古代文明時代には海底に都市を作れるほどの技術があったのか?」

『技術的には可能なはずだけど、こんな都市を今でも維持し続ける為には相当な技術が必要になるはずだよ。あの時代にあった技術の粋を集めてようやく完成させられる、ってところかな?』


 当時における最高の技術。

 その象徴とも言える代物が塔の最上部にある。


「なんだ。お宝があるじゃないか」


 結界を維持する事ができる魔法道具だからそれなりに価値があると思っていた。

 けれど、想像以上に価値がある事が分かって自然と笑みを浮かべていた。


 ただし、同時に問題も孕んでいた。


「古代文明時代の遺跡とか厄介すぎるぞ」


 迷宮核は色々と知っていそうだけど、役に立つような情報は簡単に渡してくれない。


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