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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第9話 迎撃システム

 遺跡内を迸る光。

 レーザーのように飛んで来た光は地面に直径5センチほどの穴を開けていた。

 小さな穴だが、貫通力があるらしく深く抉られていた。


 なによりも……


「アイラは、大丈夫か!?」

「……だいじょうぶ」


 顔を顰めながら答えるアイラ。

 明らかに大丈夫ではない。


 レーザーの照準は俺に定められていた。

 その事に逸早く気付いたアイラは、レーザーから守る為に建物のある場所まで両手で突き飛ばした。


 そこまではよかった。

 しかし、突き飛ばしたことによってレーザーの軌道上にはアイラの両手が立ちはだかることになった。


 アイラの両手を貫通したレーザー。

 途中で障害物を貫通しながらも地面を深く抉る力がある。


「イリス!」

「分かっている!」


 レーザーの第二射が放たれようとしている。


 近くにいたシルビアとノエルを回収して隣の建物の後ろに隠れる。

 イリスの傍には手を怪我したアイラとメリッサがいる。


 ――ジュッ!


 レーザーが建物の壁を貫通していた。


「役に立たない障害物だな」


 レーザーから身を守る為に建物の後ろに隠れても貫通してしまって盾として意味を成さない。


 第三射が放たれる。

 狙いはイリスたちの方だ。


 建物の壁を貫通すると思われたレーザー。

 しかし、レーザーは建物によって弾かれていた。


「よし、【迷宮結界】なら守れるみたいだな」


 魔力の消費を最小限に抑える為に壁へ沿うように展開させた【迷宮結界】。

 迷宮の非破壊特性を持つ結界までは貫通することができなかった。


『治療は終えました』


 メリッサから念話が届く。

 本当ならイリスの天癒で完全に治療して欲しいところではあるが、天癒をしてしまうとイリスが魔力切れで戦力外になってしまうので、今はメリッサの回復魔法で我慢してもらうしかなかった。


『本当に大丈夫なんだろうな?』

『問題ないわよ。剣も普通に振るえるからね』


 間にある大通りを挟んで念話で会話する。

 俺たちの場所からも見える場所でアイラが剣を振るう。


 ……本当に大丈夫そうだな。


『後でイリスに天癒を掛けてもらえよ』

『ちょっと過保護すぎない?』

『俺の為じゃない。お前が腕を怪我して子供を抱けなくなった、なんて事になればシエラが悲しむだろ』

『ずるいわよ……』


 シエラの事を出されればアイラも強く出ることができない。


『それで、本当にここからどうする?』


 会話をしている間もレーザーが何度も撃たれている。

 全てのレーザーは【迷宮結界】によって阻まれている。

 耐えるだけなら大丈夫そうだが、進むこともできない。


『私たちの目的地がレーザーの発射地点ですか』


 レーザーは海底遺跡の太陽のように光を放っていた水晶玉の中心から放たれている。

 水晶玉の置かれている塔を調査する為には、迷宮主(ダンジョンマスター)迷宮眷属(ダンジョンサーヴァント)の体すらも貫通するレーザーを掻い潜って辿り着く必要がある。


『発射するタイミングが分からない訳じゃないんだ』


 発射する直前はエネルギーを中心に集める必要があるのか水晶全体が光り輝いていた。

 狙っている場所までは分からないが、水晶を見ていれば発射するタイミングは分かる。


『上手く避けながら進むか?』


 それは、それで危険だ。

 レーザーに何らかの変化がないとは限らない。

 何よりも侵入者に対するトラップが他にもある可能性が高い。


『まずは、私に試させて下さい』

「メリッサ?」


 体内で魔力を練り上げるメリッサ。

 彼女の隣に、メリッサとそっくりの幻影が生み出される。


 幻影だけが建物の陰から出る。

 そのまま塔に向かって走り出す幻影。

 しかし、真っ直ぐに走っているだけでは数秒後にはレーザーに貫かれる。


爆発(エクスプロージョン)


 貫かれると同時に爆発する幻影。


 爆煙が周囲に立ち込める。

 爆発によって焼くことよりも爆煙を発生させる事を優先させたみたいだ。


幻影(ミラージュ)


 煙の中からメリッサの幻影が飛び出して再び塔に向かって走り出す。


 ――キュイン、キュイン!


 一射目は幻影の左を撃ち抜いてしまったものの二射目が幻影の胸を確実に撃ち抜いた。


「幻影が撃ち抜かれた光景を見る限り無策で飛び込むのは危険すぎるな」


 幻影だったからこそよかったものの生身でレーザーに晒されていれば死んでしまっていた。


 レーザーが迷宮結界への攻撃を再開した。

 他の建物と違って壊されない事から俺たちが何らかの方法で防御しているのは明らかだ。自然と建物の裏に隠れているものと思う。


『いえ、今ので分かった事があります』

『分かった事?』

『はい。レーザーの照準は視覚的情報に頼っています』


 あの煙の中でメリッサは幻影の魔法を解いていなかった。魔法は常に魔力を放っているようなものなので、レーザーが魔力を探知して攻撃しているようなら煙の中で無事なように錯覚して攻撃して来てもおかしくなかった。

 しかし、見えない状況でレーザーに晒されることもなかった。


『後は音を頼りにしている訳でもないみたいです』


 レーザーが煩いせいで聞き取りにくいものの走っている時の足音のような音がどこかからか聞こえる。


『魔法で塔まで続く大通りを走るように足音を発生させています。ところが、そちらには全く反応していません』


 音がしている今も【迷宮結界】への攻撃を続けている。


『かなりの距離がある状況で敵を狙えるのです。方法は限られています』


 他にも色々な可能性を模索した結果、メリッサはレーザーが視覚的情報から狙いを定めていると推測した。


『ただ、もう一つ分かったこともあります』

『なに?』

『誰かがいます』

『――!?』


 メリッサの推測に全員が息を呑んだ。


『こんな海底の遺跡に誰かが?』

『煙の中から幻影が飛び出した後の攻撃は、それまでの攻撃よりも僅かではありましたが遅れていました。それと最初の攻撃を外した件。あれらは死んだと思っていた相手が生きていたことを知ったことによる動揺です。レーザーの狙いは人間的思考が働いています』

『なるほど』


 人が目で見て狙いを定めている。

 だから、音とか魔力には反応しない。予想外な事が起これば動揺もしてしまう。


『それで、どうする?』

『私たち眷属が囮になって姿を晒します。その間に主は見つからないよう姿を隠しながら塔へ向かって下さい』

『俺一人で向かえって言うのか?』

『塔へ近付いたところで【召喚】して下されば十分です』


 【召喚】が必要な作戦である以上は、俺が先行しなければならない。

 仲間を囮にして向かうというのは気が引けるが、有効な作戦であることは分かっている。


『囮になっている間、主だけがいないと私たちが囮である事に気付かれてしまいますが……』


 メリッサの傍に俺の幻影が生まれる。


 敵は、視覚情報にしか頼っていない。

 幻影であったとしても遠距離でなら誤魔化すことができる。


『作戦に反対の人は?』

『いないわ』

『さっきの仕返しができるなら何でもいいわよ』

『誰が囮なんて危険な真似を引き受けるのかって言われたら私たちになる』

『ええと……頑張る』


 危険な役割を担うというのに気負った様子がない。


『全員、生き残ることを優先させて下さい。レーザーが発射される兆候があったら回避することに専念して下さい』

『了解』


 建物の陰から出て姿を晒すシルビア。

 一番素早い彼女が先頭になって囮を務める。


「じゃ、気を付けろよ」


 眷属を囮にして建物が密集していて陰になっている場所を進む。


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