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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第5話 ビーチ

 砂浜に波が押し寄せる。

 腕の中にいるシエラが顔だけを海の方へ向けて波が引いて行く光景を興味深そうに見ている。


 今の時期は、見る物全てが珍しいらしく目を輝かせて見ている。

 どうやら動く波が珍しいみたいだ。

 ただし、波が近付いてくるのは怖いらしく砂浜へ押し寄せる度に顔を俺の胸に押し付けている。


「ははっ、大丈夫だよ」

「あぅ?」


 興味深そうに見ていたシエラだったが、しばらくすると興味を失ってしまったらしく新しい物を見つけた。


「ぁう!」

「何かあったのか?」


 必死に手を伸ばして地面に落ちている物を手にしようとしている。


「これ?」

「あい!」


 どうやらアイラが拾った物で正解だったらしい。

 それは、砂浜に落ちていた綺麗な貝殻で陽の光を反射して輝いていたみたいだ。

 ただの貝殻にしか見えないのだが、子供にとっては宝物に見えたみたいでシエラも欲していた。


 興味を持って色々な物を欲するようになったシエラだったが、特にお気に入りとなっているのが光物だったりする。あまりに欲しそうにしているので危なくない範囲で色々と与えていた。


「大丈夫?」

「ちょっと代わってくれ」

「分かった」


 抱いていたシエラをアイラに渡す。

 代わりにアイラから貝殻を受け取る。

 貝殻を観察してみるが、鋭い部分などもほとんどないので危険はないように感じる。


「はい、どうぞ」


 小さな手で必死に掴む。


「っ!」


 だが、近くで見てみると何かが気に入らなかったらしく捨て去ってしまった。


「あらら、お姫様の気には召さなかったみたいだな」

「あ!」


 俺の言い方が気に入らなかったのか不満らしい。


「ふ、ふぎゃあああ!」


 突然、泣き出してしまった。


「あ~、これはお腹が空いているみたい」


 既に2カ月も聞き慣れてしまったシエラの泣き声。

 直接的な要望がなくても何を訴えているのかが分かるようになっていた。


「ごめん、ちょっと戻っているね」

「ああ」


 この場には俺たち家族だけでなくエリオットと護衛もいる。

 さすがに母乳を飲ませている姿を見せる訳にはいかないので更衣室とは別に建てられたコテージへと入って行く。


 このコテージは、ただ広いリビングがあるだけで部屋など何もない着替えには向かない小屋。しかし、家族でワイワイ楽しく騒ぐ分にはちょうどいいので休憩所として用意させてもらった。


「さて、他のみんなはどうしているかな?」


 ノエルは家族で初めての海を満喫していた。

 メリッサは親孝行なのかガエリオさんと一緒に泳いでいる。

 シルビアは初めて海を訪れたエルマーの為に泳ぎを教えていた。


 他の家族の姿を探すと妹3人で遊んでいるクリスたちの元へ水着に着替えたエリオットが近付いていた。



 ☆ ☆ ☆



「エリオット様!」


 近付く次期領主の姿を見てクリスたちが膝をつこうとする。

 しかし、海で膝をつくことなどできるはずもない。


「いい。このような場所で畏まる必要もない」

「分かりました」


 膝をつく前にエリオットが静止させて立ち上がらせる。


「このような場所へ来てよろしいのですか?」


 海へ入るエリオットの傍には水着に着替えた護衛の女騎士が控えているだけだった。護衛、というよりは世話役という側面が強い騎士だ。


「他の騎士には森を警戒させている。僕も海には興味があったから入らせてもらった」


 今も森からは何体かの魔物が初めて訪れた人間を捕食しようと狙っていた。

 騎士たちは、そんな魔物を警戒していた。


 もっとも魔物の企みが成功することは絶対にない。


「ですが、海を警戒しなくていいのですか?」


 海にも魔物がいる。

 危険がない訳ではない。


「それならば問題ない。君たちの兄や姉が討伐してくれているはずだ」

「そうですが……」

「少なくとも君たちがいる場所の近くは絶対に安全なはずだ」


 エリオットが言うように午前中の内にシルビアたちの手によって半径3キロ内にいる全ての魔物は駆逐されている。

 少なくとも数日間の安全は保障されている。


「そういう事でしたら……」


 詳しい事まで説明していないが、「周囲の魔物は殲滅した」とだけ伝えてあるのでエリオットの言葉にも納得していた。


「それにしても君たちもここへ来ていたんだな」

「せっかく見つけた場所だったので兄に誘ってもらったのです」


 正確にはエリオットが暇を持て余すような事がないように話し相手として付いて来て貰った。彼女たちに護衛としての期待はしていない。


「やはり、ここへ来た方法は彼らの転移魔法によるものか?」


 既に俺たちが自由に転移することができるのは隠せなくなっていた。

 自分から言うつもりはないが、エリオットは俺たちの移動時間の計算が合わないことに気付いていた。


「はい。便利な能力ですよね」


 馬車で1日もの時間が必要になる移動が一瞬で済む。

 便利、なんてレベルのスキルではない。


「羨ましいな。僕は、ずっと馬車の揺れに耐えるしかなかった」

「エリオット様も連れて来て貰えばよかったのに」

「そうもいかないんですよ」


 無邪気に自分たちと一緒に来ればよかった、と言うリアーナちゃん。

 そうできない理由をメリルちゃんは予想できていた。


「僕自身は問題ないと考えているのだが、家臣の中にはマルスを信用し切れていない人物の方が多くいる」


 優秀ではあるものの得体の知れない冒険者。

 それが家臣たちの俺に対する評価らしい。


「お兄様は優秀な冒険者ですよ」

「優秀だ。いや、優秀過ぎると言っていいほどだ。個人の戦闘力だけなら歓迎されるべきだが、どうして彼の元に集まる女性も強い者ばかりになる。そうじゃない事には気付いている」


 俺の元に集まった女性が強くなる。

 まず、実力がありながら指導力にも優れている為に戦力を増す事に成功した。

 理由としては、これぐらいしか考えられないのだが、既にシルビアたちの実力は指導でどうにかできるレベルを超えている。


「そんな風に思っているような奴からすればマルスの使う転移など信用できない」


 もしかしたら、おかしな場所に落とされるかもしれない。

 それに何かしらの悪影響がないとも限らない。


 だから、転移での移動は選べなかった。


「開通依頼はギリギリのところで許容範囲というだけだ」

「でも、お兄様が裏切るような事はないと思いますよ」

「そうだな。さっきも自分の子供と遊んでいる姿を見せてもらったが、本当に大切にしている。あの様子なら住んでいる街を裏切るような真似はしないだろう」


 子供を連れての拠点変更は難しい。

 そういった意味では裏切る可能性は低いと考えられていた。


「ねえ、難しい話は終わりにして遊ぼうよ」

「そうですね。エリオット様も遊びませんか?」

「そうだな。僕もこの1カ月の間でいくつもの港町を訪れて泳ぎの練習をしたから泳げるようになった」

「あれ、泳げなかったんですか?」

「海などない辺境なら必要とされないスキルだからな」


 子供たちがワイワイ騒ぎながら沖合へと泳いでいく。


「あんまり遠くへ行くなよ」

「分かっています」


 エリオットの後ろには女騎士が控えているし、クリスたちもいれば大抵の事態には対処できるはずだから自由にさせておいても問題ないだろう。


「さて、ちょっとばかり寝させてもらうかな」


 昨日からエリオットに同行していてなんだかんだ言って疲れていた。

 横になりながら警戒させて貰う事にする。


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