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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第7話 海底遺跡調査依頼

 夕食中。

 メニューはシルビアが用意してくれたバーベキューだ。コンロを用意して鉄板の上で肉や野菜、麺を炒めた物を食べていた。


 皆、皿を片手に自分の食べたい物を手にしている。

 その中にはエリオットや護衛騎士の姿もある。

 宿泊のテントだけでなく、食事も自分たちで用意していたが、昨日少しばかりシルビアの用意した料理を分けたところ、すっかり心を奪われてしまったらしく今日は最初から一緒に食べていた。


 エリオットの相手は妹たちに任せている。

 まだまだ子供なところのあるエリオットなので同年代で集まっていた方が楽しいみたいだ。


「随分と大変な物を見つけてしまったらしいな」

「兄さん」


 のんびりと食事をしていると兄が肉の乗った皿を手に近付いてきた。


「ええ、そうなんです」

「今度は海底遺跡か」


 シエラの見つけた海底にあった建造物。

 巨大な水晶玉が置かれていたのは、何らかの理由によって海の底に沈んでしまった街と思われる場所の中心にある塔だった。


「話を聞いた今でも信じられないけど、海の底に街が残っているものなのか?」

「その理由はシエラの見つけた水晶玉にあります」


 あの水晶玉は、結界を生成する装置であり、海底に残された都市は結界に守られていたおかげで水中にありながら水を浴びる事もなく原形を保つことができていた。

 ただ、相当な年月を海底で過ごしてしまったのか一部は朽ちていた。


「おかげでアリスターと同じくらいの広さがある都市がそのまま残っているので探索する人は大変そうですね」


 それ以前に海底に残されているので探索できる人がいない。

 潜水艇を持っていて探索が可能な俺たちだったが、財宝があるのかどうかも分からない場所を探索するほど暇でもない。


「その事で話があるのだが……」


 兄と談笑しているとエリオットが近付いてきた。


「……何か?」


 非常に嫌な予感がする。


「アリスター家次期当主として要請する。あの海底遺跡の調査をお願いしたい」


 そう言って頭を下げるエリオット。

 一緒に体も傾けてしまったので手に持っていた皿から肉や野菜がボロボロと落ちてしまっている。


「エ、エリオット様!?」


 隊長が主君に等しい相手が頭を下げる姿を見て慌てふためいている。


「貴族たる者が平民相手に頭を簡単に下げないで下さい」

「僕も相手がマルス殿でなければ簡単には下げない。彼はAランク冒険者ではあるものの本当に実力はSランク冒険者以上だと考えている。こんな頭を下げる程度で協力が得られるなら安い物だ」


 俺も上に立つ者なら部下の手前、頭を簡単には下げない方がいいと考えている。

 それでもエリオットは俺たちを取り込むことを優先させた。


「依頼内容は何ですか?」

「引き受けるのか?」


 兄が聞き返してくる。

 さっきの俺の言い方なら探索はしない、と言っていると思われても仕方ない。

 けど、エリオットが頭を下げてでもお願いしたい事があるなら今後の関係性も考えて引き受けてあげてもいい。


「可能な範囲で協力します」

「助かる。依頼したい事は、海底にあった遺跡の調査だ」


 ……やっぱり。


「財宝とかはないかもしれませんよ」


 中央にあった灯台のような建物はともかく都市そのものはかなり朽ちていて、宝石のような財宝が残されていたとしても建物と同じように朽ちている可能性が高いように思える。


「僕の目的は財宝ではない」

「財宝じゃない?」

「今後開拓する予定の場所近くに正体不明の遺跡がある。せめて、どんな場所なのか知っていなければ不安で落ち着いて開拓を進めることができない」

「そうですね。危険性を排除することができません」


 あの遺跡が完全に朽ちた場所なら何も問題はなかった。

 しかし、何千年という歳月が経っているように見えるにも関わらず原形を留めていられるのは結界があるからだった。


 もしも、あの結界が何らかの理由で暴発したら?


 陸からは10キロほどしか離れていなかったので爆発でも起きれば巻き込まれることになる。


「優先して調査して欲しいのは、あの結界がなぜ今でも十全に機能しているのか? そして、可能ならば内部の無力化を要請したい」


 あのような海底に沈んだ都市など使い道はない。

 それどころか危険性があるぐらいならば多少のメリットがあったとしても無力化させてしまった方がデメリットを最小限に抑えることができる。


 エリオットにとっては自分の宿願を達成する邪魔な存在でしかない。


「い、いけませんエリオット様!」


 ところが、隊長はエリオットの決定に納得できなかった。


「何が不服だ?」

「もしかしたら財宝が眠っているかもしれません」


 今でも機能している結界。

 無事な財宝が残されていてもおかしくはなかった。


「あの場所はアリスター家に所有権があります」


 辺境の広大な領地を持つアリスター家。

 海の底ではあったもののあの辺りの権利もアリスター家が所有していると王国が認めていた。


「つまり、アリスター家に所有権があるから海底遺跡にある財宝の所有権もアリスター家にある、そう言いたいのだな?」

「その通りです」


 俺も間違ってはいないと思う。


「では、どうやって財宝を手に入れる?」

「それは……」


 海底遺跡へ行くためには潜水艇が必要になる。

 しかし、潜水艇は現在では製造が不可能な代物であり、稀に『迷宮』や『遺跡』からのみ手に入れることができると言われている。

 俺が使っている潜水艇は宝箱(トレジャーボックス)で出した物なので『迷宮』で手に入れた物、と言えなくもない。


「潜水艇を借りて調査することができなくもないが、貴族でも潜水艇を持っている者は限られている。今回のような特殊な状況や遊興目的でなければ使用しない潜水艇を他の貴族にまで頭を下げて手に入れろ、と言うのか?」

「そ、それは……」


 アリスター家も大貴族と言えるが、治めている領地に海がなかったために潜水艇を必要としていなかったし、海へ行く機会もなかったので遊興目的でも手に入れようとは考えなかった。


「僕にとっては財宝よりも遺跡を無力化させる方が優先度は高い。目の前に潜水艇を持っている冒険者がせっかくいるんだ。だったら彼らに頼んだ方が効率的だろうが」

「ですが、領主権限で奪うという手段も……」

「くどい! 誰か、そいつを縛っておけ」


 エリオットは危険な言葉を途中で遮った。

 そんな事をした場合には俺がアリスターから去る、と考えたのだろう。実際には迷宮から長期間離れる訳にはいかないので拠点を変えるつもりはない。ただ、実力行使に出た場合には領主を交代してもらうだけだ。


「部下が愚かな事を言って申し訳ない」

「いえ、全然気にしていないですよ」

「そう言ってくれると助かる」


 隊長にはアリスター家の方で厳しい沙汰が下ることになる。

 俺はここら辺で引いておいた方がいいだろう。


「どうだろうか? 海底遺跡の調査を引き受けてくれるか?」

「いいですよ」


 エリオットの要請を了承する。

 財宝が残されているとは思えない遺跡だが、唯一中央にあった水晶玉だけは結界を今でも維持することができるだけの力を蓄えている。迷宮に与えれば力になることは間違いないので財宝と呼べなくもない。


 ただし、あの水晶玉を回収する事によって結界が消えることになる。

 そうなると結界内の探索が難しくなるので、水晶玉の回収は最後でなくてはならない。


「海底遺跡の調査はお引き受けします」


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